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第31話、読み終えました。月呼がバレンタインに備えて自分のお金で材料を買うところ、すごくいいなと思いました。「自分の金で買いたい」という価値観が、彼女の真面目さや侑加への本気度をちゃんと見せていて。侑加が「月呼さんが優勝したそうだからがんばった」とさらっと言うのも、彼らしい不器用な優しさでほっこりしました。ダーツの優勝シーンも気持ちよくて、読んでて嬉しくなりました。明日の展開が待ち遠しいです。
昼食の後、月呼はくるると落ち合う。ふたりはコスチュームルームで今日の着替えを探した。
「明日はバレンタインデーだね」
くるるに言われて、月呼は二月の行事を思い出す。この島では日付の感覚を失っていた。
「仙敷さんに手作りのチョコレートをあげたら? 今日のうちに必要な材料を局員に頼んでおいた方がいいよ」
くるるがアドバイスする。月呼はまだ一度も利用していないが、少額で手に入りやすいものであれば、この島にないものを局員が無償で調達してくれるそうだ。
「うん。そうしてみる。くるるちゃんは浪本さんにチョコレートをあげるの?」
「ゴリラに餌づけしてもねえ。あたしはなにもしない」
毎年、二月十四日は家族にチョコレートを渡している。月呼がバレンタインデーに意中の相手にチョコレートを贈ったとなると、本間勇致くらいだ。彼に告白はせず、本命なのに義理とよそおって。
今年は家族とは会わず、好きな人とバレンタインデーを過ごす。月呼にとって、侑加は間違いなく本命チョコレートの相手だ。明日は特別ですてきな日にしたい、と気持ちが高まる。
午後三時半過ぎ。今日のミニゲームはダーツだった。五チームから三チームまで減ったのと、侑加の腕がよいこともあって、月呼と侑加は優勝する(月呼も発掘調査できたえた集中力で奮闘した)。
「やったー!」
月呼は初めての優勝に飛びはねた。
「侑加くんはダーツの経験者なの? あっ、そのへんは聞かない方がいいかな」
「いや、大丈夫。支障ない。初めてだけれど、月呼さんが優勝したそうだからがんばった」
参加者たちは財布を没収されている。月呼は今日のミニゲームでなんとしても優勝して、賞金を獲得したかった。そうすることができたのは侑加のおかげなのだが。
月呼は一万円を手にすると、金銭を得たらやろうと考えていたことのために動く。
「ヌーナさんにお願いが」
一階にいた局員に声をかける。バレンタインデーに関係した要求なこともあり、同性の方が頼みやすかった。ヌーナはここの数少ない女性局員だ。
「メモに書いてあるものを買ってきてほしいのです。このお金から」
月呼は一枚の紙切れと札を入れたポーチを渡す。ヌーナはすぐさまメモに目を通した。紙に書いたのは板チョコレートやベーキングパウダー、後は包装に必要なものなど。砂糖やココアパウダーなどはキッチンにあるので、頼まなかった。
「これくらいなら、無償で買ってきますよ」
「いえ、自分のお金で買いたいんです」
今日のミニゲームで優勝できなかったのならやむを得ずそうするところだが、月呼はだれかにプレゼントするなら自分の金から出すべきと考えている。
「わかりました。ポーチをお借りしますね。ポーチとお釣りは、後で買ってきたものと一緒にお返しします」
「ありがとうございます」
月呼は頭をさげる。後は侑加に気づかれずに調理し、明日に向けて準備しておくだけだ。もっとも、物事にうとい侑加はバレンタインデーという行事をまったく気にしていないだろう。