コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
【あらすじ】
夫であるシトラス王国元国王バルザード十二世を毒殺した犯人を探す女王ロカ、暗躍の末、彼女は犯人探しの最後のピース、忠実な騎士にして道化探偵のナイト•クラウンを部下にした。 ロカは長年の暗躍の末、容疑者を四人に絞っていた。
「では、まずバルザード十二世様がお隠れに
なった当時の状況をお教えくだせぇ。」
ナイト•クラウンは砕けた口調でそう言った。 へりくだった口調は礼節を重んじない
『悪政のロカ』にとって無駄でくだらないものだと女王ロカに言われたからだ。
『夫が死んだのは六年前の10月11日、夫の愛用していた書斎で何物かにコーヒーに毒を入れられ殺されているのが見つかったわ。第一発見者は料理長のビショップ•マカロンよ。その後、 衛兵達に夫が死んだ部屋の状況を確認したところ、夫のコーヒーカップには夫とマカロンの 指紋がついてたのが分かったわ。』
「そしたらその料理長が犯人なんじゃねぇん
ですかい?」
ナイト•クラウンが素っ気なく聞く。
「私もそう思い、彼女を尋問したわ。でも
彼女を犯人として処刑するには二つの謎が
あるの。」
ナイト•クラウンは女王ロカの忠実なる部下
として黙ってロカが話し終わるのを待っていた。
【推理タイムその1】
「一つ目の謎は彼女が夫の毒味係であったこと、彼女は夫の珈琲の毒味をしていたの。
しかし彼女は毒入り珈琲を飲んでもピンピンしてたのよ?」
「つまり、バルザード十二世様が飲んだ途端に 珈琲が毒に変じたと….。カップに細工がされてたんじゃねぇですかぃ?」
「カップは私の立ち合いの元徹底的に調べられたけど細工は見当たらなかったわ。調査を怠る衛兵がいたら即刻処刑したから調査に抜かりはないわ。」
さらりと言うロカに青ざめながらナイト•クラウンは質問を続けた。
「そしたら、毒が何やら特別な毒だった。
あるいはバルザード十二世様のアレルギーを
利用したものだった。とかはないですかい?」
女王ロカは首を横にふった。
「衛兵達による調査の結果、コーヒーに含まれていた毒は東洋の昆虫の毒を複数掛け合わせたものだと判明したわ。我が国の民を招集し毒の効果を確かめたところ、必ず全員が服毒後 数十秒で泡を吹き、全身を痙攣させた後に死んだわ。そんな毒を飲んで死なない人間は魔女くらいのものでしょう?私は今まで色んな老若男女とわず色んな人間を拷問し処刑してきたけれど、未だに魔女には出会ったことはないわ。」
(目の前に悪魔はいますけどね。)
と言った顔で ナイト•クラウンはロカの顔を見た。
ロカは続けて言った。
「第二の謎は動機よ、第一発見者であり最
有力候補者であるマカロンは私が直々に調べつくしたわ。ほぼ拷問に近い尋問を繰り返しても、 マカロンは王の毒味係としての自分の落ち度を 責め続け、王の魂の安寧を祈りつづけていたわ。 私は今までありとあらゆる人間を拷問してきたから尋問中に嘘ついてたら分かるの。だから 彼女は第一発見者であり、最有力者である料理長ビショップ•マカロンは最も疑わしい存在であるにも関わらず今日まで処刑を免れている。」
「なるほど、最も疑わしい存在であるからこそ、彼女は真っ先に調べつくされ、結果シロであると判断されたわけですね。」
「まだグレーよ。私は毒味係としての
監督不行き届きとして彼女を処刑しようとしたわ。でも我が国の参謀であるルーク•グリッツファーに諌められ、それを辞めたわ。」
「そりゃまたどうして?」
「料理長ビショップ•マカロンは大勢の国民に支持されているからよ。料理長ビショップ•マカロンは夫の父であるバルザード十一世の頃から絶大な寵愛を受ける料理長よ。理由は単純、料理の天才だから。彼女の生み出す料理は舌の肥えきった外国の国王達ですら唸らすほどの 腕前で中には彼女の料理が目当てでシトラス王国に外交を求めて来る国王もいるほどなの。 さらに彼女の生み出すレシピは我が国の食卓に革命を起こし続け、多くの家庭で愛され続けているわ。そんな彼女を処刑したら間違いなく とてつもない暴動が起こるわね。以上が今まで マカロンを処刑しなかった理由ね。」
「あぁ…..国の情勢に明るくない私も思い出してきやしたよぉ。『食の聖母』というとてつもなく偉大な料理人がいるって噂を以前町で聞いたことがありまさぁ。それがビショップ•マカロンさんですねぇ。」
ナイト•クラウンが納得したと言わんばかりにウンウン頷いた。
「容疑者A ビショップ•マカロンに関する情報は以上よ。」
話しを聞き終えるとナイト•クラウンは
自らのメモ用紙につらつらとこう綴った。
【推理タイム1の謎】
•誰がバルザード十二世の珈琲に毒を入れたのか?
•ビショップ•マカロンは実行犯なのか?
もし実行犯ならどのようにして女王様の尋問から真実を誤魔化し、珈琲の毒味をしても死ななかったのか?
メモをとり終えた後、ナイト•クラウンは
女王から次の容疑者の話を聞いた。
【推理タイム1 終了】
【推理タイム2】
「第二の容疑者は大臣のルーク•グリッツファーよ。ルークには夫を殺す動機がある。
ルークはいつだって夫と揉めていたわ。一番の原因は夫が私と結婚したことね。私が王家の 血筋じゃないことは国の情勢に明るくない貴方も知っているでしょう?」
ナイト•クラウンは黙って女王ロカに頷いた。
「『あの女と結婚するのは合理的ではありません、最悪国が滅びかねない。いつか必ず後悔しますよ。』よくルークはそう言ってたそうよ。だから夫を見限って毒殺計画を企ててもなんら不思議ではないわ。現に前国王である私の夫が毒殺されてからこの国の実権は王の実母である私と、この国の大臣であるルークが完全に 握っているのだから。」
「感情的にも利害関係的にも動機は十二分ってことでさぁねぇ。」
ナイト•クラウンがうんうん頷いた。
「だから私はルークを尋問したわ。だけどどれほど尋問してもルークは『私は王の毒殺
計画など企てていません。』『これ以上の尋問は時間の 無駄で合理的ではありません。』『これ以上 私の時間を奪うと行政に支障が出ます。』 の一点張りだったわ。私は長いこと女王として 拷問や処刑を繰り返してきたから嘘をついてれば分かるの。少なくとも彼は嘘はついてない。尋問のために剥がす爪もなくなったし私は彼を解放したわ、これ以上ルークの時間を奪うと 本当に行政に支障が出ると判断したの。」
「女王様にそこまで言わせるたぁ、ルーク
大臣は有能な方なんですねぇ。」
ナイト•クラウンは呑気にそう言った。
女王ロカは憎々しげにこう続けた。
「有能なんてものじゃないわ。ルークは私が
処刑した他の大臣全ての業務を1人で回せる
ほど頭がいいの。誇張抜きに言えばあの男は
この国の頭脳よ。あの男を今殺せば、
間違いなく国が滅ぶわ。」
ナイト•クラウンはポリポリと頭を掻いて
「……でもぉ、犯人だったら処刑するおつもり なんですよねぇ?」
と女王ロカに訪ねた。ロカは覚悟を決めたように。
「ええ、私は復讐のためなら、国と刺し違えるつもりよ。」と言った。
ロカの瞳の奥には復讐の炎が燃え盛っていた。
ナイト•クラウンは女王ロカの復讐心を
再確認したあとつらつらとメモにこう書いた。
【推理タイム2 まとめ】
•第二の容疑者ルーク•グリッツファーはバルザード十二世毒殺事件に関与しているのか?
・もし事件に関与しているとしてどのように
女王様の尋問から逃れたのか?
彼は嘘はついてないのかもしれない。しかし
なんらかの事実を隠しているのではないか?
ここまで書き終えてからナイト•クラウンは
「そんでぇ、女王様的にはルーク大臣はどうなんですかい?シロだと思います?
クロだと思いますぅ?」
と女王ロカに問うた。ロカは迷いなく
「クロよ。」と即答した。
ナイト•クラウンは
「そりゃまたどうして?」
とロカに尋ねた。
「理由なんてないわ、女の勘よ。」
と何気なしに答えた。
(なるほど、女の勘と来たか。こりゃ探偵の勘より当てになるなぁ。)
とナイト•クラウンは思った。
「でも国が滅んじまったら困りやすよぉ。
俺と100人の美少年の丸太小屋生活はどうなるんでさぁ?」
とナイト•クラウンはロカの忠実なる騎士としてこの場を和ませるためにジョークを発した。
「私はこの国の女王よ?国が滅ぶ前に貴方に
領地と美少年100人を用意するぐらい造作もないわ。安心なさい、私はこれでも金払いはいい方なの。」
とロカはその豊満な胸を張ってみせた。
【推理タイム2 終了】
【推理タイム3】
「それじゃ、残る容疑者は二人でさぁねぇ。」
ナイト•クラウンはメモを取る用意をした。
女王ロカは長いこと話して少し疲れたのか
ふわりとあくびをした。
「ええ、残る容疑者は二人、陸軍大臣のギャンビットと我が息子で現シトラス王国国王の
バルザード十三世よ。」
【推理タイム3 開始】
「残りの二人も犯行動機絡みですかい?」
女王ロカがスムーズに会話を進めれるように
忠実なる騎士探偵ナイト•クラウンは会話の
パスを女王ロカに回した。
「ええ、陸軍大臣のギャンビットは夫と隣国との戦争に関することで揉めていたわ。夫は隣国との戦争をやめたがっていたの。だって戦争ってめんどくさいじゃない?でもギャンビットは夫の友好的外交にNo.を突きつけたの。『いまここで戦争をやめたら散っていった兵士達の 犠牲が無駄になる。』とかなんとか言ってね。」
「そこまで王様と揉めてるのに処刑されないってことはギャンビット大臣も優秀な方なんですねぇ。」
呑気にそう訪ねるナイト•クラウンに
「超がつくほどね。」とロカはため息をついた。女王はさらにギャンビット陸軍大臣の
情報をナイト•クラウンに伝えた。
「ルークがシトラス王国の頭脳ならギャンビットはこの国の心臓よ。たかが陸軍大臣に
大袈裟だと思うでしょう?だけどギャンビットはそれほど国の運営に重要な存在なの。事実、我が国の領土はギャンビットが陸軍大臣になってから5倍になったわ。ギャンビットはとにかく兵士達の指揮を取るのがうまいの。圧倒的なカリスマ性と烈火のごとき戦略。その指揮と演説で兵士の心を震わせ、的確に兵士を配置し、戦場を 支配する。そのカリスマ性と戦略眼をもちいて私の夫の殺害計画を企てた可能性は十分にあり得るわ。」
そういってロカは頭を抱えた。
「圧倒的カリスマ性と烈火のごとき戦略眼、
そりゃまた…..最悪ですねぇ。もし彼が謀反なんて起こしたら我々の陣営に勝ち目あるんですかぃ?」
「…….本当に最悪よ。はぁぁ…..優秀すぎる駒ってのもそれはそれで厄介よねー。いつその矛先が自分に向かってくるのか分かんないんだもの。」
「私はぁただの探偵で戦争とかはからきしなんでぇ謀反とかが起こったらとんずらさせてもらいまさぁ…….。」
ナイト•クラウンが半ば本心の冗談をいうと
「あらー?今処刑しちゃってもいいのよー?」
と女王ロカが黒い笑みを浮かべ彼女の指を
ならそうとした。
「いやいや冗談でさぁ冗談でさぁ!!小粋な
ジョークじゃないですかやっだっなー!!!!」
ナイト•クラウンは汗をだらだらながしながら 必死でその場を取り繕った。
ロカはため息をつき、話を続けた。
「ギャンビットのことも当然調べたわ。勿論、体の隅から隅までね。……あの男は軍人の中でも飛び抜けて屈強ね。金玉一つ潰しても眉一つ動かさず何も吐かなかったわ。私は疑わしきは処刑の精神でギャンビットを殺そうとしたけど、隣国との情勢が悪化していてギャンビットを殺すといよいよ国が滅ぶとルークに止められてしぶしぶ今日まで生かしているのよ。 …….ギャンビットの情報は
以上よ。」
ナイト•クラウンはロカの言葉に相槌をうち
推理メモに新たに情報を書き足した。
【推理タイム3 まとめ】
•陸軍大臣ギャンビットはバルザード十三世と 外交政策の方針の違いで揉めていたらしい。それが犯行動機になったのか?
•他二人に比べ情報が少ない。なんとか女王陛下のためになんとか情報収集しないと。
【推理タイム3 終了】
ナイト·クラウンがメモを取り終えたのを見計らってロカは最後の容疑者候補の情報を淡々と 述べた。
「最後の容疑者は夫の息子にして現国王のバルザード十三世よ。」
夫の息子、という単語にナイト•クラウンは
ひっかかった。現国王と女王ロカには何か確執があるのかもしれない。
「考えられる動機は怨恨ね。……息子は私達
夫婦を恨んでるに違いないわ。」
「そいつぁどうしてですかい?」
「それは私達が息子を愛さなかったからよ。
夫は国王としての激務に追われていたわ。そして、私は子供の愛し方なんて知らなかった。私はいつだって息子を従者達に任せて息子から目をそらし続けた。息子はそのせいで周囲から心を閉ざすようになった。子を愛さなかった親を子供が殺そうとしても、それは不思議なことではないでしょ?流石に息子には尋問はできなかったわ。何てったって
現国王だもの。」
それを聞き、ナイト・クラウンはメモに情報をまとめた
【推理タイム4まとめ】
•現国王と女王陛下の関係には深い溝があるようだ。
•現国王に関する情報も極めて少ない。何か情報収集をせねば。
【推理タイム4 終了】
「怨恨、大いにありえますねぇ。……なる
ほどぉ、一応確認なんですが他に容疑者は
いないんですかぃ?」
「残る容疑者は四人よ 。」
『悪政のロカ』は髪をかきあげていった。
「だって、他の疑わしい容疑者は、私が皆
とっくに処刑してしまったもの。」
『悪政のロカ』の両手は、とっくのとうに
どす黒い血で染まりきっていた。
(バル、見ててね。必ずあなたを毒殺した犯人をそちらに送ってあげるわ。犯人達が尤も
苦しむ方法で、地獄に送ってあげるから。)
女王ロカは亡き夫バルザード十二世に思いを
馳せ、復讐心を再燃させた。
「女王陛下ぁ、女王陛下の忠実なる騎士
ナイト•クラウンから陛下に進言がございやすぜぇ。」
「言ってごらんなさい、我が騎士
ナイト•クラウン?」
「容疑者達の人となりを知るために四人を
一同に集めていただけませんかねぇ?」
ナイト•クラウンの言葉に女王はふわりと
あくびをして、そしてニヒルに笑った。
「悪くない提案ね、ちょうど喋りすぎて喉が
渇いてたところなの。」
「皆でお茶会にしましょう。」
(次回 【赤き女王蜂の茶会】)