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距離は、もうない。
エリオットの襟元を掴んだまま。
チャンスは一歩も引かない。
エリオットも、逃げない。
むしろ。
自分から近づいている。
「それ見たかった」
その一言。
軽いはずなのに。
やけに重く響く。
チャンスの目が、完全に変わる。
もう余裕はない。
抑えていたものが、はっきり表に出ている。
「……エリオット」
低い声。
少し掠れている。
エリオットはそれを聞いて、少しだけ息を呑む。
胸の奥が、強く鳴る。
ドクン、ドクン。
でも。
目は逸らさない。
逸らせない。
むしろ。
そのまま見返す。
笑う余裕は、もう少しだけしか残ってない。
それでも。
口元がわずかに上がる。
「なに」
チャンスの指に力が入る。
襟元を掴む手が、少しだけ強くなる。
それだけで。
エリオットの呼吸が浅くなる。
「……ほんとに」
チャンスが小さく呟く。
「止まらなくなるぞ」
エリオットは一瞬だけ黙る。
その言葉。
ちゃんと伝わる。
今ここで一線越えたら。
戻れない。
でも。
次の瞬間。
小さく息を吐いて。
少しだけ笑う。
「もう遅いだろ」
静かな挑発。
でも。
さっきまでと違う。
少しだけ本音が混ざってる。
チャンスの肩がわずかに揺れる。
その距離で。
お互いの呼吸が触れ合う。
どっちも。
限界まで来てる。
分かってるのに。
引かない。
引けない。
チャンスがゆっくり顔を近づける。
エリオットも動かない。
ただ、待ってる。
一瞬の静止。
――その直前。
二人とも、わかってる。
これ以上は。
もう。
誤魔化せない。
ゆゆゆゆ
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#doublefedora