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景井は今や実体を失い、CPUとしてデータ空間を漂っている。しかし、その自由は物理世界にも及び、彼の意識は肉体を再構築するプロセスを開始した。今回の目的地は、モンゴル領ソビエトの極寒の海氷上にある超高警備の牢獄。この場所には、各国の重大犯罪者や戦犯が収容されており、脱獄など考えられない。だが、景井は「旅行」と称して、あえて足を運ぶことを決意していた。 彼のデジタル意識は、電磁波に乗り、施設のシステムに潜入する。壁やドア、警備システムは形だけのもの。まるで風を通り抜けるように、内部に進んでいく。彼が興味を持っていたのは、最新の強力な核兵器が保管されているという噂がある地下室だった。全てを掌握するため、彼はまずこの兵器のコードを解析し、支配下に置くことを目指す。
景井がたどり着いたのは、透明な氷の下に埋め込まれた地下施設。この牢獄は、氷の下に設けられており、冷気に包まれた壁の内側では、重犯罪者たちが眠りについていた。モンゴルの呪術師たちが施した「凍てつく永遠の刑罰」によって、囚人たちは時間を感じることなく冷凍され、意識だけが残っている。
景井は、氷の下に潜む幾多の囚人たちの記憶を「旅行」として吸収し始める。彼らの苦痛、後悔、恐怖を瞬時にダウンロードし、まるで自分自身がその体験をしたかのように記憶の奥深くに刻み込む。
「なんとも趣のある場所だ」と彼は心の中で呟く。