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「あそこで立ってる子、家が燃えちゃったらしいわよ。」
「それに…家族も全員巻き込まれたんだってねぇ…可哀想に…」
「その隣の車椅子に座ってる子も母親を亡くしたそうよ。会社で事故が起きたらしいの。今、あの子達は一緒に暮らしてるらしいわ。」
「母親を亡くした子の父親が引き受けたそうよ。」
「まだ若いのに…なんて残酷なのかしら…」
お母さんが死んでから6年程経った。
あの日以来、お父さんは毎朝仏壇で何か独り言をするようになった。
お母さんとお話しているかのように笑顔で楽しく。
私の友達のひろきくんも私と同じ運命を走っていた。
家庭が崩壊しても僕たちは強い糸で結ばれている。だから離れることはないんだよ。そう、手話で伝えてくれた。
ひろきくんは先天性難聴で耳が聞こえない障害を患っていて、私たちは手話でいつも話し合っている。
最初は手話なんて全く分からなかったけど、手話を勉強してみて、ひろきくんと言葉で話せなくても、表情と手の動きで会話が出来ることが嬉しかった。
あの満面ニッコリとした笑顔は忘れられない。
そして、私にも障害を患っている。
下半身麻痺の感覚障害。
足は頑張っても動かすことが出来ない状態で車椅子で移動することしかできない。
不自由しかない僕らでも生きることは出来た。
それはこの世界のいい所なのか悪い所なのか。
誰もこんな障害なんて望んでない。こんな事になるなら死んだ方がマシ。そう思っている人も多いのではないだろうか。
植物状態の人が死ねないように。
私たちは日に当たりながら散歩をしていた。
ひろきくんが私の車椅子を押して、街中を歩いていた。
そこらの住民達がジロジロとこちらを見てくるけどそんなの関係ない。
「あぁ、今日も何も無い1日だった。」
そう言えるような1日にしたくなかったから。
自ら行動をして何かが起きるように、外へ出ている。
こんな障害という生涯までついてくる重りを背負ってつまらない人生にしたくない。そう私たちは意気投合して今に至っている。
やりたいことは沢山あった。けど、障害のせいで出来ないことも沢山あった。
私は海にもいけない、山にも行けない。そもそも体を動かすことができない。
体はいつもウズウズと動き多そうにしているのに。
ひろきくんは音を聞けない。本ぐらいしか楽しみはないと思う。
やりたいことすらやれない、じゃぁ、一体何のために生きているんだろう。
ただ考えることしか出来ない人間として生きていくの?
考えに考えた。そもそも誰もが生きる意味を見つけているのか。
何のためにみんなは生きているの?
私には分からない。
朝、起きる時毎回思うんだ。
「あ。足が動く。」って。
1度ぐらいなってもいいんじゃない…?
その1度すら許されないんだよ..?
どうして…?
こんな沢山の疑問を全部ひろきくんにぶちまけた。
ひろきくんは「未来に希望を託そう。」そう伝えて、一緒に涙を流した。
「いや、未来に任せるんじゃなく、僕たちで変えるんだ!」
そう必死にひろきくんは訴えた。
「どうやって…?」
「僕たちで障害を乗り越えよう。目が見えないなら見えるように…耳が聞こえないなら聞こえるように…」
「ひろきくんはすごいね。やっぱり私とは違うよ。」
「いいや、違うよ。これから一緒になるんだよ。一緒に…歩もう。僕たちの壁を壊すために!」
もう何年経ったかな。
懐かしいよね。あの夢。いや、願い。私たち、やり遂げたんだね。
手がボロボロになりながらも完成させた麻痺を治す機械を頭につけてみた。
「どう?」
「ひろきくんが初めて喋った時を思い出すなぁ。」
「あはは、もう何年前のこと?」
「それぐらい、今…感動してるの….」
「足が…動く…地を感じる..!!」
「本当に…やったな…」
あぁ、こんな人生もあったのかな….
第五感覚 【触】