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ギレスラとペトラの怒りの声は、何気なく『捨てられた』三者を庇う感じの気配が漂い捲っている。
そのお蔭だろうか、やや視線を上げた三者はオドオドとしながら次に答えを返すだろうレイブの様子を窺い始めたのである。
レイブは言う。
「五月蝿(うるさ)い……」
『『は?』』
ギレスラとペトラがキョトンとしながら声を合わせたが、レイブは勝手に話し始めたのである。
「五月蝿(うるさ)いって言ったんだ! あのなぁ、ギレスラ、ペトラぁ、こっちは辛いけどあっちは若(も)しかしたら親切心からだったかも知れない? だとか何とか言ったっけ? 俺が言っているのはそんな仮定に仮定を重ねた世間話じゃないんだよっ! 勘違いだろうが勝手な妄想だろうが何だろうが、今ここに確かに傷付いているラマス達が居て、俺がその辛い気持ちをどうにかしてあげたいって、何とかしてやらなきゃって思っている、って話をしているんだよっ! 遠く離れたシパイ兄ちゃん、おっと、グ、グフン、魔術師シパイの考えや思いなんかどうでも良いだろっ! 今、現在、現実、目の前に居るヤツラの事に、思いに一所懸命に向き合いたいっ! ラマスとカタボラとエバンガには家族が必要、生き別れても、万が一死に分かれたとしても、決して消えることの無い確かな繋がり、んーと、そうだっ! 魂の絆、いいや誰かが存在する限り永遠に続く絆が…… そうだな、言ってみれば『存在の絆』、かな…… そんな物が必要なんじゃないかぁ? どうだ? ギレスラ! ペトラぁ!」
『『………………』』
即答を返さない二者は互いに視線を交わした後、同時に黙考を始めた。
程無くして声を発したのはギレスラの方だ。
『なるほど…… 遠く離れた者の深慮を推し量るよりも目の前の悲しみや辛さ、か…… ふふふ、レイブらしいな』
ペトラもこの声に続く。
『そうね、それに『存在の絆』かぁ、アタシ達に置き換えてみるとこの場の六者の内、最後の一人だけでも生き残ってさえいれば今日結んだ絆は残り続けるって事だよね? なんか素敵じゃない♪』
自らのスリーマンセルの理解溢れる声に勇気付けられた感じでレイブは言う。
「だから絆を作ろうよ! 俺が誰とも駄目、不適合って事だったら誰でも良いや! ギレスラとカタボラぁ、は同性かぁ、んじゃ、ギレスラとペトラ? か、ラマスとカタボラとかでも良いかぁ、結婚すればぁ?」
『『『「は?」』』』
うん、レイブの提案は何の意味も無いよね、スリーマンセル内部の恋愛に過ぎないし、残った一人の疎外感とか孤独感が問題視されるかどうかの話になりそうだし、ラマスたちスリーマンセルとの絆作りとか関係無いもんね。
まあ、レイブらしいっちゃらしいが今日出会ったばかりの存在には突っ込まざる得なかったようである。
あからさまに呆れた表情を隠そうともせずにエバンガが言う。
『あの…… 何やら結構な熱量で主張されていましたけれども…… 闘竜はお互いに雄、後は種族違い、ですものね…… ウチのラマスが乗り気で無いのですから…… レイブ殿のお気持ちは嬉しかったですけれど、今回われわれとの絆、『存在の絆』ですか? 残念ですが諦めざる得ない、そう思いますわ』
エバンガの言う事は至極当然だったがあんまり考えていないレイブは苦虫を噛み潰した顔である。
「むぅ、獣奴(じゅうど)の種族が多岐に亘るからね…… だけど、ギレスラとカタボラがもう少し性嗜好の多様性に理解を持って、自らが新たな世界へ挑戦する位の荒々しい探究心を持っていれば可能性は無くはなかったんだけどね、本当に残念だよ…… ね、エバンガ?」
『は? はあ、まぁ……』
『エエッ! ボクガワルイノォ?』
『我は多数派、所謂(いわゆる)ノーマルなのだぞ、あまり無理を言うなよ、レイブ……』
「そうか、大多数の意見も大事な意見だもんね、うっかりだったよ、あははは」
『『『『あははは』』』
和やかな笑い声が響き、なんか緊迫した場のムードは一瞬で払拭されたのである。