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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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第143話:世界規模の確定申告(絶望)〜免税の代償と、焼き切れた脳細胞〜
「……チェックメイトだ、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)!!」
帯広のボロアパート、四畳半。
俺は、三万円のゲーミングチェアからガタッと立ち上がり、両手を天高く突き上げて勝利の雄叫びを上げた。
PCモニターには、数時間に及ぶ死闘の末に提出を完了した『W-8BEN(米国源泉税に対する受益者の非居住証明書)』の承認画面が、神々しい光を放って表示されている。
『ジェミニ先生、最終ステータスの確認を』
ディスコードの向こうから、我が社の有能すぎる経理担当・結愛(ゆあ)が静かに指示を出す。
『はい。ステータス【承認済み】。日米租税条約の適用が正式に受理されました。これにより、ヨモさんが米国視聴者から獲得したYouTube収益に対する源泉徴収税率は、30%から【0%】へと変更されました』
AIアシスタントの無機質な合成音声が、俺にとってはこの世で最も美しいファンファーレに聞こえた。
「勝った……! 俺は、世界最強の国家権力(アメリカ)から、俺のドルを守り抜いたんだ!!」
俺は歓喜の涙を流しながら、机の上にあった一日一食の主食、冷めた玄米おにぎりを高々と掲げた。
「これで二重課税のカツアゲは回避された! FBIがこの四畳半のドアを蹴破ってくることもない! 俺は自由だ!!」
世界中のリスナーから降り注ぐ緑色のスーパーチャット。
その売上が、アメリカに一円も搾取されることなく、そのまま株式会社インフィニティ・ワンの口座に振り込まれる。
俺はついに、グローバル企業としての完全勝利を手にしたのだ。
『……ルシフェル様。大変申し上げにくいのですが、一つよろしいでしょうか』
俺が一人で祝杯(麦茶)をあげようとしたその時、結愛の氷点下ボイスが四畳半の空気を一瞬で凍らせた。
「なんだよ結愛。今は水を差すな。俺はアメリカとの戦争に勝った英雄なんだぞ」
『アメリカとの戦争(書類提出)に勝ったのは、私とジェミニ先生の翻訳サポートがあったからですが。それはさておき……ルシフェル様は今、「チュートリアル」が終わったに過ぎないということをご理解されていますか?』
「……チュートリアル?」
俺は麦茶のコップを持ったまま、首を傾げた。
『はい。アメリカ側での免税手続きが完了したということは、裏を返せば、その莫大な外貨収益を、今度は【日本国内の税務処理(確定申告)】において、1円の狂いもなく正確に計上しなければならないということです』
「あ、ああ、そうだな。でも売上を帳簿に入力するだけだろ? お前がいれば余裕じゃねえか」
俺が鼻で笑うと、結愛はウェブカメラの向こうで深いため息(特大の呆れ顔)をついた。
『ルシフェル様は、【消費税の輸出免税】という概念をご存知ですか?』
「ゆしゅつ、めんぜい?」
『ジェミニ先生。このポンコツ社長に、越境ECおよび海外スーパーチャットにおける消費税の仕組みを解説してあげてください』
結愛にパスを出され、ジェミニ先生が容赦のない税務講義をスタートさせた。
『はい。ルシフェルさん、日本の消費税は、国内でのサービス提供や物品の販売に対して課されるものです。しかし、ヨモさんのように【海外の視聴者】から受け取ったスーパーチャットは、国外取引とみなされ、消費税が免除されます(不課税・免税取引)』
「おおっ! 免除! いい言葉じゃないか! じゃあ、海外からのスパチャには消費税がかからないから、来年払う消費税が安くなるってことだな!」
俺は三万円のゲーミングチェアの上で膝を叩いた。
海外から稼げば稼ぐほど、日本のインボイス(消費税)の地獄から抜け出せる。まさに錬金術ではないか!
『……それが、素人の浅はかな罠なのです』
ジェミニ先生の声が、急にホラー映画のように低くドロップした。
『ルシフェルさん。消費税の納付額は、「預かった消費税」から「経費で支払った消費税」を差し引いて計算しますよね?』
「おう、インボイスの基本だな」
『では、もし会社の売上の大半が【海外からの免税売上】になった場合、どうなるでしょうか。貴方は消費者から「消費税を預かっていない」状態になります』
「うんうん」
『しかし、ルシフェル様が日本国内で支払う経費(電気代、通信費、機材代、外注費など)には、しっかりと消費税が含まれています。つまり、支払った消費税だけが一方的に積み上がっていく状態になります』
「……あれ? ってことは、俺が払いすぎた消費税を、国が還付(返金)してくれるってことか!?」
俺の目が「¥」のマークに変わった。
『原則としてはそうなります。……しかし! そこで立ちはだかるのが【課税売上割合】という絶望の計算式です』
「か、かぜいうりあげ……わりあい?」
聞き慣れない専門用語の羅列に、俺の脳ミソがピリッと警鐘を鳴らした。
結愛が、感情を一切交えずに引き継ぐ。
『会社の全売上のうち、国内売上(課税)が何パーセントで、海外売上(免税)が何パーセントか。その割合によって、経費として差し引ける消費税の額が、極めて複雑に制限されるのです』
「……えっ?」
『ルシフェル様。今後、株式会社インフィニティ・ワンの経理において、貴方はすべての領収書を、以下の【三つの区分】に厳密に仕分けしなければなりません』
画面に、地獄の三択がポップアップ表示された。
1.【国内の売上】のみに対応する経費
2.【海外の売上】のみに対応する経費
3.【国内と海外、両方の売上】に共通して対応する経費
「…………は?」
俺の思考が、フリーズした。
『これを【個別対応方式】と呼びます。例えば、ルシフェル様が先月買った「100円のボールペン」。これが、国内向けの配信のメモに使われたのか、海外向けの配信のメモに使われたのか、それとも両方なのか。これを1枚のレシートごとに証明し、仕分けしなければ、税務調査で否認されます』
「わ、わかるわけねえだろそんなの!! ヨモの配信なんて、国内と海外の奴らが入り乱れてカオスになってるんだぞ!! その中でボールペンがどっちに使われたかなんて、神様でも仕分けできねえよ!!」
『仕分けできなければ、【一括比例配分方式】という別の計算を強制適用されます。しかしこれは、一度選択すると二年間は変更できず、場合によっては「本来払わなくていいはずの莫大な消費税」を国に持っていかれる諸刃の剣です』
「あ……あぁ……っ」
俺の呼吸が、再び浅くなってきた。
『さらに、海外売上が全体の95%を超えたり、逆に5%未満になったりすると、また計算式が根底から覆ります。毎月の売上比率を監視し、どの方式が一番税金が安くなるかをシミュレーションし続けなければなりません』
ジェミニ先生が、無慈悲にトドメを刺す。
『ルシフェルさん。グローバルに外貨を稼ぐということは、これほどまでに複雑怪奇な【国際基準の確定申告】を、ミスなく完遂する義務を負うということです』
「…………」
俺は、手の中の玄米おにぎりをポロリと落とした。
一日一食の質素な生活で、極限まで省エネ化された俺のミニマリストな脳細胞。
それが今、「課税売上割合」「個別対応方式」「一括比例配分方式」という、インボイスを凌駕する超高度な税務用語の連続攻撃により、完全に容量(キャパシティ)をオーバーしていた。
プシュー……。
俺の耳から、幻の白煙が噴き出した。
『あ。ルシフェルさんの心拍数が急低下しています。脳の保護回路が働き、現実逃避モードに移行した模様です』
ジェミニ先生の実況を遠くに聞きながら。
「……世界進出なんて、するんじゃなかった……」
俺は、三万円のゲーミングチェアの背もたれにぐったりと倒れ込んだ。
ただ、四畳半の部屋でゲームをして、少ない同接で細々と笑っていたあの頃。
あの頃の「底辺」が、今思えばどれほど気楽で、どれほど平和だったことか。
『SuperChat: $100.00 (Why is the Super Bottom CEO staring at the ceiling?)(スパチャ100ドル:なんでスーパーボトム社長は天井を見つめてるの?)』
『SuperChat: $50.00 (He is calculating his massive taxes! LOL)(スパチャ50ドル:自分の莫大な税金を計算してるんだよ! 笑)』
X(旧Twitter)では、今日も俺のミームが世界中を駆け巡り、何もしていない俺の口座に勝手にドルが振り込まれ続ける。
そしてそのドルの雨は、そのまま【地獄の経理作業】と【超複雑な消費税計算】となって、俺の四十歳の精神をゴリゴリと削り取っていくのだった。
「誰か……俺を……ただの底辺に戻してくれぇぇ……ッ」
帯広の四畳半に、限界を迎えた社長の虚ろな呟きが、虚しく吸い込まれていくのであった。
コメント
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なんかもう、ヨモさんの受難が完全にシュールギャグの領域超えてて草生えたwww 海外の税務処理終わったと思ったら次は消費税の輸出免税とか、もう確定申告がRPGのボスラッシュすぎるだろw 「課税売上割合」「個別対応方式」とか聞いただけで俺の脳も焼き切れたよ… でも世界進出したらしたで「底辺に戻りてえ」ってなるの、なんかめっちゃわかるな~。 このカオス感、次も楽しみにしてます!🔥