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※このお話を読むときのポイント💡
情景や、登場人物達を自分の自由に想像しながら物語を読むと、より楽しめますよ♪
第十四章懐かしい頃
「母、さん……?」
僕は疑問の声を漏らした
母らしき人の声がした、たしかにした
僕はその人に止められた
〘…琉生…、?〙
〘琉生、なの…?〙
「っ〜…、!」
なんだよ、そんな顔して
捨てたのはそっちだろ
久しぶりに会う家族のように
いつの間にか母の腕のなかに飛び込んでいた
〘琉生…なのねっ…、〙
変な感じだ、何故母はこんなにも悲しそうな顔をする
捨てたのに
すると、後ろから父と妹らしき人も登ってきた
僕は音だけしか聞こえなかったが、父が墓参り用の花を落としたような音が聞こえた
《琉生…、?》
「父、さん…?」
ほら、なんでだよ、
僕を置いていったのは、あんたらだろ、
なのにっ…、
頭のなかの気持ちと、口から出る気持ち、目に見えている気持ちがごちゃごちゃになっている
気持ちが悪い
《…ひとまず、墓参りするか、》
〘そうね…!〙
妹は先程から一言も話さない
どうしたのか、緊張しているのだろうか…?
妹のことは5歳ほどの頃のことしか覚えていない
恐らくその頃に家を出ていったのだろう
だから、覚えていないのも当然か
……少し悲しい気持ちになるのは、僕がまだ未練があるからだろう
吹っ切れたはずなのに…、w
それからというもの、とても時間の流れが早く感じた
僕の家が近かったので、全員で移動した
そこで、すべてを聞いた
緊迫した空気感の中、父が口にしたことが衝撃的だった
僕は捨てられてなんかいなかった
逆に何故そんなことをするのかと、疑問を持たれてしまった
あの日、家を出たのは両親じゃなかった
僕だ
中学の時、両親と大喧嘩をした
ほとんど意見しない僕が、喧嘩をしたんだ
人生初かもしれないと、今更ながらに思う
そのとき、僕は事故にあった
速度を守らない軽自動車が突っ込んできた
幸い、そこまでの傷にはならなかった
その時、連絡されたのが両親ではなく、祖母だったそうだ
祖母は元医師だったからだ
祖母は僕の事情をなんとなく察してくれたのか、家に泊めてくれていたのだ
だが、そんなときに祖母の持病が見つかった
本当に僕は悪魔かと思うほど、悪運に好かれているようだ
祖母は勝手ながら、僕をこの家に置いておくことを決めた
そして__、二度と会えぬ人となった
何も知らない僕は、記憶が一部なく、家出してきたことを知らなかったようだ
だから、朝起きたら両親も妹もいなかった
問題点はここだ、祖母が両親に連絡をしていなかったこと
お陰様で、僕は行方不明のレッテルを貼られていたようだ
だから、すべて誤解だったことがわかった
話を聞き終えて、何故かホッとしたような
暖かい気持ちになった
相変わらず一言も話そうとしない妹_海音(あまね)
何を考えているのかわからない…、僕に似たのかとても暗いイメージである
〘琉生の名前はね、少し嫌がられている感じではあるんだけど…、〙
〘とても、綺麗な宝石のような意味を持つの〙
〘だから、この子にも似たような名前をつけようと思ってね〙
と、海音の頭を撫でながら言う
そんな意味があったのか……、と、
久しぶりの家族団らんが楽しくて仕方がなかった
気がつくと空は蒼く染まり、夜を告げる
「もうこんな時間か…、夕ご飯作るから、食べてくでしょ?」
父は、ぽかんと口を空けていた
そんなに驚かなくてもいいだろう…
そうでもしないと、生きていけないからね
〘ふふっ、そうね、いただくわ〙
《あ、ああ、ありがとう》
「嫌いなものとかない…よね?」
〘ええ、〙
すごいな、海音は…もう12歳か…僕が家出した歳じゃないか…w
それに僕が中学の時は好き嫌いが多かったなぁ…
……それと、少しまとめると、やはり僕の記憶が少し違っていたらしい
僕が家を出たのは、中1
その時海音は、6歳だったみたいだ
そんなこんなしているうちに、できてしまった
流石に、手際よくなったな…w
「はい、ブロッコリーのキッシュ風グラタンと、コーンスープだよ」
ほぉ〜…、と、感心しているようにも見える
そんなに大層なものではないけどね…w
〘え!?琉生こんなの作れるの!?〙
「まあ…、簡単だよ?」
〘凄いじゃない!〙
〘おばあちゃんが、琉生を一人にしても大丈夫と思えたのもこれのせいかもね…w〙
そうかもしれない、なんて言えないけど
実際の所本当にそうだったのかもしれない
先程作っていて、祖母のため、一度ご飯を作ったことを思い出したからだ
美味しいと、話しながら笑う両親と妹を見て、僕は何故か目の奥がジンと熱くなったが、ぐっと堪えた
今はだめだ
後で、後で一杯泣けばいい
今だけは、笑顔で__
〘はぁ〜…美味しかったわぁ…〙
「はは…、w」
〘今度教えてね!〙
《ほら、早く帰るぞ、琉生も今週から学校があるんだ》
〘そうね!〙
日比谷さんが少し苦手に感じたのは、母の面影があったからかもしれないな
なんて、感じたことは本人には言わないほうがいいだろうか
……案外喜びそうな気もするが
手を振る家族
こんな時が来るなんて信じられない自分と、まだ浮かれている自分がいる
今日のことを大切に、これからを過ごそう
これからはいつでも会えるのだ
こんなに嬉しいことはない
午前とは打って変わる思いに、少し苦笑してしまうが、そんなことは今更どうだっていい
[お兄ちゃん、!ばいばい!]
「…!」
ついつい笑ってしまう
微笑みを向けられたその表情を見て、とても愛しく思えた
「うん、!」
なんて、僕には少し大きな声が出たようだ
第十五章始業
長い長い夏休み明け
浮かれっぱなしだった生徒達が少し引き締まる
ただ、僕の横にいるうるさいこの人達は秩序という言葉を知らないらしい
夏休み明けは静かに、メリハリをつけるというのが大切だと言うのに…
今も、長い長い夏休みの思い出を聞かされ続けている
早く終わってくれ…、
『あ、琉生〜!』
げ、…あの時から少しだけ気まずいんだよな…
『あの時どこ行ってたんだよ〜、俺めっちゃ探したんだぜ?』
「あの時…?ごめん、いつのこと?」
『え??琉生…おじぃちゃんになった?』
こいつ……煽るにしても程があるぞ…
こんなでもカチンと来てしまった
僕の堪忍袋の緒は軽いものだな
「清水こそ、何のことかわかんない時の話しされても、知るはずもないんですけど?」
「もしかして、僕抜きで遊んだこととか?」
「僕はいないのに、いると勘違いするとか…」
「小学生かよ、w」
口からスラスラと煽り文句が飛ぶ
ぽかんとしている清水だったが、やがて堪忍袋の緒が切れたように、『あっそ』と一言、席に戻ってしまった
もう少し話を聞いてやればよかったかな…
なんて、今更もう遅い
知るか、そんなこと
それに僕は今日早めに帰りたい
訛っていた勉強がしたい
それと、読書
久しぶりに紅茶を淹れて、日の当たる自室でお気に入りの本を読もう
そう決意した
家族のことは…、2人には言ってない
混乱させたくないし、何より今の清水との関係性をはっきりさせてからにしたい
〈ねぇ…、大丈夫なの…?〉
始業式後の放課に日比谷さんが話しかけて来た
僕のあの日の気持ちはなんだったのか、僕はまだ知らない
これから知っていけばいい
時間はまだある
「何が?」
〈涼のことだよ…、2人が喧嘩なんて…〉
〈私見ていられないよ…〉
俯いた顔が影でとても暗く見える
「はぁ…、喧嘩なんかじゃないよ」
「こんなことは1年の頃から何回もあった」
「きっと、直ぐ仲直りするさ」
……正直、今回はそうはいかないとなんとなく感じていた僕がいた
どうなるかなんて、知る由もないが、今回ばかりは気になる
1週間後、予想的中
今までは1週間あればいつの間にか話し合っていたが、今回ばかりはうまく行かなかったようだ
いつもどうやって仲直りしてたっけ…
……毎回、清水からごめんと、一言あった
そこで僕もごめんと、言えていた
が、清水が何も言ってこない
……問題大有りみたいだな
今回は僕が悪い
一言、一言ごめんと言えば終わるんだ
それなのに何故…、いつもの清水の背中が遠く感じるんだ
結局、何も進展しないまま、終わった
「いつも頼ってばかりだ、僕は」
「今回だって、清水から言ってくれるとばかり思っていた」
「なんて愚かなんだろうな」
一人屋上に放課後
日が沈みかける空をただただ眺めていた
心が見透かされるような景色に少しどきっとするが、すべてをさらけ出せるような感じがした
「…帰ろう」
翌日、またまた悪運
[3週間後は、体育祭です!](先生)
…最悪だ
そんなことしなくていいのに…
動きたくない……
そもそも、清水とこんな状況のまま体育祭になってもいいのか…?
わからない
でも、ヤバいことになりそうなのは明確だ
……というか、気づいたら9月とか…、1年早すぎだろ
この時期は行事が多すぎる
陰キャにとっては大変である
…まあ、今回もなんとかなるだろう
なんて、こんな時でも甘い考えの僕であった
次回第十七章:体育祭に向けて
ブロッコリーのキッシュ風グラタン↓
これ、本当に簡単らしいです…w
調べてみてねー!