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創作刀剣男士
パッヘルベルのカノンその他数々のクラシック曲の捏造
日本刀らしからぬ行い
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「よし、完成だ」
生まれて初めて聞いた言葉だった。
僕が目を開くのと同時にぽんっと何かが弾ける音がした。後から知ったけどそれは庭にある蓮という花が開く音だったらしい。
「おうおう、こいつには蓮の祝福があるのかもなぁ。ふむ我ながらなかなか良い刀を打ったものだ。」僕を打った父はそう言った。
「お前は花音だ。花音行安。作刀し終えた瞬間に花が一斉に開く音がしたからな。これ以上の名は無かろう。」そうとも言った。
父様、蓮ってどんな花?綺麗?大きい?祝福ってなんだろう。でもその名前じゃ蓮の祝福っていうよりも音楽の祝福っぽくないかな。でも楽しみだなぁ。嬉しいなぁ。
父様の奥様が教えてくれた。蓮って日の出てる時にしか咲かないんだって。日の出と同時に咲くんだって。全部同時に咲くことなんてないからきっと僕が生まれてきたのを喜んでくれているんだって。
しかもね、昼にはもう蕾が閉じちゃってるんだって。白かったり、桃色だったり。とても綺麗な花だった。
ひらいた ひらいた なんのはなが ひらいた ひらいたと おもったら いつのまにか しぼんだ
歌も教えてくれた。
いつもみたいに歌いながら蓮を見ていたら父様が急に言った。
「良き刀は後世に受け継ぎたいものだ。そうだな、樺山家に行ってもらうか。俺のご先祖様が打ったすごい刀があるんだぞ。お前のご先祖さまだな。」
そうして僕は薩摩樺山家に送られた。すごい刀の僕のご先祖様は僕のことをとても可愛がってくれた。父様は僕がふわふわ見えても触れなかったけどご先祖様は触れてた。人間とは違うんだって教えてくれた。頭を頬を撫でてくれた。
ご先祖様にも植物の名前がついていてお揃いみたいで嬉しかった。ご先祖様はご先祖様って呼ばなくてもいいよって言ってくれて兄様って呼んでごらんって言ってくれた。ごせ、兄様は僕が父様の話をしてると少し暗いお顔をするから父様の話は控えようって思った。兄様はいつも僕の話を聞いてくれるから兄様のお話も聞きたいな。
本家に行くぞ
また急に言われた。でも今度は一人じゃない。兄様も一緒に行くんだって。島津家へ。
樺山のお家だってとても立派なところだったけど島津のお家は比べものにならないくらいとっても大きなお城だった。僕達は2振り並べて置かれた。太刀が二振並んでいてもまだ余裕のある部屋はとても広いなって思った。お城の小さな子供が大きく育っていくのはとても凄かった。本当にすくすく元気に育っていくんだもん。だってほら、主君がいつのまにかあの小さな子、いやとても大きく成長したあの子になってるんだ。
あの子がいつになくドタバタしてる。南蛮から強い武器が入ってきたんだって。鉄砲というらしい。あれが広まってしまったら僕達が使われなくなってしまうかもしれない。僕はまだ実戦に出たことがないからよくわからないけど。
南蛮人が僕たちのいる部屋に入ってきた。こんなのよりこれを使ってとか言われたりするのかなって思ってたら「wow!コレトテモCOOL!!!」って言われた。どうやらかっこいいって気に入ってもらえたみたいだった。ホシイ!!とも言われた。鉄砲と交換で僕が欲しいんだって。主君は新戦力と刀一振りを交換した。あの子は嫌だって思っても当主の立場がそれを許さない。わかっていたけど少し寂しかった。あの子とも兄様とも別れなくちゃいけないから。
新しい主君は本当に一時的だった。船に乗り海を超えて外国に着くまでの間だけ。そこでまた主君が変わった。パッヘルベルという人に。僕はどうやらパッヘルベル家の家宝に選ばれたようだ。僕の姿は使いづらかったようで太刀だったはずの僕は少し短く擦り上げられ外国の剣であるサーベルという拵えになった。僕の姿も変わった。兄様に似た色の和服がこの国の貴族のような服装になっていた。本当に僕は違う刀になってしまったようだと心に虚しさを感じた。
その家には長くあった。この国の言葉を完璧に話せるようになるくらい。長く
代替わりが何度か行われ、新たな主君がヨハン様になった。主君は音楽の神に愛された人だった。ピアノもバイオリンも出来る方だった。
そして変な人でもあった。
外出時に僕を腰に下げてさまざまな音楽の知識を教えてくれた。「音って名前についてるのがいいよね」と。おかげでピアノが弾けるようになった。もちろん触れられないけれど。
そして僕を元に曲を作ろうとした。
天才と変人は紙一重なんだね。改めて実感した。
カノン形式の曲を作ろう、題名もカノンにしようだって。ジーグも作ってくれるんだって。私の曲ができるんだって。なんて嬉しいことだろうか。
素晴らしい曲ができた。名曲だった。今まで聴いてきた曲の中でこれほど心を動かす音楽は初めてだった。可愛い弟妹ができた瞬間でもあった。なんども弾いた。それでも飽きなんてこなかった。
もっと聴いていたかった、主君の演奏で。
いつものようにいきなりだった。主君が死んでしまった。父様って弟妹達が泣いてる。慰めて泣き止んでまたこの子たちの笑顔を見る前に僕に新しい主君ができた。
次は主君の教え子であるバッハ家に贈られることになった。
去り際に呟いた
「カノン、ジーグ、元気でね。世に出してあげられなくてごめんね…」
という言葉は2曲に聴こえていただろうか。
これからは旅の毎日だった。
師匠だからとバッハ家からモーツァルト家へその後従兄弟だからってウェーバー様、「オペラとこいつ託すわ」という伝言と共にワーグナー様に、「親愛なる我が友よ」とドビュッシー様からサティ様、ドボルザーグ様からスメタナ様、ホルスト様にラヴェル様。
G線上のアリア、アイネ・クライネ・ナハトムジーク、魔弾の射手、ジークフリート牧歌、ベルガマスク組曲月の光、ジムノペディ、新世界、交響曲我が祖国、組曲惑星、ボレロ。
主君となった人以外にもベートーヴェン様やシューベルト様などたくさんの音楽家に出会った。
こんなに旅をしていても大切にされているからか僕には何も怪我がなかった。
たくさんの音楽家に贈り送られ数々の曲を聴いてきた。たくさん可愛い弟妹ができた。おかげでヨーロッパ圏の言語は全て話せるようになっていた。
それでも一番長くいたのはパッヘルベル家だった。思い出に残っているのも。
打たれたての時に思った、蓮の花の祝福ではなく音楽の祝福なのでは?というのはどうやらあっていたようだ。正直ここまでとは思って無かったけど。
ラヴェル様の後はロシアのチャイコフスキー様から小説家でピアノの趣味があるレフ・トルストイ様の元にお邪魔した。ロシア語は発音も独特で文字の形が全然違ったりするから覚えるのが大変で難しかった。今までずっと音楽だけだったけどここで文学に出会った。この方は戦争を嫌っていた。農業がしたいと常日頃言っていた。それでも戦う道具である僕の主君でいてくれた。
この方の音楽は小説家だからこその詩的な表現がとても美しかった。是非ともカノンを引いていただきたかったけどまだカノンもジーグも世に出ていなかった。
レフ様が亡くなった。主君を喪うのは2回目だった。あの方以上に平和を愛した人にはこれから先きっと会わない。僕は戦うための道具なのに戦いたくないと思うようになってしまった。
レフ様は伯爵だったので公爵家に献上されることになった。もとから貴族のような服装をしていたけど、本当にお偉い貴族様(の刀)になっていた。
それから後の世で第一次世界大戦と呼ばれる世界各国を巻き込んだ大きな戦争が起こった。その中でも僕は音楽の中にあった。
戦争が終わって少し落ち着いた頃
ようやくカノンとジーグが見つかった。
本当に長かった。これで世界にカノンとジーグを聴いてもらえる。ずっと弾きたかったのにこの手は鍵盤をすり抜けてしまう。忘れないためには歌うしか無かった。ようやく聞くことができる、でも後少しでも早ければ、良かったのに
公爵様主催の舞踏会でもカノンとジーグは流れた。パッヘルベル様ほどではないけれど素晴らしい演奏をしたバイオリニストがいた。ルネ・シュメー様だ。褒美として僕は彼女に贈られた。彼女は作曲はしなかったものの素晴らしい音楽を奏でる音楽家だった。
そんなシュメー様は日本の春の海という曲が気になるそうだ。はるのうみと呟くとなんだかとても懐かしい気分になる。
そしてシュメー様は僕を連れて日本に行った。約420年ぶりの日本だった。近頃は自分が日本刀であることすら忘れていたように思える。日本語の優しい響きが風鈴の音が蝉の声が鳴きたくなるくらい心に沁みるんだ。兄様はげんきかな、なんて思えたのも束の間また大きな世界大戦が始まった。ドイツの侵攻で。
宮城様は徴兵された。僕は連れて行かれなかった。シュメー様や数々の音楽家のものでもあるから大切にしたい、と。彼は帰ってこなかった。僕は宮城家に残されたまま。
日本が降伏して戦争が終わった。
80年ほど経つと独創性あふれる音楽がたくさん流れてきた。どこか聞き覚えがあると感じたのはカノンカードのせいだろうか。僕が作曲の過程を見てきたたくさんの曲がクラシックとして奏でられている。結婚式や卒業式ではカノンがこれからに幸あれと祝う曲となった。ジーグはまるで忘れ去られてしまったかのように、カノンだけが人々に愛される曲になった。ジーグもとてもいい曲なのに。
ぼんやりしていたらまたドイツに戻っていた。どうやらパッヘルベル様の生家を記念館にするから僕を展示したいらしい。館内はカノンがずっと流れていた。この演奏もとても上手だけどやはりパッヘルベル様が弾いているのにはかなわない。カノンとジーグの笑顔をとても久しぶりに見た。別れた時は泣き顔だったから。 瞬きの間にこんなに世界中が何もかも変わっていた。たくさんの主君を持ちずっと身を置ける場所を探していた。この家が今までいたどの場所よりも落ち着いてパッヘルベル様がいないこと以外はあの時の何も変わっていないことに安心して少し眠りについた。