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ハッと目が覚めるとそこは自宅。いつの間にか自宅に帰ったのかと考えるが、ひとつ思い出す。思い出したそれを確かめるべくすぐにテレビをつけて時間を確認する。映し出された映像には12月25日と記されており、魔理の話した通り時間が繰り返されていた。つまり、今日も《昨日》と同じ時を過ごす。それが意味するのは、みんな決まった行動を取るということだ。例えば《昨日》私が話しかけた人物に、今日もう一度話しかけた時、《昨日》と一語一句変わらぬ言葉が返ってくるはず。それだけじゃなく行動、つまりは何時にどこに移動するなども《昨日》と変わらないということだ。これを確かめられれば犯人の特定に大きな一歩を踏み出すことが出来る。とは言ってもまずは、魔理との情報交換が先だろう。
起床して体感一時間程度過ぎた頃、《昨日》と同じように縁側の扉を開けて大慌てで入ってくる。
「なぁ!!昨日のアレ知ってるか!?」
「慌ただしいわね…相変わらず」
「んな事より!昨日お前も気を失ったよな?」
「まぁ、確かに突然睡魔には襲われたわよ」
「私も同じで睡魔に襲われてそれでそれで!」
やけに興奮気味の魔理を1度落ち着けさせ、昨日の情報をお互い交換する。
「落ち着いて主要な情報を寄越しなさいよ」
「わ、悪ぃ……。ついあの現象がおもろくてな」
「それで?得れた情報は?」
「私が得た情報は、まず時械神のせいではないということ。次に、この時を繰り返してる犯人は突発的にその力を得た。そういうことらしいわ」
「どういうこと?」
「時械神曰く、新たな力を得る人物は何かしらの想いが強く、それが目に見える形として現れるとか」
「じゃあこの現象はその、想いの力と言いたいのね?」
「時械神が言うから間違いねぇだろ」
「まぁ、確かにね…」
「かく言うお前はどうなんだよ?」
「ぶっちゃけゼロに近いわ。誰もこの時間を繰り返してる事に気づいてない。」
「んだよ、使えねぇなぁ」
「けど、私なりに少し違和感を感じたことはあったわ」
「それは?」
「氷の妖精の行動ね」
「いつもうるせぇあのハエか?」
「そのハエよ。」
「普段は彼女色んな人と行動をともしてるのに、《昨日》は一人で行動してた。」
「そりゃ違和感あるな」
「その時は迷子だとか言ってたけど、何となく素振りが焦ってるというか、早く話を切り上げようとしてるのが見て取れた感じね。」
「つーことは、確信こそないが怪しいのは氷の妖精か」
「あくまで私の勘だからあてにしない事ね」
「巫女様の勘はよく当たるので信頼度は高いぞ?」
「まぁ、そう答えるわよね…」
《昨日》の情報を交換し今日は夕方くらいから行動することにした。もしかするとなにか新たな発見があるかもしれないからだ。
身支度を整え、魔理と共に夕空を駆け抜ける。夜空の時と違い、当たる風は少し暖かいが空からの景色は夜空とはまた違った良さが際立っていた。
紅の空に漆黒の翼を羽ばたかせ飛ぶカラスが、地上から見る人々の瞳にはまるで一枚の絵画のように映るだろう。空にいる私でさえそう感じてしまうのだから……。
街につき、昨日と同じように手分けして作業をする。私は自分の勘を信じてあの氷の妖精をみつけてみる。もしかすると彼女も私たちと同じように時を繰り返してる事に気づいてる人物かもしれないから。
「あの娘は確か迷子になったとか言ってたわね。」
「でもそれは夜の時の話。となると、夕方くらいはまだお友達と共に行動してる可能性がある。」
「あの辺のまとまりは個性の塊だから簡単に見つけられると思うが……」
しかし、探してみると意外と見つからないものだった。前回と同じく空からみつけようとしてみるも、それらしい人物は見当たらない。
「外じゃなくてどこか店の中に入ってるか?」
「アイツらが入れる店屋は限られるから絞り込むのはくっそ簡単ね。」
「まずは、まち丸に行くかな」
《茶屋まち丸》は、小野町茶々が店主の和菓子屋で、実は妖精たちのたまり場にもなっていたりする。1度茶々に「妖精たちうるさくないの?」と聞いたところ、「賑やかな方がお客さんも入りやすいと思うから迷惑じゃないですし、むしろ助かってます」との事。うるさい妖精すらも自分のお店繁盛のために有効活用してるところを見ると、見た目にそぐわずなかなかたくましい経営をしているようだ。
さて、そんなことを思い出していると目的地であるまち丸に着いた。流石に正面口から入るにしても上空から降りたって入るのは目立ちすぎる。なので裏口の方から降りたって入ることにする。
「失礼するわよ〜」
裏口から堂々と入っていくも、返事はない。
「あれ?茶々いないのかな?」
誰もいないかもしれないと感じ、少し警戒しながら中にとはいる。中は特に荒らされた形跡もないし、これといって怪しいところは見当たらない。強いて言うなら作業が途中であることくらいだろう。茶々性格的に最低限やることをやってから別のことを始めるため、途中放棄は基本ありえないのだ。特別な例としてお客さんの対応をしてるか材料の受け取りはたまた、純粋に御手洗にいってるのかもしれない。しかし、こうも見当たらないとやはり不安にはなるものだ。
「あれ?霊無さん?」
「!?」
突然後ろから話しかけられ素早く振り返り身構える
「ど、どうしたんですか?私ですよ茶々です」
「な、なんだ茶々ね…。あなた一体どこに行ってたのよ。」
「いつもの妖精さん達に振り回されてたんですよ。なんでも、氷の妖精である《チルル》さんが見当たらないって騒ぐもんですから。」
(チルルが既に迷子って事か?一体なぜ……)
「普段一緒にいるお仲間さん達も不思議がってたんですから。突然どっかに行ってしまったというもんで」
(突然どこかに行った?何かしらの急用があったということよね?友達をほっといてしまうほどに…)
「とにかくそんなことがあって私も1度店を空けてたんですよ。だから作業も途中で」
「あーなるほどね。ほんっとあいつらに迷惑してるなら私に話してよね。説教くらいはするから」
「大丈夫ですよ。あの子達がイタズラをしたら私もダメだよって注意してますから」
その時見せた笑顔がどことなく不気味で、何となく殺意に近い何かを感じたがそれは心の内に閉まっておくことにした。
「なら、私が心配するまでもない事だったわね」
「ところで霊無さんは何用で?」
「実はその氷の妖精を探してるところ。なんでもいいからあの子に関するヒントとかないかしら?」
「うーんそうですねぇ…。やっぱりあの子達子供みたいに無邪気ですから、子供が好きそうなところによく現れるイメージがありますね。例えば今日みたいなイベントだと、ショーとかやってますし?」
「それじゃあその辺を探して回るかな。」
「お力になれたなら光栄です!次来る時は是非、私の作る鬼三色団子をどうぞ!」
「えぇ。もちろん食べに行くわよ。お金に余裕があるならね」