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なのわら🇯🇵🌸✨
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END.3 波打際、飛ぶ勇気と共に
エトルタの断崖。
フランスの、英仏海峡近くにある断崖。
昼は観光客で賑わうものの、夜にはあまり人は見られない。
それは、今日も例外ではない。
機内で見ていたパンフレットと同じ光景が、今私の目の前に広がっていた。
私以外、誰もいない崖。静かに打ち付ける波の音だけが聞こえる。
私が歩いた後、振動で石が海に落ちた。水しぶきが小さく上がった。
崖の先の、先の方へ進んでいく。
もうあともう少しで落ちてしまうというところまで、ゆっくり歩みを進める。
足取りは今までで一番軽い。
途中で遺書の上に旅行鞄を置いて、
断崖から足をだらりと垂らす。
いつ崩落してもおかしくない崖。
自分で飛び込む勇気がなくても、いつかは崩落してくれる崖。
思い出とともに、私はきっと断崖へ落ちていける。
英仏海峡に面する街、エトルタ。
互いの自宅の近さより、よくエトルタで待ち合わせになることが多かった。
そんなある日、たまにはエトルタにも行ってみようか、とフランスがエトルタの街と、最後にこの断崖を観光案内してくれた。
貴方が隣で笑う顔が見えた気がした。
FR「危ないから近づきすぎないでよ?まぁ落ちたら僕が助けるまでだけどね。」
FR「イギリス可愛いし小さいから…心配だなぁ」
GB「…それ煽ってません?」
179cmのフランスに言われると尚更、十センチ近くある身長差が大きく見える。
FR「可愛いってことだよ、イギ♡」
GB「…いい加減にしてください。身長コンプレックスなのに…」
FR「そんなイギもかわいいね」
GB「ッゅぅ……っ///」
FR「なにそれ〜。鳴き声?かわいー♡」
意地悪っぽく微笑む貴方に、幼馴染として、片思いの相手として、少しだけ頰が緩んだ。
釣り合わないと分かっているけれど、もし幸せになれたらなんて
そんな一縷の望みをかけて、まだ笑えたんだ
でも今此処に貴方はいない。
なんせ私が、逃げてしまったから。
GB「…こんな私なんて愛さなくて良かったのに。」
誰もいない虚空に向けて放つ言葉。
寄り添ってくれるのは無機質な波の音だけ。
体が、心がその音に飲み込まれ沈んでいく。
気付けば体を波に任せるよう、踏み出していた。
真っ逆さまに落ちた体。鈍い衝撃と痛みとともに、私は波にのまれた。
目が覚めた。真っ白い天井に、真っ白な視界。
そもそもここは天井なのか?
薄暗くてよく分からない。
少しだけ痛む腰をあげて、病室を見まわした。
心臓の鼓動を測るような機械に、鍵そのものがなく開けられそうにない窓。
庭のようなスペースに、車いすで移動する方やはしゃぐ子供が見えた。
ドアが大きく開いて、誰かが私の病室に入ってくる。
見慣れない人だった。
見慣れないというか、見たことない方。
彼?は淡々という。
●●「起きたんだね…っ、■■■」
最期のほうが聞き取れなかった。というか、意味不明な単語に聞こえた。
右耳にある、青、白、赤を縦方向に三分割した旗?のようなイヤリング。
反対にはダイアの形を模したイヤリングがついている。
続けて、サングラスをかけた大柄な方とファーのついたジャケットを着た大柄な方。
▼▼「ずっと待ってたんだぜ……?」
▼▼「ごめんな……っ、間に合わなくてッ」
私の手を握り泣き出してしまった。どうしたらいいのか分からない。
なんで泣いているのか、なんで間に合わないと言ったのかも。
▲▲「ほら、困ってるでしょ。いったん■■■から離れなよ」
特徴的な毛皮のついた帽子に、ファー付きのジャケットを着ている方が止めてくれる。
どうやら彼?は私の表情を読み取るのがうまいようだ。
▲▲「でも本当…起きてよかったよ。」
●●「ねぇ、■■■、今度さ、前一緒に行こうって言ってたカフェに__」
また一番最初に話しかけてきた人が話す。
これ以上話を進めたらきっと質問できる機会はない。質問しておこう。
「……あの、」
三人が同時にこっちを向いた。視線の多さに気圧される。
「…皆様のお名前…まずは伺いたいです」
沈黙が続いた。まずいことでも言ったのだろうか?
▼▼「……ぇ、ぁ…?」
驚いたような顔で、フリーズしている。
▲▲「なっ…?…ッ、ははっ、冗談…きついぜ?」
引き攣ったような笑みを浮かべている。
■■「冗談なんかじゃないです。」
長い沈黙の後。二人は頭冷やす、と言って出て行ってしまった。
また、彼が言葉を発した。
●●「命の代わりに……記憶…捨てちゃったのかぁ」
●●「……、そっ、か。それでも…僕は…君が好きだよ」
諦めたように笑って、そして静かに最期に彼は言う。
「……疲れちゃうから…僕は先にいくね。先いって待ってる。」
そのまま病室から彼は出て行ってしまった。
出ていく間際のその右手に、銀色の刃が見えたのは気のせいだろうか。
誰か知らないはずなのに、すごく気になるのは、
そしてもう二度と会えない気がするのは、
希望を失ってしまった気がするのは、
私も後を追った方がいいようなこの衝動は、気のせいなのだろうか。
END.3 波打際、飛ぶ勇気と共に
コメント
1件
読了しました、くじら🐋🫧さん。第16話、とても重くて美しいお話でしたね……。エトルタの断崖の描写、あのひそやかな夜の空気がこちらにも伝わってくるようでした。 “自分で飛び込む勇気がなくても、いつかは崩落してくれる崖”という一文に、胸がぎゅっとなりました。痛いくらいに諦めが滲んでいて、でもその優しい口調が余計に切ないんですよね。 そして病室のシーン。三人の見知らぬ人たちのそれぞれの反応がリアルで苦しい……特に最後の彼の「命の代わりに記憶、捨てちゃったか」という台詞が頭から離れません。あの銀色の刃の描写も、とても気になります。 続き、心から待っています。どうか無理のないペースで。