見覚えのある顔。体。その周りには大量の人。
ストレッチャーで運ばれていく彼に意識はないようだった。
なぜ運ばれているのかはわからないけど、運ばれるくらい、危険な状態なことはわかる。
本当は今すぐにでも駆けつけたかった。
でも、歩くのもやっとだった僕に、そんなことはできなかった。
また、目の前で家族を失ってしまうのではないか。
そんな恐怖が僕を襲った。嫌だ。そんなの嫌だ。
もう二度と、失いたくない。
「大丈夫ですか」
と看護師さんに声をかけられ、ふと我に帰る。
気がつくと、僕の目からは勝手に涙が出ていた。涙を拭い、
「さっき運ばれてたの、、たぶん、兄なんです」
と震えた声で伝えると、
「今確認してきますね」
と僕を安心させるように言い、確認に行ってくれた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!