テラーノベル
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シェアハウスのリビング。
誰も動かない。
ゆうはすちを見つめたまま立っている。
「……なんで」
さっきと同じ言葉が口から出る。
「なんで、生きてるんだ」
すちは少し困った顔をする。
「いや、生きてるけど」
軽い調子。
でも部屋の空気は重い。
ゆうの手が震えている。
「俺は…」
言葉がつまる。
「あのとき」
「お前を置いて逃げた」
声がかすれる。
「だから…」
「死んだと思ってた」
静かになる。
すちはゆっくり息を吐いた。
ソファに座る。
「まあ」
少し笑う。
「そう思うよな」
こさめが聞く。
「どういうこと?」
すちは天井を見る。
「ゆうが逃げたあと」
少し考える。
「あいつら来た」
ゆうの体が固くなる。
すちは続ける。
「ボコボコにされた」
さらっと言う。
「で、気づいたら病院」
いるまが目を見開く。
「……え」
すちは肩をすくめる。
「運よく通報されたらしい」
みことが言う。
「それで生きてたのか」
すちは頷く。
「で、数年後」
ゆうを見る。
「お前がこのシェアハウス来た」
ゆうはまだ動けない。
すちは言う。
「最初気づかなかったんだろ」
少し笑う。
「顔変わりすぎ」
こさめがびっくりする。
「そんなことある!?」
すちは笑う。
でも。
ゆうは笑えない。
ゆうの目が潤む。
「俺は…」
声が震える。
「助けられなかった」
すちは少しだけ真面目な顔になる。
「ゆう」
ゆうが顔を上げる。
すちは静かに言う。
「助けられてる」
ゆうの目が揺れる。
「え?」
すちは続ける。
「あのとき」
「お前が残ってたら」
少し笑う。
「二人とも終わってた」
リビングが静かになる。
すちは言う。
「だから」
「逃げて正解」
ゆうの頬に涙が落ちる。
今まで抱えてたものが。
少しだけ崩れる。
そのとき。
ソファの横。
なつが静かに座っていた。
誰も気づいてない。
なつは床を見ている。
ゆうは助けられた。
すちは生きてた。
みんな笑ってる。
よかった。
よかったはずなのに。
胸が苦しい。
なつの手が少し震える。
(俺は…)
助けられた側。
その言葉が頭に残る。
ゆうの声が聞こえる。
「よかった」
その言葉。
なつの心に小さく刺さる。
(よかった…?)
なつは小さく笑う。
でも。
その目は少しだけ壊れ始めていた。
誰もまだ気づかない。
コメント
9件
( っᐢ. .ᐢ ) .ᐡ ⊂)
すっちーの顔変わりすぎって言ったときはマジでビビったw次は本格的になっちゃんが壊れ出すのね…続き楽しみすぎる!
フォローしといたよ〜