テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「と、いうわけなんだけど若井はどう思う?」
元貴は決めかねてる様子で俺に企画書を寄越してみせた。が
「うーん、いいと思うけど···別に編集とか出来るよね?ドッキリというよりはモニタリングするみたいな感じだし?」
インタビューじゃなく、顔見知りのスタッフから他のメンバーをどう思っているか聞いてそれをモニタリングするという企画案が出ていて、ターゲットになるのは そう、ここにいない涼ちゃんというわけだ。
ひとつは元貴に対してどう思っているか。いいところやここはちょっと、みたいな愚痴までもをリサーチする。
もうひとつは俺。いいところと実はスタッフが本気で俺のことを好きだと恋愛相談した時にどういう反応をするのか、というもの。
「これって涼ちゃんの反応が想像出来ないんだよね。いきなり若井と付き合ってるとか言い出したらどうする?」
「さすがにそれはないんじゃ···もしそう言っても、そういうことで告白を回避させた、みたいなオチにならない?俺は頑張って、とか励ましそうだと思ったけど」
「じゃあ編集はしてもらうかもってことで受けてみるかぁ···聞いてみたい気はするよね、涼ちゃんがどう思ってるか」
さすがの涼ちゃんもスタッフとはいえ、俺とのことを迂闊に話したりはしないだろう。それにもし相手を励ましたりしても俺とのことがバレないように、ということだと思うし···こうして涼ちゃんへのドッキリ?がスタートしたのである。
まずは3人で打ち合わせと称して集められて、嘘の企画をプロデューサーから説明された。そして元貴が別件で呼び出され、休憩中ということで女性スタッフ2人がお茶を持って現れ、俺は良かったらとテーブルを挟んで向かい合わせに座るように促し、少し話したところで俺も別のスタッフに呼ばれて席を外したところで隠しカメラで元貴と俺は涼ちゃんをモニタリングすることにした。
「大森さんって歌もダンスもすごいですよね。藤澤さんから見て大森さんのこんなとこが凄い、みたいなのってありますか?」
「ありがとうございます。本当にね、元貴はすごいんですよ、歌はもちろん楽器も色々弾けるし、体幹もすごいし!絵も上手くって···出来ないことはないんじゃないかなって思わせるけど気取ったり偉そうにしないところとか···全部凄いなって思います 」
あまりにすらすらと良いところをいい続ける涼ちゃんに元貴は隣で照れて顔を隠している。
逆にスタッフさんは勢いに少し圧倒されながらも次の質問に取り掛かっていく。
「す、凄いですね。もうそんなに凄いなら直してほしいところとか愚痴なんかはない感じですか?」
「うーん···強いて言うなら若井との距離感が近すぎるところかなぁ、ほんとにくっつくのとか多いんだけど若井にはやめてほしいかな」
スタッフさんは涼ちゃんが寂しがっているんだと受け取り、藤澤さんって可愛いですね、なんて笑って盛り上がっている。
「あー、ね、これはギリセーフ?」
「···かなぁ、ってか恥ずかしいんだけど···」
今度は俺が照れる番で、こんな風に思ってくれてたんだ、と可愛いやきもちに顔が熱くなるのを感じた。
「これ、若井のこと聞かれたらどうなるんだろうねぇ」
既に視聴者として楽しみだしている元貴に対して俺はドキドキ心配する気持ちの方が増えてきて落ち着かないまま続きを見守った。
「じゃあ若井さんに対してはどんなところが凄いなぁって普段感じてたりしますか?」
「若井は···いつも笑顔でいてくれて面白くってけどちゃんと周りを見てて、コミュニケーション能力が高いなぁって思いますね···けどギターとか演奏に関してはストイックだし努力家だしそういうところは尊敬してます」
こんな風に大真面目に俺のことを褒めてくれて、なんだか心がじぃんとして、思わず泣きそうになる。
「なに、涼ちゃんめちゃくちゃ真面目にいいこと言うじゃん···」
隣でも元貴も少し驚きつつ自分のことなように喜んでくれている。
もうここで出ていってありがとうって伝えてネタバレでいいんじゃないか、と思っていると。
「それに···若井が僕のこと呼ぶ時の顔?声?が可愛いんですよ、りょうちゃんーって。そういうところ好きで、あとテレビとかでは無いけどたまに見る泣き顔もね、うわぁ、かわいいなぁってなりますね!」
「藤澤さんは若井さんが大好きなんですね···」
「そうです、大好き!」
涼ちゃんはスタッフさんに一体何を熱く語ってるんだ?!案の定、聞いたほうが少し戸惑っている。
そして元貴は隣で爆笑してるし。
先程質問していたスタッフが席を立つともう1人残っていたスタッフさんが少し言いづらそうな雰囲気で涼ちゃんに例の話を切り出した。
「本当に若井さんて可愛いところもあるしカッコいいですよね。ギターを弾いてる姿も···ここだけの話なんですが私、若井さんのことが好きで。たくさん話しかけて気にして貰えるように頑張りたいなって···どう思いますか?」
涼ちゃんはなんて答えるんだろう。
ドキドキしながら画面越しに涼ちゃんを見守る。
「本当に若井ってカッコいいし、ギター弾いてる時は更にね···わかります」
それまでにこにこと話をしていた涼ちゃんの表情がフッ、と真面目になる。
「けど、若井は僕のなので。 やめておいた方が良いんじゃないかなって思います、若井は僕のことが一番好きなんで」
静かに、けどはっきりそう言い放つと席を立ち、2人とも遅いなぁ、探しに行こうっと、失礼します!と頭を下げている。
こちらにいたスタッフさんが慌ててネタバレしてください!と指示を出してくれる。
ドアを開けて出てきた涼ちゃんを捕まえてドッキリでした、と伝えるて
えぇ!?どういうこと?と驚いたところで撮影は終わった。
夜、涼ちゃんの家にお邪魔した俺はソファに座って今日のことを何度も思い返していた。
「若井?どしたの、やけに静か」
おーい、と言いながら隣に座り涼ちゃんは俺の頭を撫でてくれる。
「今日のドッキリ、あれほんとに気づいてなかったの?」
「気づかなかったよ···僕、結構色々言っちゃったんだけど大丈夫かなぁ」
確かに言っていた、けど俺が一番気になったのは最後のところ。
「なんであんな事言ったの?最後···」
「やっぱりダメだったよね?ごめん···つい若井のこと取られたくないし、いっぱい話したり仲良くなるのも嫌って思っちゃったら、あんな風になっちゃった」
少し顔を赤くする涼ちゃんはやっちゃったかなって少し困ってそうで。
そんな涼ちゃんを俺はぎゅっと抱きしめた。
「···嬉しかった」
「えっ?」
「嬉しかった、涼ちゃんが僕のって言ってくれて。愛されてるって、感じた」
涼ちゃんが俺を抱きしめる手に力が籠もって、お互に鼓動がいつもより早いのを感じる。
「愛してるに決まってるでしょ···。ねぇ、若井が一番好きなのは僕?」
涼ちゃんが体を離して俺を見つめる、
その真剣さに更にドキドキとしてしまう。
「そうだよ···」
「ちゃんと言って?」
「···俺が一番大好きな人は、涼ちゃんだよ。一番、愛してる」
涼ちゃんは満足そうにありがと、と言って俺に優しくキスしてくれる。
「今日のやつ、いつ放送かなぁ···楽しみ」
ワクワクとしている涼ちゃんには悪いけど、最後のカッコいい涼ちゃんの部分だけは、俺だけのものにしておきたいと思った。
コメント
2件