From.司
やはり、彰人は冬弥に過度な束縛をされていたようだ。だけど、まぁ…彰人は嫌がってないし、これが2人の「愛のカタチ」なんだろう。それなら、部外者の俺にとやかく言う権利はない。
「司くん、何考えてるの?」
類が俺の腕を抱きながら言った。俺は類を抱き寄せる。
「…また、東雲くんや青柳くんの事?」
類は少しムッとしながら言った。嫉妬だろうか。
「すまない、彰人の事を考えていた。だが、俺が愛しているのは類だけだ。安心してくれ。」
類はどうやら満足したようだ。
「ねぇ、司くん。怪談話しないかい?」
「怪談?」
「そう、怪談。じゃあ、僕から言うね。」
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From.冬弥
「彰人。」
俺は扉を開け、呼びかける。
彰人をここに監禁して、早々1週間だ。彰人は嫌がる様子もなく、ここにいる。ああ、俺の愛情がしっかり伝わっているんだ。
「なぁ、冬弥。今日の天気は晴れか?」
「残念。今日は雨だ。」
「そうか、最近雨ばっかだよな。」
「梅雨だからな。仕方ない。」
「そっか。今は6月なのか。」
「ああ、今は6月だ。」
「まだ、そんなに経ってないんだな。」
「…やはり、ここに居るのが不満なのか?」
俺は少し不安げに言う。
「いや、不満じゃない。お前は俺が好きなんだろ?なら、俺がここから出たい理由はないな。」
やはり、彰人を好きになって良かった。俺を受け入れてくれるのは、世界中で彰人だけだろう。
「それにしても、彰人は天気ばかり気にしているな。何故だ?」
「…いや、晴れが好きなだけ。」
「そうか。彰人は晴れが好きなのか。」
「おう。晴れってだけで、テンションアガるから。」
「なるほど。テンションか。」
「それに、晴れの日の夜空は綺麗だろ?それ、お前と見たいんだよ。」
「確かに、星が綺麗だな。だが、ここからは見えないぞ。」
「確かに。なら、見える所まで連れてってくれよ。」
「そうしたいが、彰人が逃げるかもしれない。」
「俺はお前といたいから、逃げる気はない。」
「俺はお前を信じていいのか?」
「信じられないのか?」
「分からない。だが、裏切られたら俺は彰人に何をするか分からない。それが怖い。彰人を傷つけたくない。」
「裏切る気はないから、大丈夫だ。」
「なら、俺は彰人を信じる。」
「俺も、冬弥を信じる。」
「じゃあ、もしも晴れたら星を見に行こう。」
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From.類
じゃあ、僕から話すね。
ある、高校生の女の子がいたんだ。彼女には、大好きな人がいた。だけどその人は人気者。平凡な自分なんか、眼中に無い。
そんな時、彼女はストーカー被害に悩まされていた。
ストーカー被害を大好きな彼に相談すると、彼は自分を心配してくれた。
それから、何度かやり取りするうちに、2人は付き合う事になった。
しかし、彼は人気者。付き合ってもその人気は衰えなかった。
彼の視線を独り占めしたかった彼女は、自傷行為を繰り返し、彼の気を引いた。
ある日、彼女は自分の家に彼を呼んだ。
初めて入った彼女の部屋に、彼は絶句した。
彼女は淡々と語った。
“この盗聴器と小型カメラ、高かったんだよ。”
“ほら、手紙だって新聞の文字を切り抜いて作ったんだ。”
彼は彼女に聞いた。
“一体何の話をしているんだ?”
彼女は微笑みながら答えた。
“何って、ストーカーの正体についてだよ。”
彼は震えながら言った。
“ストーカーは誰だ?”
彼女は声高々に笑った。
“ストーカーなんて初めからいないよ。全部、自作自演♪”
彼は逃げようとした。が、狂った彼女からはもう逃げられない。
その後、彼がどうなったかも彼女がどうなったのかも分からない。
「これでおしまい。」
司くんは驚いた顔をしただけで、全く怖がってなかった。
「あんまり怖くなかった?」
「ああ。怖くはなかったな。」
「そうなんだ。じゃあさ…」
「これ、僕と君の話だって言ったら、どう?」
司くんは顔色1つ変えず、冷静に言った。
「お前のストーカー被害は、全て自作自演と言うことか?」
「そう!初めから、ストーカーなんていなかったの。」
僕は得意気に言った。ここまで来れば、僕の勝ちだ。
「どうだい?怖いだろう?僕はずっと、君が好きだったんだ。君の気を引きたくて、演技してたんだ。」
司くん、逃げるかな。でももう遅い。もうここからは出られないよ。
「…はは、本当にストーカーは自作自演だったか?」
司くんは静かに微笑んだ。
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From.司
「…え?ストーカーは自作自演だけど…」
類は困惑しているようだった。が、逆に俺は安堵している。
俺は類が大好きだった。大好きだから、ストーカー行為をしていた。家を特定し、合鍵を造る。盗撮だって何度かしたなぁ。
だから、類が俺にストーカーを相談してきた時には、心臓が止まるかと思った。
とうとうバレてしまったのかと思った。
だが違った。俺ではない、別の誰かがストーカーしていたんだ。
俺は心配だった。類が俺以外のストーカーに狙われていると、気が気でなかった。
ストーカーなんてしてる場合じゃない。類を守らなければいけない。
そう思って告白し、同棲までする事になった。
正直、自作自演だなんて気が付かなかった。類の演技力には感心する。
だが自作自演で良かった。初めから、ストーカーは俺だけだったんだ。
「類は自作自演ばかりで気が付かなかったんだな?♡」
「ここにも…ここにも…ここにも。ほら、俺が仕掛けた盗聴器とカメラ。」
類の顔色が変わった。
「大好きな彼がストーカーだった気分はどうだ?」
「ほら、撮った写真もたくさんあるぞ。」
類は震えていた。怖いのだろうか。だが今更気づいても遅い。もう、ここからは出られないからな。
「類はそこまでして、俺の気を引きたかったんだろう?俺はもう、お前しか見てなかったのに。なんて健気なんだろうなぁ。」
「つ、司くんが僕の本当のストーカー…?」
「ああ、そうだぞ?全く、類は鈍感だなぁ。」
「さて。ストーカー事件も解決した事だし、これからは2人で幸せに暮らそうな♡」
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コメント
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もう鳥肌たちまくりでめっちゃビビったわ…狂愛とは怖いわね…あかまるちゃんすごすぎる
タイトルでほとんど察することはできたけど、、司のことまでは予測できませんでした…… あかまるさんホントにすごい。。