家に帰って新聞を眺めている父に声をかけた。
「父上,質問いいですか?」
「あぁいいぞ。」
「薬の作り方を教えてください。」
うちの家族は滅多に喋らない。2年前に4つ上の兄が家を出て行く前はもっと家族らしかった。家族を1番近い他人という言い方をするが俺の中では1番遠い血縁だ。
「どうしてだ?」
「病気についてもっと知りたいから。」
「もしかして今世界問題になってるやつか?」
「そうなんだけど、そもそもその熱の名前をなんて言うの?」
「医者内では昏睡型発熱症で通っている。正直特効薬はできていないこともないんだ。でも副作用がすごくてな。しかもなぜ治るかも分かってかないんだ。」
「そんなの使っていいのかよ。」
「麻酔と同じだ。お前は俺の病院を継ぐんだからな。もう中学生なんだから立派な大人だろ。それぐらい覚えとけ。逃げたあいつとは違うんだ。」
「はい、、、、」
「どうして薬を作りたいんだ。そんなやつじゃなかっただろ。」
「助けたいから。」
「そういうことは大人に任せれば良いんだよ。子供が手を出すことじゃ無い。」
『子供』その言葉が頭にきた。
「さっきはもう大人って言っただろ!」
つい声を荒げてしまった。
「あのなぁ,物事には位があるんだよ。勉強と医術はその位が違う。浅はかなんだよ。」
「じゃあ子供だからってのも浅はかだろ!」
言ってしまったら止まらない。それが俺の悪い癖だ。
「そんなこと言ってなんになる。今俺の意見を否定して,何か変わるか?お前には何もできないんだよ。」
「何もできないから何もしないんじゃ何も始まらないだろ。」
「だから出来ることから始めるんだ。」
「生まれた頃は誰だって何もできないだろ?!」
自分が言ってることの筋が通ってないってのは知っていた。分かっていた。だからもう,この言葉を言った後言い返す気持ちは無かった。父はそれを読み取ったのだろう。ため息をついたあとこう言った。
「なぜそこまでする。」
「約束があるから。頼られているから。」
そう言って部屋から出た。そうだ。まだ俺ははるきとの約束がある。かいとに頼られている。父に言い返すのやめたぐらいで折れてはいけない。りょうは自分に熱があることを知りながら,なおきに心配かけまいと無理矢理学校を1日やり切ろうとしたのだ。なおきは自分の責任感と行動力で皆にバトンを繋いだのだ。俺がそのバトンを放り投げてやめて良いわけがない。
『見とけよ毒親、これがたかが子供の本気だ』
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