私
には何もなかった。
家族もなく、友もいない。
たったひとりぼっちだった。
誰もいない。
独りきり。
私を見てくれる人はいない。
私はいつも独り。
私を見て欲しい。
私のことだけを考えて。
私のことを考えてよ! だから、私は自分の力で生きることにした。
自分だけの世界で生きることにした。
もう誰にも頼らない。
私は自分で道を切り開く。
私が選んだ生き方。
それは、自分の力を信じるということ。
私は誰よりも強い。
だから、きっと大丈夫。
私だって、強くなれるもの。
そして、必ず生きてみせるわ。
この世界のどこかにいるはずの……
あの子に会うために――。
【第一章】
「お嬢様~?」
「……んぅ……」
「起きてくださいまし~!」
「……ふぁあああ……朝からうるさいですね……
もう少し寝かせなさい……」
「いけませーん!!今日こそは起きてもらいます!!」
「うぐっ!?」
(腹の上に乗っかってきただとぉおお!!!)
「ほらほら早く着替えないと遅刻してしまいますよ!」
「うぅ……ん……」
「おはようございます、先生。お目覚めですか?」
目を覚ました僕が最初に見たものは、天使だった。
それも金髪碧眼の超絶美少女。
背中から生えている真っ白い翼は神々しさすら感じるほどで、思わず拝んでしまいそうになる。
「ここは天国でしょうか?」
僕は死んだのかもしれない。
だとしたら目の前にいる彼女はきっと女神様に違いない。
「何を言ってるんですか先生」
呆れたように苦笑して、天使さんは言う。
「現実ですよ。私はちゃんと生きてますよ」
「あぁ~よかった! てっきりもう死んじゃったかと思いました!」
僕は安堵のため息をつくと同時にベッドの上で跳ね上がった。
本当によかった! こんな可愛い子と会えなくなるなんて耐えられないもんね!
「ふぇ!? ちょっちょっと待ってください! えっと……う~ん…………」
目を閉じて考え込む女の子。
「ごめんなさい。やっぱりわかりません」
申し訳なさそうな表情を浮かべながら彼女は言う。
「それはそうだよね」
僕は苦笑しながら答える。
「あの……もしかしたらヒントになるかもしれないから、もう一度質問してもいいですか?」
「もちろんだよ!」
僕は笑顔で快諾する。
「では……コホンッ!えっとですね……まずはこの国の歴史から……」
彼女は歴史の授業をする先生のように説明を始める。
「この国は『ラクリス』と言いまして、 魔族と呼ばれる者たちが住む土地となっています。
その中でも、ここは魔王様のお膝元である『王都』になりますね。
この世界のどこかに存在するとされる魔界。
その魔界を統治するお方が、我々のご主人様なのです!」
魔界とか魔王という単語が出てきた時点で、もう既に話についていけないのだが、とりあえず今は黙って聞いておくことにしよう。
「ちなみに、オレの名前は『タロー』っていうんだぜ?」
「えっ!?そっちの名前の方が長いんですね! わたしはてっきり、『タロ吉さん』とかそういう感じだとばかり……」
「へぇ~、そうなんだぁ~」
「ああっ!!しまった!!」
(うわああああ!!!)
「さっきからずっと気になってたんだけどよぉ、おめーら2人して一体なんの話をしてんだよ。
なんかスッゲー盛り上がってんな」
「はい!それはもう!」
「だってさ、こんなにかわいい子が目の前にいるんだもん♪ そりゃテンション上がるでしょ!」
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