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「はぁ……君は大丈夫でしたか?」
快感に翻弄されるあまり、彼女を気にしていることもできなかった。
「……うん…私から言ったんだもん…大丈夫…」
そう口にして下唇をぎゅっと噛んだ彼女が、「だけど……やっぱり、いじわる…」と、上目使いに私を見つめた。
「そんな顔をしないで」愛らしい表情に頬を挟むように壁に両手をつき、顔を傾けて唇を重ね合わせた。
「少し、意地悪が過ぎましたか?」
そう訊いて身体を離すと、残っていた泡をシャワーで洗い流した。
「……最初に言ったのに、意地悪…って……」
滲んでこぼれた涙に口づけて、
「……好きすぎて、いろいろと加減がきかなくなってしまって。……私を嫌いになりますか?」
そう尋ねると、「嫌いになんて……」と、彼女は首を横に何度も振って、
「……恥ずかしいんです……あなたの前だと、私もいろいろと加減がきかなくて……」
同じようにも口にして、私の胸にちゅっとキスをしてきた。
「……あっ…」
「……少しだけ、お返しです」言って、胸元に再び口づけると、紅く唇の痕を残した……。
0時が迫って、彼女とバーラウンジに向かった。
手首に嵌めた互いの時計を見比べながら、秒針が0時に合わさるのを待つ。
針が重なった瞬間にグラスを合わせ乾杯をすると、
「誕生日おめでとう」
告げて、彼女の頬にキスを贈った。
「ありがとうございます。こんなにも素敵な誕生日は初めてです」
はにかんで微笑む彼女に唇を寄せて、そっと口づける。
「……あなたと出会えてよかった。あなたと出会えなければ、私は愛情も知らないままでした……」
ううん…と、彼女が首を振って応える。
「私の方こそ、あなたに会えてよかった……こんなにも人を愛したことは、初めてだから……」
彼女の潤む瞳が私をじっと捕らえる。
「愛してる……政宗先生……一臣さん……」
伝えられる言葉に胸が疼いて熱くなるのを感じる。
「ありがとう……私も、君を愛してる……智香」
彼女の手を取り、揃いの腕時計に耳を傾けた。チッチッチッ…という秒針の音が規則的に響く。
「君と同じ時間を過ごせることが、何よりの幸せです」
「……私も」
指の間に手が差し込まれぎゅっと握られると手の平を温もりが伝わって、いつまでも離すことはできなかった……。