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私はじっと父の言葉を聞いたが
心は硬く閉ざされていた
「それからこの話は・・・
若いお前に聞かせることじゃ
無いのかもしれないが・・・」
黙って父の後ろを歩いていると
父が言いにくそうに頬を染めて言った
「それに・・・・神様は
この先・・・私達に新しい家族を恵んで下さる
可能性もあるのだからね・・・
お前の弟か妹を・・・・ 」
私は絶望に怒りを募らせ叫んだ
「パパが再婚したのは私には関係ないわ!
パパが美鈴と子供を作りたいとしても
どうして私があの家を追い出されて
惨めな思いをしなきゃいけないの?
私達の方が先に生まれて来たのよ!」
私は父が永久に美鈴と一緒にいるという事は
愚かな事に考えていなかった
美鈴よりも父は私の事を愛してくれていると
当然思っていた
しかし今や影のような二人の侵害者は
私の方で私が邪魔者なのだ
「パパは私を結婚させてあの家を追い出して
美鈴と新しい家族を作りたがっているのよ!
私も!雄二も!ママとの全ての思い出も!
なかったことにしたいのね!」
「これ以上お前とは話したくない」
そう言うと父は地下鉄の入り口に消えて行った
父の後ろ姿を見ながら私は頬に涙を流し
初めて父への怒りに燃えていた
私の心に燃え上がった憤りに負けないほどの
激しい怒りを父の心に呼び覚ました
今の父は昔私が恐れ、崇拝し、
愛した厳しい父は
もうそこにはいなかった
翌月私のひそやかな反発もむなしく
私のお見合いは大阪の高級ホテルで開催された
大阪の最高級ホテル
リッツ・カールトンのどっしりとした
調度品ばかりのロビーに
今の私の重苦しい気持ちにそっくりの
カーテンや足元を取られるぐらいの
毛足の深い絨毯をノロノロと歩いた
私は晴着を着せられ
父と美鈴が付き添った
私のお見合いの相手は
なんと美鈴のまたいとこで
長崎でサラリーマンをしていて最近私の
街に引っ越してきた
「片山徹」(カタヤマトオル)だった
朝から父と美鈴と一緒で息抜きのしたい私は
徹がリッツ・カールトンの中庭を散歩
しないかと言われて合意した
彼はとても背が高く不細工でもなければ
ハンサムでもなかった
でも紺色のスーツが広い肩幅に良く
似合っていると思っていた