テラーノベル
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土方が山崎にノロケ話を終えた日の夕方。
副長室のドアの前で、土方は苛立ちと期待がないまぜになった複雑な表情で立ち尽くしていた。
「……ちっ、なんで俺がガキにてめぇの恋路を許可してもらわなきゃならねぇんだ」
先ほど山崎から聞いた情報によると、
「退子さんとの連絡は全て総悟を通す必要がある」
とのことだった。
男としてのプライドはズタズタだが、あの物静かな美女と話せる唯一のパイプが、よりにもよってあのサド野郎なのだ。
土方は意を決して、総悟の隊長室の襖を乱暴に開けた。
中では、総悟が隊士たちに囲まれながら、楽しそうにジェンガをしていた。
「おい総悟、テメェに頼みがある」
土方の鬼気迫る表情に、隊士たちは慌り、部屋から出て行ってしまった。
総悟はジェンガのタワーから一本抜きながら、ニヤリと笑った。
「おや、土方さんじゃねーですか。何か御用でィ? いつもより顔がデレついてまさァ」
「うるせぇ! ……その、退子さんのことで、テメェに頼みがある」
土方は最大限に声を低くし、しぶしぶといった様子で頼み込んだ。
「明日、俺と退子さんを……その、非番にして、二人きりで会わせてくれねぇか」
総悟はわざとらしく「おやまぁ」と目を見開くと、腕を組んで考え込むフリをした。
「土方さんからデートの申し込みとは、恐れ入りやすねィ。……けど、退子さんは非常にシャイでしてね。それに、土方さんみたいなマヨラーの荒くれ者が相手じゃ、心配でやす」
「茶化すな! 一日だけでいい! 明日は絶対に、マヨネーズを一口も食わねぇと誓う! だから……頼む」
土方が頭を下げる寸前まで追い詰められている様子を見て、総悟は満足そうに微笑んだ。これ以上の土方の無様な姿は、明日の本番のために取っておくべきだろう。
「……ま、退子さん本人に確認したら、土方さんになら少しだけ会ってもいいって言ってやした。特別に許可してやりまさァ」
「ほ、本当か!?」
土方の目が希望に輝く。
総悟はジェンガのタワーを崩しながら、冷たい目で土方を見据えた。
「ただし。退子さんを泣かせたら、今度こそ俺のバズーカで頭を吹き飛ばしやすから、覚悟しなせぇ」
「当たり前だ! 感謝するぜ、総悟!」
土方は満面の笑みで部屋を飛び出していった。
一人残された総悟は、崩れたジェンガのブロックを弄びながら、愉快そうに口角を上げた。
「さぁ、土方さん。山崎退子プロデュース by 沖田総悟。地獄のデートの始まりでさァ……」
そしてすぐに山崎の部屋へと向かい、明日の「台本」を手渡すのであった。
コメント
1件
ああ、もうこの第8話、最高でしたね!土方が山崎にノロケ話をした後の話ってのがもう続きものとして楽しいし、頼み事のために総悟のとこへ行く流れがナチュラルすぎる。土方が明日一日マヨネーズを断つって誓うシーンには笑ったけど、本気度が伝わってじーんと来ました。それでいて最後の総悟の「地獄のデート」って台詞で一気に空気が変わるところがたまらない。この先、どんなドタバタが待ってるのか想像しただけでワクワクします!