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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。エーリカと再会して二日後、作戦会議を行うため皆を教会の会議室へ集めました。
集まったのは私、シスター、セレスティン、ルイ、ベル、マクベスさん、ドルマンさんです。そして協力者としてラメルさんにも参加して貰っています。
エーリカは流石に初日から動きすぎたのかダウンしており、いつの間にか懐いたアスカが側に居ます。
「先ずはラメルさん、報告をお願いします」
「『エルダス・ファミリー』はキッドの失敗を知ったよ。ついでに、嬢ちゃんが出した手紙も届いた。エルダスの奴は憤死するんじゃねぇかってくらい怒り狂ったって話さ」
「お嬢の煽りは地味にきついんだよなぁ」
地味とはなんですか、ベル。
「で、奴は幹部のバンダレスに『暁』を潰すように命じた。集めてる兵隊も半分以上預けてる。二百は居るだろうな」
「二百かぁ。随分と集めたなぁ」
ルイがため息混じりに言いました。確かに、凋落寸前の組織が集めたにしては随分と多い。
「だが、それだけ集めたら後はないだろうな。それで、バンダレスってのはどんな奴なんだ」
ドルマンさんが腕組をしたままベルに尋ねます。
「頭が良い奴じゃないが、その突破力はケタ違いだ。本人もタフで馬鹿力の持ち主。そんな奴が兵隊を率いてくるんだ。一筋縄じゃいかねぇだろうな」
「ベルモンド、有効な手はありますか?」
シスターから質問が飛びます。
「生半可な策略は強引に突破される。うちの真正面に誘き出せれば、後はマクベスの旦那が始末してくれるさ」
「ドルマン殿達の努力により装備の質は日々向上している。そしてそれに劣らぬ練度も保証するが、二百となれば今まで戦ったことの無い数だ。出来れば数を減らしたい」
「それに、前例がございます。容易に正面から攻め込まぬでしょうな」
セレスティンの言葉に頷いておきます。クリューゲ一派との戦いの経緯がどう伝わったか分かりませんが、あちらも警戒している筈。無策で突っ込んできてくれれば楽なんですけどね。
「シャーリィ、どうすんだ?」
「簡単ですよ、ルイ。相手が暴力の権化ならば、策略で潰すまでです」
「生半可な策じゃ意味がないぜ?お嬢」
「だからこそ、私達が攻勢に出て農園の守りが手薄であると誤認させます」
「攻勢に出るのですか?シャーリィ」
「はい、シスター。あちらの兵隊の数を減らしながら挑発を行います。仮に動かない場合は、お義姉様が背後を脅かす予定です」
「『オータムリゾート』と話が付いてるのか」
「そうです、ベル。お義姉様は勢力拡大を目論んでいます。利害は一致しているので、共闘するつもりですよ」
「しかし、挑発とは言え我が部隊に暗殺などは」
「少数精鋭で行きます。私達幹部で十六番街に潜入。彼らを始末しながら動きを誘います。ラメルさんは、此方が攻勢に出て農園は手薄だと偽の情報を流してください」
「任せろ」
「誘いに乗るでしょうか?」
「心配すんなよ、シスター。俺たちみたいな弱小組織に良いようにされたなんて知られたらメンツが丸潰れだからな」
「唯一懸念があるとするならば、『ターラン商会』の過激派に動きがあります。マーサさんから警告されました」
「動き出しましたか。厄介な」
「そうでもありませんよ、マクベスさん。敵を一気に殲滅できる好機でもありますから」
「それはそうですが」
「戦力としては小さなものです。ただし、武器の提供が行われた痕跡があるそうで、銃撃戦は覚悟しておいてください」
「望むところです。陣地強化と策を為すため隠ぺいに力をいれます」
「お願いします」
「それで、誰がやるんだ?敵地に乗り込むことになるんだぞ?お嬢」
「それはもちろん、私、ルイ、ベル、シスター、アスカ、そして今回はセレスティンも一緒に来て貰います」
「御意」
「ほぼ全員ですな。では留守は私とロウ殿ですか」
「ロウには引き続き農園全般を任せていますからね。エーリカは先ず身体を回復させてからです」
「お前も乗り込むのかよ、シャーリィ。大将らしくどっしり構えとけって」
「嫌です。先頭を切ります。大切なものを守るための戦いで後ろから見ているつもりはありません」
「けどよぉ」
「それに、私が出向けば農園が手薄になっているとの偽情報に信憑性を持たせることが出来ます」
「だが心配もある。バンダレスが空き巣のように農園を狙わねぇで直接お嬢を狙ってくる可能性もあるからな」
「そんなことがあるのですか?」
「ある。少なくともバンダレスの奴はある意味行動予測が難しいからな。上手くエサに食いついてくれれば良いんだが」
「ベルの懸念は尤もですね。それでは少しばかり保険を用意しますか」
「なんだよ?保険って」
「ドルマンさん、いくつか爆弾を用意できませんか?家を吹き飛ばすくらいの」
「急には無理だぞ。二日貰えればいけるが」
「ではお願いします。もし『エルダス・ファミリー』が私達潜入組を狙った場合は彼等の事務所をいくつか爆破してあげましょう。『血塗られた戦旗』を巻き込みながらね」
「『血塗られた戦旗』にも手を出すつもりか!?お嬢!」
「今回の騒ぎの背後には彼等が居ます。ラメルさん、『血塗られた戦旗』に動きは?」
「ここ二週間動きはないな。『暁』と『エルダス・ファミリー』が潰し合うのを待ってるんだろう」
「それはいけませんね。パーティーに参加しないのは無粋です」
「シスターの言う通りです」
「しかしながら、どのような手を使うのですかな?お嬢様。我々は『血塗られた戦旗』について全く情報を持ち合わせておりませんが」
「彼等に直接手を出す必要はありません。同じようなことやり返すだけですよ」
「『血塗られた戦旗』に扮して、か。上手くいくかわからねぇが」
ベルは心配そうです。確かに思い付きである自覚はありますよ。
「策が外れたら全力で農園に逃げ込むだけです。上手くいけば儲けもの程度の認識で構いません。最終的に『エルダス・ファミリー』へダメージを与えられるなら問題はありません。万が一に備えて今回は自動車を持ち込みます。撤退用にね」
「なるほどな」
納得してくれたみたいですね。
「ラメルさん、『血塗られた戦旗』の情報はありませんか?」
「無いな。二年前から表だって動いてるのは男女二人組だ。女の方が今回動いたみたいだがな」
「なんで分かるんだよ?」
ルイが質問します。
「死体を見りゃ分かるさ。『綺麗に斬られてる』って表現されるんだ。つまり、どれも急所を一撃。他に怪我は一切無いからな」
「ほう、そいつぁ腕が良さそうだ」
「ああ、二年前から急に現れてな。あちこちで暗殺をやってる。詳しい情報は少し待って貰うぜ」
「ありがとうございます。その特徴を模範してみましょうか」
急拵えで稚拙な策ではありますが、『エルダス・ファミリー』に打撃を与えるにはこれが一番の筈。上手く行くかは運次第ですね。