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黒星
30
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(もっと強烈な、彼の生々しいフェロモンが欲しい……)
そんな破廉恥な独占欲を頭の中でぐるぐると膨らませながら
僕は彼が仕事で留守にしている隙を見計らって
寝室のクローゼットをあちこち漁っていた。
けど、綺麗に洗濯されて畳まれたハンガーの衣服だけでは
僕の飢えたオメガの本能を満たすには到底足りない。
どうしても、彼がさっきまで身に付けていたような
脱ぎたての、生々しい下着の匂いが欲しい──
そんな理性を失った欲求に全身を支配された僕は、気が付くと
洗面所に置かれた彼の洗濯カゴの中へと両手を突っ込み、狂ったように中身を漁り始めていた。
───そんな時だった。
カゴの底まで手を伸ばそうとした僕の視界に
洗濯カゴのすぐ真横の隙間にひっそりと押し込まれるようにして置いてある
一袋の不透明な「黒いビニール袋」の存在が飛び込んできた。
その袋を見た瞬間
僕の脳裏に、この間怜治さんが妙に真剣な顔をして告げてきた言葉が鮮明に蘇る。
『さっちゃん。この袋の中身は処分するだけの手垢のついた服だからね。汚いから、絶対に中を漁っちゃダメだよ?』
そう言っていたゴミ袋だ。
大好きな怜治さんとの約束だし、大人しく守らなきゃいけない。
頭ではそうハッキリと理解しているはずなのに
ヒートの熱でドロドロに溶けた僕の好奇心と
アルファのフェロモンへの渇望は、どうしても抑えがきかなかった。
(……ほんの少し。ちょっと中身を覗き見るくらいならバレないし、いいよね…?)
自分に対して都合のいい言い訳を頭の中で並べ立て
僕の指先は吸い寄せられるようにして、その黒い袋の結び目へと伸びてしまった。
カサリ、と不穏な音を立てて袋の口を開け、中に手を滑り込ませる。
すると、指先に触れたのは
驚くほど肉厚で、なおかつ異様なほどに「見覚えのある」ザラついた布地だった。
引っ張り出してみると、それは大きめのメンズ用のフード付きパーカーだった。
それを両手で広げ、じっと見つめれば見つめるほど、僕の脳裏には
人生で最も絶望的だったあの日の光景が、鮮烈にフラッシュバックする。
「え…っ、こ、これって……いや、そんなわけ、ない。違う、よね……?」
一瞬、あのとき僕の手首を掴んで強引に連行し
暗い倉庫の中に閉じ込めたあの「フードの男」が着用していた衣服に
あまりにも瓜二つだと思ってしまったのだ。
しかし、そんなものが怜治さんの部屋の洗濯カゴの横にあるわけがない。
(そうだよ、よく嗅いだら、いつもの怜治さんの清潔なシトラスの匂いとは違う、なんか男臭い別の匂いも混ざってるし……!きっとお仕事で使った汚れ物か何かに決まってる!)
心臓の嫌な動悸を振り払うようにして自分に言い聞かせ
もう一度そのフードを袋の中に突っ込もうとした、その瞬間。
乱れた袋の底の奥に
ゴトリと重たい感触の「黒いメンズ物の革製ブーツ」が転がっているのが目に入った。
コメント
1件
ふわ〜第31話、めっちゃどきどきしながら読んじゃったよ…!!😭💦 ヒートで本能に抗えなくなってる主人公の焦燥感と、怜治さんの「絶対に漁っちゃダメ」って言葉が重なって不穏すぎる…!黒い袋の中から出てきたパーカー、まさかあのフードの男のやつ…?しかも革ブーツまで出てきて、え、ちょっと待って怜治さん何か隠してるの…!?!? 続きが気になりすぎて今夜眠れそうにないよ〜〜〜🥺💕 猫塚ルイさんの伏線の張り方が巧みすぎて震えた!!