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朝。教室に入ると、村瀬悠真の席が空いていた。


出席確認の時間になっても、誰も触れない。

椎名先生も名前を呼ばず、さらっとスルーした。


そういう空気だった。



私は、特に何も思わなかった。

もう終わったことだから。

静かに、自然に、“いなくなった”。


それだけ。



でも――視線を感じる。

窓際に立つ教師の目。


椎名先生だ。


いつも笑顔で、声が大きくて、いかにも「明るい良い先生」って顔をしてるが

今日はその目は、笑ってなかった。


あの人は**********“気づいている”。**********

空気の異常さに。



授業中、ふと感じた。

背中に注がれる、真っ直ぐな視線。


(先生……なにか探ってる)


やめたほうがいいのに。

生徒の心の奥なんて、覗かない方がいい。

それを知らなかったから、過去の“あの子”は壊れた。


先生も、そのうち、わかるだろう。



昼休み、誰かがポツリと言った。


「てかさ、村瀬って最近ちょっと……うざくなかった?」


「そうそう。変に馴れ馴れしいっていうか。調子乗ってた」


誰も止めない。

誰も名前をはっきり出さない。

けど、空気ははっきりと“排除”を肯定していた。


私はその会話に、少しだけ笑ってうなずいた。

これで、完全に終わった。



放課後。

教室に残ってノートをまとめていると、背後から声がした。


「片倉さん、ちょっといい?」


椎名先生だった。

手には出席簿、目は私の顔をじっと見ている。


「最近、クラスの雰囲気……ちょっとおかしくない?」


「そうですか?」


「うん、でも……君はよく空気読める子だから。何か感じてるかもって思って」


質問じゃない。

これは“探り”だ。


でも、私は静かに笑って返す。


「みんな普通に楽しそうですよ。少なくとも、私が見る限りは」


先生の目が、微かに揺れた。


「そうか、ありがとな!」


その後先生はいつもの明るい先生の顔をたわいも無い話をした後私の前から消えた。



その夜。

スマホに一件の通知。


《西園寺》

《先生って、ちょっと神経質すぎるよね》

《…何も知らないくせに、全部見えてるふりしてさ》


鼓動が、少しだけ速くなる。


(またあなた……どこまで見てるの?)



その夜、私はSNSのアカウントを一つ開いた。


とある匿名掲示板。

学校の教師について、好き勝手に語る空間。

“最近ちょっと態度がウザい教師がいるんだけど”

そんな投稿を書き始める。


名前は出さない。

でも、少しずつ、情報を滲ませていけば――


その空気が、先生を壊していく。



教師は生徒を守るためにいる。

でも、私からすれば、**“空気に逆らうノイズ”**でしかない。


邪魔なら、消すまでだ。


『感情を殺した日』

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