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背中の辺りが丸くなるのを感じる。キュウリとレタスが、フォークで刺されたままになった。
「勘違いしないでね。馬鹿にしてるわけじゃないのよ。クタイ君のような人がいるから、流行って成り立つんだから」
なんだか、励まされているような気がしない。
「母さんには、何でも遠慮なく聞いて見るといいよ」とケマルは言う。生みの親をなくした彼は、ペリンさんを母と呼んでは、こうして最低週に一回は立ち寄るという。
「一つ質問していいですか」と俺は言った「どうして流行に乗らない代わりに、わざわざ創るんですか」
ペリンさんは、何を当たり前なという顔をしている。
「だって、いつまでも他人の鋳型にばかりはまってたら、自分が育たないじゃない」
「もうひとつ聞いていいですか」
ペリンさんは肉詰めピーマンをフォークで刺した。
「こっちの人って、時間主義じゃないですか」自分でも、わけのわからないことを言ってると思う「その、時間って何ですか」
「時間っていうのは、仮の名前ね。本当の名前じゃない」
ぺリンさんはピーマンを口に入れた。
「じゃあ、本当の名前は何ていうんですか」
ペリンさんは、食べながら話す。
「いろいろあるわ。例えば、選択。例えば、自由。例えば、人生」
俺は、ぺリンさんの目を見たままスープに手をつけた。
「作り出した時間をどう使うかは選択ね。または自由ともいう。それで人生は出来上がってくでしょ」
隣のケマルが言いだした。「オイ。早く食わないと、温野菜冷めちゃうぞ」
そして、俺の皿にブロッコリーを五個も入れやがった。