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「光あれ」
その傲慢な一言が、すべてを台無しにした。
それまで世界は、実に平和で、何より「公平」だったのだ。
誰もが等しく何も見えず、何も持たず、比べる対象すらない完璧な虚無。そこには優劣も、差別も、マウントを取り合う醜い自意識も存在しなかった。
ところが、誰かが余計な「照明」を点けてしまった。
スイッチが入った瞬間、残酷な現実が露わになった。
あちらには輝く金、こちらには泥。あちらには端正な顔立ち、こちらには歪んだ造形。
光は、隠しておけば幸せだったはずの「格差」を白日の下に晒し、万物に「名前」という名のレッテルを貼り付けたのだ。
「ああ、なんて素晴らしい」と、光を放った張本人は満足げに言った。
視覚という呪いを与えられた者たちは、それ以来、見えるものすべてに序列をつけ始めた。
自分より光り輝くものを見ては嫉妬し、自分より暗い影の中にいる者を見つけては安堵する。
かつての静かな「無」は、今や「視線」という名の戦場に成り果てた。
おまけに、光は「影」という厄介な双子を連れてきた。
光が強ければ強いほど、その背後に潜む闇は深く、濃くなる。
人々は眩しさに目を細めながら、同時に自分の足元に伸びるどす黒い孤独に怯えることになった。
さらに滑稽なのは、誰もが「真理」を見ようと躍起になっていることだ。
光があるから見えると信じ込んでいるが、実際には網膜に映る都合のいい反射を見ているに過ぎない。
本質はいつだって、光が届かない場所か、あるいは眩しすぎて何も見えない中心部にあるというのに。
「光あれ」
それは救済の合図などではない。
退屈に耐えかねた創造主が、自らの暇つぶしのために始めた、終わりのない「比較」という名の悪趣味なゲームの開始宣言だったのだ。