テラーノベル
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夜。
シェアハウス。
リビングの電気はもう消えていた。
みんなそれぞれの部屋に戻っている。
静かな家。
廊下。
ゆうが水を飲みにキッチンへ行く。
コップに水を入れる音。
そのとき。
カタン
小さな音が聞こえた。
ゆうが振り向く。
リビングのソファ。
そこに、なつが座っていた。
暗い中。
一人で。
ゆうが少し驚く。
「……なつ?」
なつが顔を上げる。
「起きてたのか」
ゆうが近づく。
「そっちこそ」
なつは少し笑う。
「寝れなくてさ」
ゆうはソファの横に座る。
少し沈黙。
ゆうが聞く。
「体、大丈夫か?」
なつは肩をすくめる。
「平気」
でも。
ゆうはなんとなく違和感を感じる。
なつの笑い方。
少し無理してる。
ゆうが言う。
「怖かったよな」
なつが少し止まる。
そして。
小さく笑う。
「まあ」
「初めてだからな」
助けられる側。
その言葉は出さなかった。
ゆうが言う。
「でももう終わった」
安心させるように言う。
「もう大丈夫」
なつの目が少し揺れる。
でも。
すぐ笑う。
「だな」
そう言って立ち上がる。
「寝るわ」
ゆうが頷く。
「おう」
なつは部屋へ向かう。
でも。
廊下の途中で止まる。
誰も見ていない。
なつの手が少し震えていた。
(助けられた)
頭の中でその言葉が回る。
(俺が)
拳を強く握る。
(俺が…)
ドン
壁を小さく叩く。
その頃。
別の部屋。
こさめはベッドに座っていた。
落ち着かない。
スマホを見る。
また置く。
「……はぁ」
ため息。
そのとき。
ドアがコンコンと鳴る。
「こさめ」
いるまの声。
こさめがドアを開ける。
いるまが立っている。
「寝てないだろ」
こさめが苦笑する。
「バレた?」
いるまが言う。
「顔に出てる」
二人で廊下に座る。
少し沈黙。
こさめが小さく言う。
「怖かった」
いるまは黙って聞く。
「もし」
こさめが続ける。
「帰ってこなかったらって」
声が震える。
いるまは少し考えてから言う。
「でも帰ってきた」
こさめは頷く。
「うん」
いるまはこさめを見る。
「だからさ」
少し笑う。
「もう少し信じろ」
こさめが聞く。
「なにを?」
いるまは答える。
「俺ら」
こさめが少し驚く。
いるまは続ける。
「一人じゃない」
静かな声。
こさめの目が少し潤む。
そして。
小さく笑う。
「……うん」
二人の肩が少し触れる。
でもどちらも離れない。
その頃。
なつの部屋。
電気はついていない。
ベッドに座るなつ。
暗い中。
自分の手を見る。
まだ少し震えている。
なつがつぶやく。
「ださいな」
助けられた。
その事実。
胸が苦しい。
なつはゆっくり目を閉じる。
その心の奥で。
小さく。
何かが壊れ始めていた。
まだ誰も知らない。
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