ビリーがいつも行くところに街のメインストリートにあるこの街唯一の武器屋がある。武器に防具、鍋なども置いてあり何屋なのかと思ってしまう。
この店にはいつも無愛想な男がひとりで店番をしている。
武器の質はよく、鍋などもよく売れているようなのでどうせならもう1人くらい愛想のいい店員を雇えばいいのにと内心で思っている。
しかしこの男に鍛えられた剣が斬れ味よく、特にオオカミに対しては豆腐のように斬れるものだ。その真価は過去に一度しか発揮できていないが……。
「相変わらずか?」
「ああ」
それだけの会話。ビリーは彼に対し並々ならぬ感謝の念を覚えている。どんなに言葉を連ねても大した反応もないのだから、恩人の健康チェックと自分の生存報告だけにしている。それでも、ここにはよく来る。ここで武器を見ているとなぜだか心が落ち着くのを感じて。武器マニアにでもなってしまうのかと危惧しながらも。
市場でパンと水を買い街を出た俺は、馬を駆り東にある林に向かう。途中見知った農夫と挨拶したりしながら、風を切っていく。
林の入り口にある立て看板を軽く拭いて中へと進む。
少し奥になるが開けたところがあり、そこに小高い丘がある。色とりどりの花がまばらに咲いてあり、その頂点にはいつも一輪だけ、俺の胸の高さほどのひまわりが咲いている。
ひだまりが気持ちいいこの場所は俺のお気に入りの場所だ。
ここではかつてあの武器屋の男と共闘した過去がある。その時にはこのひまわりは確か無かったと思うが、ここでひまわりを見ていると不思議と安らぎを得ることができる。
まるで千年の恋でもしているような、あるいは絶望の淵から救い出してくれる天使に会ったかのような、そんな想いが溢れてくる。
自分でもよくわからないこの想いは、ここが魔力溜まりだからなのかなと、パワースポットの一種と捉えている。
魔力溜まりだから、なのだろう。愛剣を抜けばここでだけ、いつもは青い刀身がほのかに桃色を帯びるのだ。
その優しい光を見るたびに、ここで何か約束したことがあるような気がしてくる。
大事な、とても大事な約束を。
単にここが気に入っているし、これからも通い続けるのだろう。
どうにも思い出せないけど、こうやってひとりでピクニックのようなことをしていれば、そのうちに思い出せる気がするから。
パンとぬるい水でくつろいでいると、ひまわりの向こう。
茂みに隠れた小さなキツネを見た気がした。
ただ、そのキツネは見たことない毛色で、ちょうど今の愛剣と同じ綺麗なピンク色だった。
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