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投稿ありがとうございます! めっちゃ続き気になる、楽しみに待ってます!✨
カラコロと、下駄が岩を踏んだ音がする。
「おいおい、そんなに急ぐと転んじまうぞ。…行けなくったっていいさ。別に帰る場所があるわけじゃ…」
「いえ、もうすぐ辿り着けます。故郷に帰らなくていいだなんて、そんなわけないじゃない。」
「正当な行き方をしてない奴が何言ってんだか………」
春の夕日がまだ黄色く染まるころ。
とある旅人…“緑桜 みなり”は、ある集落を目指して、碌に整備されていない山の中を走っていた。
どうやら、相方である狐の白布(しらぬの)の生まれ育った集落があるらしく、そこへ行こうとしているらしい。
だが、集落へ入るには、くぐり抜ければならない問題があった。
「本来なら、この山の中から座岩(ざがん)って言うさ、山の何処の木と木の間をすり抜ければ集落に入れるか彫られてる岩を探すのが一番正確でわっっっっっりやすい行き方があるってのに。」
「何の、ッ手掛かり無しで、そんな事を、ッハしていたら、3年は、ハアかかります。」
「……息切れてんじゃねぇか。ほら、ちょっと休めって。」
「今日見つけなきゃ意味ない、ッでしょう!?!?」
「全く…わかったから、ホントに一回止まってくれ。」
なんとも面倒なシステムだが、昔は数多にあった別の集落から守る為には、大活躍であった。
この特殊な力によって、今の今まで集落が滅びていないのだから。
「確かに、今日のうちに見つけなくちゃ、もう二度と行けなくなるって位だが、だからってそんなヘナヘナになってたら捜せるもんも捜せない。」
「………はぁぁ。わかりました。少しだけ休みます。でも、すぐにまた捜しに行くからね…?」
「なにがそんなにみなりを引き立たせるんだか。」
みなりは肩をすくませて、呆れた声で言った。
「白布が入口が定期的に変わるっていうから、こんなに急いでいるんじゃない。」
「だから別にいいって言ってるのに………あと俺のせいじゃねぇし。」
そう、この集落を守っている力はもう一つ能力がある。
それは“座岩と入口の場所を定期的に変える”というものだ。
変えるといっても、ここら一帯の山の中だけ。
まあ……ここら一帯の山、というよりこの地域は全て山の中にあたり、広さ約20km²もあるという。
「せっかく周りと比べれば多少小さな山の何処かにあるという情報がたまたま手に入ったのに…尚更この機会を失えばもう探すことはほぼ不可能ですよ?」
「まあそん時はそん時だ━━」
ビュウゥゥゥーー……
「…ん。風か。春だってのに寒いなぁ。」
ヒュウゥー…━━━“こっち”
「え、今声が……?」
「はあ?そんなわけ無いだろう。本当に疲れ━━━」
………“こっち”━━ヒュ、ヒュウウゥーー…“だれか”
「……さすがに聞こえましたよね…」
「………マジか…でも、誰だ…?」
…………ヒュウ……“右、青い花、対称の木”
━━━“ヵぁ…さ”シュュウゥゥーーーーヒュッ………
……………………
……
「…風、止みましたね…。」
「ああ、…最後、何て言ったのか聞き取れなかったな…。」
「………とりあえず、行ってみません?思えばかなりの手掛かりじゃないですか!」
「なんか怪しいが…仕方ない、行ってみるかぁ。」
「そういえば右って、今の私たちから見てからでしょうか………」
突然の不思議な声に困惑しつつも、彼女らは歩き出した。
夕日は、もう既に沈み、淡い紫が夜の帳をおろそうとしていた。