テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
キミの事をよく知りたいと思ったのだけれど、それはあんまり叶わない事なのかもしれない。と、僕はその時思った。
新しい出会いは新しい何かを持ってきてくれるし、運んできてくれると信じていたのだけれど、実際はそんなことも無く時間だけが過ぎ去って、また過去に戻される。そうやって何度か行ったままになった気持ちを顧みることも無く、ただ単に歩き続ける度、僕は何度もこう思うのだろう。
「またキミか」と。
何度かあったことがあるのだけれど、決して言葉をかわすことなく過ぎ去っていく時間。それを人は何と呼ぶのだろうか?
楽しいという感覚はなくなって、このままでいいのだろうか。という感覚だけがそこにあり続けるような日々。
「何とかしなければいけない」
決着をつけることが良い事なのは時と場合によるのかもしれないけれど、この時の僕にとってはそれが全てで、この問いに対しての答えを出すためにここまで歩いて来たことは確かです。
「そうだったらいいんだけどね」
わからないからこそ、感覚を頼りにしてきた。向かうべき方向に壁が有ったら登ってきた。何かが目の前に来たとき、僕はそれをじっと見つめるためにとどまった。
「多くの人たちは・・・どうするのだろうか」
気が付けばそこに居た自分が向き合っていたのは、いままでかつて、何度も目の前に現れてはそのまま何も言わずに去っていくそんなキミの姿だった。
「・・・こんな時にもやってくるのか」
「ありもしない過去の苦労話を英雄伝みたいに語らないで」
選択の先、それは自由の先に何があったのか解き明かすヒント。起きたことに目を向けて、自分の手元に手を向けない。それは本当に、果たして意味があるのでしょうかね?
ふっと顔をあげるとキミがそこに待っていた。
沢山の時間の中で、ありふれた選択を続けた僕に対して何も言うことは無いらしい。ただ、意味ありげにそこに立っていて、僕に対して視線を向けるだけ。
「それでいいならいいけどね」
という言葉がそこから聞こえてきそうなほどにキミの口元は物語っていた。
自分が受け止め続けた過去の出来事を語ってしまうのは、その受け止めた過去を受け入れていないから。だからいつまでたっても同じことがやってくる。
全て選んだ自分にある。起きることは。
欲しいのは同意や同情なんかじゃない。起きた出来事を受け入れることが出来なかった自分を受け入れてくれる人をさがしているだけ。
そんなことしても、自分には何もないまま。
人の話に浮ついて、自分のことは隅に置き、良い言葉だけが耳から入り、明け方空の向こう側、何を言われたのかを覚えていない。
ありもしない事柄を、この世の全てと思い込み、その思い込みの先に手足が動いて、結果的によくわからなくなって。
「・・・・さあ、どうしますか?」
手元のカードは限られて、キミのすがたが見えるけど、キミは何も言わなくて、だから僕はとまったままで。
そのリズムが落ち着くとき、静かに鳴った空の下でたった一つの声が響く。
「これ・・・僕の声じゃない?」
どこかで聞いたことがある声。それが空から聞こえてくる。
「さて、どこにいきますか?これから。もうあなたの話を聞きたい人はいないから」
「もう安心してくださいね?」
僕はそっと空に手を伸ばし、その声の有りかを求め続けた。