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徹はまた従妹といえど美鈴にはよそよそしい態度を取っていた美鈴の方も徹の態度に、まったく無頓着に振舞っていた
しばらく二人で庭を散歩していても私はまったく何もしゃべらなかった
そして彼の方もそれを気にしない感じだったのでホッとした、私はとにかく父と美鈴から離れたかった
その日は徹と親しくなることは無かったのだが後日なんと彼は、それから私を頻繁に食事に連れ出した
私は依然として彼に恋心は抱かなかったけれど、それでも彼がよく食事に誘ってくれると気分転換になったし、少しの間だけでも父と美鈴の事を考えなくて
よくなった
いつの間にか私は彼に感謝の気持ちが溢れ
弁護士の見習いとして事業の話や、色々な事をしてくれる彼に少なからず好感を持てるようになった
ある夜、徹が突然わたしの両手を取りごくわずかだが息をはずませて言った
「スミレさん、僕と結婚してくれませんか?」
私は本当に仰天した、世間知らずで恋などしたことは無く、男性にまったく免疫のない私は赤くなり急いで手を引っこめた
きっと彼はふざけて言ったのだろうと思ったから
「ダメですか?」
私はショックで震えていた
「何とお返事していいかわかりませんわ、たぶん・・・・・・できないと思いますけれど」
「今答えてくれなくてもいいんですよ」と彼言った
そして真っすぐ私の目を見つめた
「どうか俺との結婚を考えてみてくださいスミレさん必ずあなたを幸せしてみせます」
「お申し出には・・・感謝していますけど・・・」
わたしはモスリンのスカートの襞をいじりながら口ごもった、生まれて初めて受けたそのプロポーズに、私は何かほろ苦い失望を感じた
だって彼の口調は淡々としていてとてもではないが私を愛している風な情熱は感じられなかった
どこか「結婚」というものを、何かビジネスのような、注文を取るような態度と口調だったのだ