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7話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
今回もとても長いです。
ゆっくり読んでください🙇♀️
◉キヨ視点◉
「どこだ!!どこにいるんだよ、レトさん!」
キヨは森の中を、ただひたすらに走り回っていた。
枝をかき分け、木を駆け上がり、地面へ飛び降りる。
木の上。
草の陰。
岩の裏。
思いつく限り、すべてを探した。
それでも——
いない。
どこにも。
(なんでだよ……)
息が荒くなる。
胸の奥が、ざわざわと騒ぐ。
動物たちの気配もない。
いつもなら聞こえるはずの、
足音も、鳴き声も、羽ばたきも——
なにもない。
異様なほどの静寂。
まるで森そのものが、息を潜めているようだった。
(……嫌な感じがする)
その時——
「こっちよ」
ふいに、声が響いた。
あの時と同じ声。
優しくて、温かい声——
「……!?」
キヨは顔を上げる。
姿は見えない。
それでもその声は不安で押し潰されそうだったキヨの心を優しく包み込むようだった。
「……誰、だ……?」
思わず呟く。
けれど、返事はない。
ただ、風がそっと背中を押した。
「こっちよ」
もう一度。
今度は、少しだけ遠くから 導くように 誘うように声が届く。
キヨは迷わなかった。
「……待ってろ、レトさん」
その声に引き寄せられるように——
キヨは走り出した。
声に導かれるまま走り続け——
気づけば、森の端まで来ていた。
目の前には高い崖がそびえ立つ森の1番最奥。
足が、ふと止まる。
「……っ」
鼻腔をかすめた、かすかな匂い。
キヨの表情が、一瞬で変わる。
「この匂い……」
猟師として積み重ねてきた感覚が、即座に答えを弾き出す。
間違えるはずがない。
これは——
血の匂い。
濃くて、熱を帯びる “生きている”命の匂い。
「……っ、レトさん……?」
胸がドクンと大きく跳ねる。
嫌な予感が、確信に変わっていく。
足が自然と、その匂いを辿る。
一歩。
また一歩。
進むごとに、匂いは濃くなっていく。
喉がひりついて 呼吸がだんだん浅くなる。
視界の先一一
月明かりに照らされたその場所に——
レトルトは倒れていた。
「……レト、さん……?」
震える声。
ゆっくりと、近づく。
そして、目の前にした瞬間——
息が、止まった。
体のあちこちが、無残に切り裂かれている。
血に濡れた体。
地面に広がる赤。
横腹には——
ぽっかりと、穴が開いていた。
「……は……?」
現実を拒絶するように声にならない息が漏れる。
けれど 猟師であるキヨには分かってしまう。
嫌でも分かる。
この状態がどういうものか。
どれだけ危険な状態か。
「……っ、うそだろ……」
その場に膝から崩れ落ちる。
震える手で、そっとレトルトの体に触れた。
まだ——
かすかに温かい。
「……生きてる……」
けれど、それは 今にも消えてしまいそうな
か細い灯火。
一目で分かった。
命が—— 消えかけている。
「……レトさん、起きろよ……」
声が、震える。
「なぁ……目、開けろって……」
いつものように軽く言おうとしても うまく笑えない。
揺らす手が震える。
「なぁ….起きろよ…」
視界が滲む。
涙が、止まらない。
「レトさん!!!!」
張り裂けるような叫びが、静かな森に響いた。
「……っ、どうすればいいんだよ……」
頭が回らない。
いつもなら、もっと冷静に動けるはずなのに。
考えなきゃいけないのに。
何も、浮かばない。
怖い。
このまま、失うかもしれない。
その事実だけが、頭の中を支配する。
「……やだ……」
「やだよ……レトさん……」
ぐっと、力を込めて抱きしめる。
「死ぬなよ….お願いだから。目開けてくれよ…レト、さん….」
肩を震わせながら、キヨはその場に崩れ落ちた。
レトルトを抱きしめたまま
ただ、泣くことしかできなかった一一
その時だった。
バサッ——
重たい羽音が、キヨのすぐ後ろで鳴り響いた。
反射的にキヨは後ろを振り向く。
そこにいたのは——
月の光を受けて輝く、大きな羽を持つ男。
青く光る翼が月の光に透けて男の輪郭を怪しく暈していた。
「……誰……っ」
涙で滲む視界のまま、問いかけようとした瞬間——
「質問は後!!」
強く、遮られた。
その声には迷いが一切なかった。
「先にレトさんを助けないと!! 君、走れるよね?」
真っ直ぐにキヨを見据えて、男は言った。
「ついて来て!」
次の瞬間。
男は迷いなくレトルトの体を抱き上げた。
その動きは驚くほど力強く、迅速だった。
バサッ——!!
大きく羽ばたく。
風圧が地面を叩き、木々が揺れる。
そして——
一気に、空へ。
キヨは立ち上がる。
足の震えを無理やり押さえ込んで、地を蹴った。
全速力で、 ただ前だけを見て 空を飛ぶその背中を、必死に追いかける。
「……お願い……死なないで……」
その一心で キヨは夜の森を駆け抜けた。
山の頂上付近。
男は大きく羽ばたきながら、ゆっくりと高度を下げていく。
やがて——
足が地に触れた。
そこは小さな集落だった。
木でできた家がいくつも並び、
静かに灯る明かりが、夜の中で揺れている。
人の気配。
いや——
“鳥人たち”の気配。
キヨが遅れて駆け込んできた。
「はぁっ……はぁっ……っ」
息を切らしなが男に抱き抱えられている血まみれのレトルトから目を逸らさない。
「レトさん……っ」
不安に歪む声。
その瞬間——
「大丈夫だ!絶対助ける!」
その表情は先ほどの焦りとは違いどこか落ち着いていた。
「まだ生きてるから大丈夫だ!」
迷いのない言葉が、キヨの胸に強く響く。
「……っ」
崩れそうになる足をなんとか踏ん張ってキヨは頷いた。
「キヨはここで待ってて」
そう言って 男は レトルトを抱えたまま、小さな小屋の扉を開け中へと消えていった。
キヨは小屋の外で落ち着きなく動いていた。
数歩歩いては止まり、 また歩いては振り返る。
意味もなく、同じ場所をぐるぐると回る。
時間の感覚がおかしくなる様な感覚だった。
数分なのか、何時間なのかも分からない。
ただひたすら、長かった。
そして——
ギィ……
小屋の扉が、ゆっくりと開いた。
「……!!!」
キヨは弾かれたように顔を上げる。
出てきたのは、あの男だった。
けれど さっきまでの険しい顔つきはもうそこにはなく どこか柔らかく優しい表情をしていた。
「……レトさんは……」
掠れた声で、問う。
男は優しく笑って静かに頷いた。
「大丈夫。手当は終わったよ」
その一言で張り詰めていたものが音を立てて崩れ落ちた。
「……よかった」
息が震える。
「……あとは、レトさんの生命力次第だな」
まだ安心はできない。でも生きている。
その事実にキヨはその場に崩れる様に座り込んだ。
とめどなく流れ落ちる涙を止める事が出来なかった。
キヨの嗚咽が少しずつ落ち着いて 荒れていた呼吸もゆっくりと整い始めた頃——
「……ねぇ」
静かに、男が口を開いた。
「君、キヨだよね?」
その言葉にキヨは顔を上げ 涙で濡れたままの目で男を見た。
「……なんで、俺の名前……」
男は少しだけ視線を落とし続ける。
「俺のこと知らないってことは……」
一瞬、間があく。
「君に会う前に、レトさんは魔女に襲われたんだな」
その言葉に キヨの瞳が大きく揺れた。
「どういうこと?」
「……あの傷は、魔女から受けた傷だよ」
静かに告げられる事実に 胸の奥が締め付けられる。
「あんたは…一体。それになんであの時崖の所にいたんだよ」
低く押し殺し、すこし警戒するような声。
男はふっと、柔らかく笑った。
「俺はガッチマン。鳥人だよ。あの時崖にいたのは風が危険を知らせてくれたから」
月明かりの中、背の大きな羽がわずかに揺れる。
「ここは俺たち鳥人が暮らす村。そして、 俺はここの族長だよ」
その言葉を キヨは黙って聞いている。
「レトさんはね——」
ガッチマンの声が、少しだけ優しくなる。
「魔女討伐の仲間になってほしいって、俺に頼みに来たんだ」
「……え」
キヨの指先がぴくりと動く。
「全部話してくれたよ。森のことも、魔女一族討伐の事も。そしてキヨのこともね」
その一言で胸が強く打たれる。
「……俺、の……?」
「うん」
ガッチマンは頷いた。
「キヨのことすごく大事そうに話してたよ。そして、 その報告を君にするために一度森に帰るって言ってさ」
ガッチマンは少しだけ目を伏せた。
「見送ったんだ」
静かな後悔が滲む声。
「……まさか、こんなことになるとはな」
キヨは何も言えなかった。
ただ——
ぎゅっと拳を握る。
震えるほど、強く。
(絶対、許さねぇ)
キヨの中で怒りの炎が燃え始めていた。
「絶対魔女一族を滅ぼそう。俺も一緒に戦うから」
キヨの震える拳をガッチマンは上から強く握った。
そしてガッチマンの視線はキヨからレトルトの眠る小屋の方へと移った。
「……そろそろかな」
その言葉にキヨははっと顔を上げた。
「キヨ。レトさんは今夜が山場だ」
空気が一気に張り詰める。
「魔女の傷は普通の傷じゃない。体だけじゃなくて内側から命を削ってくる」
その説明にキヨの喉が小さく鳴る。
「だから、そばにいてあげてほしい」
ガッチマンは一歩近づき、まっすぐキヨを見た。
「起きないとは思うけどかなり苦しむと思うし、のたうち回るかもしれない。でも—— 絶対にそばから離れないであげて」
その一言は重くまっすぐキヨの胸に落ちた。
「……わかった」
キヨは小屋の方を見て強く頷いた。
そしてゆっくり小屋の扉に手をかけて中へと入っていった。
小屋の中に入ると、薄暗い灯りの中にベッドがひとつ置かれていた。
その上に——レトルトが横たわっている。
キヨの足が、思わず止まった。
顔は傷だらけで血の跡がまだ生々しく残っていた。
そして——
その手足はロープでしっかりと縛られていた。
まるで、暴れることを前提にしているかのように。
キヨはその痛々しい姿に胸が締め付けられた。
(ごめん。レトさん……1人にして本当にごめん……守るって約束したのに… )
また涙が込み上げて来そうになったが キヨはぎゅっと歯を食いしばった。
(泣いてる場合じゃないよな)
ゆっくりとベッドの横に近づきレトルトの傷だらけの手にそっと触れる。
その時だった。
『……ゔっ、ぁ……あ…ゔっ」
レトルトの喉から呻き声が漏れた。
「レトさん……!」
キヨはすぐに身を乗り出して 震える手でレトルトの頬に触れる。
「大丈夫……大丈夫だから……!」
必死に声をかける。
「俺がいるからな……ここにいるから!」
聞こえているかも分からない。
それでも——
何度もレトルトの名前を繰り返す。
『ゔぁあ……あぁっ、ぐ..ぁ…あぁぁ』
レトルトの喉から絶叫が漏れる。
ビクッと 大きく跳ねて体が弓なりにしなる。
『っ、が……ぁ、いた、い..あぁ……っ!!』
全身の筋肉が強張り、指先まで痙攣する。
「大丈夫だ!レトさん!ここにいるから!」
必死に声をかける。
だが レトルトの様子はどんどん悪化していく。
まるで体の内側から何かに引き裂かれているようにのたうち回る。
『…が…っ、ぁ……キ……ょ』
絶叫の中にかすかにキヨの名前が混じる。
「レトさん!!」
キヨは慌ててその体を押さえる。
「ここにいるよ!レトさん!」
『ぁあ゛っ……!!キヨ……っく……っ!!』
ロープがギシギシと軋み、ベッドが揺れる。
全身を引き裂かれるような痛みにレトルトはのたうち回った。
「っ、あ゛ああああ゛っ!!!」
絶叫。
喉を潰すような、耳を裂く叫びが小屋の中に響き渡る。
体が弓なりに反り、指先が痙攣する。
『ぐ、る…しぃ。キヨ……く。たす…けて。ヨ……く…っ』
何度も、何度も、レトルトはキヨの名前を呼び続けた。
まるでそれだけを頼りにしているかのように。
そして再び激しい痙攣が走る。
ガクガクと体が震え、歯を食いしばる音が聞こえるほどだった。
「大丈夫だよ!ここにいる!」
キヨは必死に叫び返す。
「ここにいる、ずっといるから!レトさん!」
その声に反応するように——
レトルトの瞳が、わずかに揺れた。
『……っ、い……か、ないで……っ』
その直後——
「ぁ゛あああああ゛あああ゛っ!!!」
再び、絶叫。
体が激しく暴れロープが食い込み 皮膚が擦れてさらに血が滲む。
波のように苦しみと激痛がレトルトに押し寄せる。
『ぁ゛あああああ゛っ!!い…たいっ…キヨ……くっ…ゔぁァ..っっ』
名前を叫びながら一晩中レトルトはのたうち回った。
どれだけ暴れてもキヨは握った手を決して離さなかった。
そして朝方、ようやくレトルトは落ち着き始めた。
あれだけ激しく暴れていた体は静かになり、今は穏やかな寝息を立てている。
手首と足首は縛られていたロープが擦れ血まみれになっていた。
その痛々しい痕を見た瞬間、キヨの中で張り詰めていたものが一気に切れる。
「……っ」
その場に崩れ落ちた。
どれだけ苦しかったのか。
どれだけ耐えたのか。
全部その傷が物語っていた。
キヨは震える手で、そっとレトルトの手を握る。
温かい。 生きている。
それだけで、胸がいっぱいになった。
「……よかった……」
小さく呟く。
そのままベッドに寄りかかるようにしてレトルトの手を握り続けた。
安心した途端、意識が遠のいていく。
キヨも限界だった。
レトルトの手を握ったまま——
キヨは、気を失うように眠りに落ちた。
どれだけの時間寝ていたのだろう…。
『……い、たたた……』
かすれた声でレトルトが呻いた。
その声に、キヨはハッと目を覚ます。
『身体中……いたい、よぉ……』
弱々しく、でも確かにレトルトの声。
「レトさん!!」
キヨは勢いよく起き上がった。
うっすらと開いたレトルトの黄金の瞳には
ぼんやりとキヨが映っていた。
その瞬間——
涙が一気に溢れた。
「よかった……っ、ほんとに……っ」
声がぐしゃぐしゃになる。
次の瞬間にはもう レトルトに抱きついていた。
怪我のことなんて、完全に頭から抜け落ちていた。
「うわぁああああっ……」
キヨはぎゅうっと力いっぱいレトルトを抱きしめた。
『いたい!いたい!!!』
レトルトが絶叫した。
『キヨくん、いたいってー!!!』
体をよじらせながら、必死に訴える。
それでも——
その顔はどこか嬉しそうに笑っていた。
そこへ、ガチャっと扉が開いた。
ひょいと顔を覗かせたのはガッチマンだった。
「お!レトさん、無事山場越えたねー。よかったよかった!」
軽い調子でそう言いながら、中へ入ってくる。
「痛かったでしょ〜?よく頑張ったね!」
にこにこと笑いながら、どこか呑気な口調。
まるでこうなることが分かっていたかのような余裕すら感じる。
『……死ぬかと思ったわ……』
レトルトはぐったりとしたまま、消沈した声で呟いた。
「いや、死にかけてたんだってば!」
ガッチマンがくすっと笑いながら返す。
その言い方は相変わらず軽くてどこか呑気だった。
『笑い事じゃないって……ほんとにヤバかったんだから……』
レトルトはむすっとした顔でそう言いながらもどこか力が抜けている。
そんな二人のやり取りを、キヨはベッドの横で見ていた。
さっきまであんな状態だったのに 今こうして言葉を交わしている。
レトさんが笑っている。
「……ほんとに……助かったんだな……」
実感がじわじわと広がって自然に言葉がこぼれた。
ちゃんと生きている。
その事実に また少しだけ、目が潤んだ。
「キヨ、ちょっと外に来てくれる?」
ガッチマンがそう声をかける。
「あ、レトさんはそのまま寝てて」
軽く手を振りながらそう言うとそのまま小屋の外へと出ていった。
キヨもガッチマンの後を追おうとした その時
ぎゅっと 手を掴まれた。
「……レトさん?どうした?」
『キヨくん……』
静かな声。
「……本当に、ありがとう」
まっすぐに見つめられ キヨの心臓がどくんと跳ねた。
『キヨくんの声……聞こえてたよ。俺の事 ……ずっと呼んでくれてたよね』
『キヨくんがいなかったら、乗り越えられなかった』
キヨはレトルトの手を握り返して、
「……1人にして、ごめん」
キヨは小さく呟いた。
「守れなくて、ごめん」
言葉にするたびに、胸が痛む。
それでも——
「……生きててくれて、本当によかった。これからは絶対1人にしないから。俺がずっと守るから!」
『約束ね』
レトルトはふふっと優しく笑った。
『ねぇ、キヨくん。 もっと近くに来て』
そう言って、軽く手を引いた。
「……え?」
戸惑う間もなく、体が引き寄せられる。
次の瞬間——
レトルトの手がキヨの後頭部に触れた。
優しく、でも逃がさないように ぐっと引き寄せられ 距離が一気に近づく。
そして——
ちゅ。
柔らかく、触れるだけのキス。
ほんの一瞬。
「……っ!?!?」
キヨの 顔がみるみる赤くなる。
「ちょ、ちょ、レ、レトさん、なにして/////」
言葉がうまく出てこない キヨを見て レトルトはくすっと笑った。
『助けてくれたお礼〜』
その軽い言い方に キヨの思考は完全に止まってしまった。
キヨはまだどこかポワポワとしたままぼーっと小屋の外に出た。
「おーい!キヨ!紹介するわ! 魚人族の、うっしー」
ガッチマンの腕の中にはお姫様抱っこのように抱えられた魚人がいた。
緑色の鱗が太陽の光に反射してきらりと光る。
「この抱き方やめろって言ってるだろー!!!」
うっしーはガッチマンの腕を容赦なく叩いていた。
「こらこら〜、ピチピチしないの〜」
全く気にせず笑っているガッチマンとジタバタともがくうっしー。
その光景に キヨは思わず吹き出した。
「うっしーも一緒に戦う仲間だよ〜」
ガッチマンは軽い口調で言う。
「……え?」
キヨが驚いていると
「……お前が、キヨか」
少しだけ値踏みするようにうっしーの目が細められた。
空気が、少しだけ引き締まる。
「話は全部レトルトから聞いてる」
うっしーは腕を組んだまま、ぶっきらぼうに言った。
「俺も、魔女一族が企んでることは許せない。だから一緒に戦う」
その言葉には迷いがなかった。
「でもこのお魚ちゃん、めっちゃ強いんだぜ?」
ガッチマンが場の空気を和ませようと軽い調子で笑う。
次の瞬間——
バシッ!!
「お魚ちゃんって言うんじゃねぇ!!」
うっしーの手が、容赦なくガッチマンを叩いた。
「痛っ!」
「真面目な話してんだろうが!」
さっきまでの鋭さとは違う、少し苛立った声。
「キヨ、うっしー こんな感じだけどすごい頼りになるやつだからさ。よろしくな!」
その言葉に、うっしーはふんと鼻を鳴らす。
「当たり前だ。魔女共にどっちが格上か叩き込んでやるよ」
にやりと笑って返すその声には確かな自信が滲んでいた。
三人で話していると いつの間にか後ろにひとりの老人が立っていた。
皺だらけの顔。
小さく背を丸めているが、その佇まいにはどこか静かな威圧感がある。
「お!ばあちゃん!」
ガッチマンがひらっと手を上げて笑った。
「小屋の中にいるよ。よろしく頼むな!」
こくりと小さく頷いて ゆっくりとした足取りで小屋の中へと入っていった。
「……今のは」
キヨが思わず口を開くと、ガッチマンが軽く肩をすくめる。
「俺のばあちゃん。 この村で一番の治癒師だよ。レトさんの仕上げの治療今からしてくれるんだって」
抱き抱えられたままのうっしーが、はっと目を見開いた。
「え!?まさかレトルトに、あの薬飲ましたのか!?」
驚いた声。
すると——
「だってレトさん死にかけてたし、しょうがないじゃーん。そうするしかなかったんだよ」
ガッチマンはあっけらかんとした口調で返す。
あまりにも軽い言い方に、うっしーの顔が引きつっていた。
「うわぁ…てことは今からばあちゃんがする治療ってアレだよな?」
嫌な想像と不安がキヨの頭をよぎる。
「あ、あのさ….あの薬って…なに?それに、あの治療って….」
不安そうなキヨにガッチマンは軽く答える。
「鳥人族に代々伝わる秘伝のお♡く♡す♡り♡だよ。治療内容は秘密♡でも安心して!レトさん絶対元気になるからさ〜」
「レトさん….大丈夫なんだ一一」
キヨが言い終わる前に小屋の中から、
『やめてーーー!!!』
レトルトの絶叫が響き渡った。
三人の動きが止まる。
『どこ、触ってんの!!?やだ!!触んないでー!!』
必死に拒否する声。
バタバタと暴れる音まで聞こえてくる。
🦅「……始まったねぇ」
🐟「……始まったな」
ガッチマンとうっしーがぽつりと呟いた。
「あ、あのさ……どんな治療してんの?」
キヨは不安そうに、小屋の方を見ながら聞いた。
一瞬の沈黙。
そして——
🦅🐟「……知らない方がいい」
ガッチマンとうっしーは、ほぼ同時にそう言った。
「レトさんの治療が終わるまで、俺たちは作戦会議でもしとこうぜ」
ガッチマンが軽く言って、歩き出した。
「そうだな」
うっしーもそれに続く。
キヨは二人の後を追いながら
(レトさん……ごめん)
心の中で謝った。
『ほんまにやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
小屋から漏れる涙混じりのレトルトの声が山にこだましていた。
続く
コメント
4件

レトさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!良かったぁぁぁぁあ゛!!!!(泣)

レトさん目が覚めてよかった ·͜· 治療ってなんでしょうねぇ( ◜ω◝ )ニヤァ 次の話も待ちきれない💭
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