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伝授ということはルティたちに課した試練のようなものをおれにもするのか?
おれに今さら別の覚醒を授けるというのはどうなんだか。
「その考えには疑問を浮かべますよ、アック様」
「えっ?」
「強くなり最強となったからといって、自分だけよければいい……その考えに同意出来ません」
まさか心でも読まれた?
エルフの中にはそういう能力がある者もいると聞くが、そうだとしたら迂闊に考えられなくなりそうなんだが。ネローマさんの隣に立つリリーナさんも油断出来ないし、ルシナさんもそんな感じがある。
要するに、ネーヴェル村と関わりがある者には特別な力が備わっているということなんだろうな。
「おれは別にそんなつもりじゃ……」
「アック様に試練を受けさせたのにはそういう側面もあるのです。お心当たりがあるのでは?」
ルティやシーニャのことを言っていそうだな。彼女たちには何度か危ない目に遭わせたことがある。しかしいずれも救い出せているし、大きな問題にはなっていないはず。
これから戦う敵に関しては危機的状況に陥るかも不明だし、そうならない場合の戦い方もまだはっきりとは決めていない。ということは、恐らく長期的に見てのことを言っている。
「それなりには」
「今回ネーヴェルが手を貸した覚醒についてですが、今後はアック様の方からして頂ければと思っています」
「――! 魔石では無く、彼女たちの覚醒を?」
「そうです」
これはまた何とも突拍子も無いことを言われたものだな。魔石に関しては使った分だけ成長することが分かっているが、彼女たちとなると勝手が違う。おれにそんなスキルは備わっていないし、とはいえ魔石支配でさせるやり方も気に入らない。
「おれには特別な力はありませんよ?」
「ええ、今は確かにそうです。ですが、それを今から伝授致します。アック様にそのご覚悟がありましたらいつでも始めたいと思います」
これがおれへの試練ってやつか。そしてこの村に来させた最大の目的がこれらしい。
現状、ルティとシーニャは眠っている。サンフィアは恐らく戦いの基本を身に着けている最中だろう。ミルシェはこの場にいるが、特に何かをされるわけでも無い。そうなるとおれしか出来ないことが待ち受けている。
強くなる以上に覚醒をも施せるようになるとか、とんでもないことになりそうだな。しかしルティが敵の手に落ちることが無くなるのであれば受ける必要は十分にある。
「おれはいつでも構いませんよ」
「……頼もしいお言葉です。それと力を目覚めさせた時には、アック様が持つ”錆びた剣”も覚醒を果たすことになるでしょう」
「錆びた剣? それって、ガチャで出した――」
「使い道に困っているあの剣のことです。お忘れですか?」
そういえばすっかり忘れていた。捨ててはいなかったが、どこにやっただろうか。そもそも両手剣であるフィーサがいるし、片手剣、しかも錆びている剣をどう使えばいいのかずっと分からない状態で過ごしてきた。
まさかそれが覚醒によって使えるようになるとか。
「そ、そんなはずはありませんよ。それで、覚醒する為の伝授というのは?」
「ではこれをどうぞ!」
「はっ? えーと、これって……」
「特製ドリンクです。ルティシアからいつも飲まされていますよね? それと似たものです」
ネローマさんから手渡されたのはいつもルティに渡されていた大きめの瓶そのものだった。
そういえばここは薬師の村だったか?
ルティにとっては第二の故郷のような村だ。ルティが作る特製ドリンクは全体的に甘い味が多かったが、どんな味なのか。
「じゃ、じゃあ、遠慮なく……」
「わたしたちはアック様のご無事を祈っております。お戻りになるまで洞穴で待つとしましょう」
いつもはルティが無理やり流し込んでくるが、今回は自ら飲まなければならない。
どうせ甘いものだろう、そう思って一気飲みをしたが――
「無事を? どういう意味で――うっ!?」
これは何だ――?
劇毒いや、毒よりも禍々しい感じがする。とてもじゃないが一気飲みをして後悔するほど恐ろしく不味く、激痛が走る液体としか感じられない。魔法や近接物理ではダメージを受けないが、これは体内からくる痛み。
「がぁっ――!!! うぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ……じょ、冗談だろ……? く、くぅぅぅぅ――」