ジミンside
数日前から、お尻の左側に違和感があった。
なんか、熱いというか、痒い感じ?自分ではよく見えないし、看護師さんに言うのも恥ずかしい。
黙っているうちに、お尻はどんどん痛くなって、とうとう仰向けに寝たり座ったりするのも辛いようになってしまった。
「ねぇテヒョン…僕のお尻さ、なんか痛いんだけど…」
「え…お尻?ちょっと、見せてみ?」
僕はもぞもぞとうつ伏せになった。
「ジミナごめんね。ズボン下げるよ。うわっっ……」
「え?何?どうなってるのー(泣)?」
「なんかすごい爛れて、膿んでるよ…これ、かなり痛いでしょ?熱もってる…」
「えぇ〜っ。怖い…なんでなんで…」
「ちょっと今スマホで撮って見せてあげるから…」
テヒョンは僕のお尻をパシャっと撮ると、スマホを見せてくれた。僕の左尻の半分ぐらいの面積が、酷く爛れて膿んで、じゅくじゅくとしていた…。
「………(泣)」
「ちょっ…ジミナ〜、ジン先生呼ぶよ?いい?」
テヒョンは僕のお尻に薄いタオルをサッと掛けると、慌てた様子で出て行ってしまった。
ジン先生はすぐに来てくれた。
「何〜ジミン?お尻がどうかしたって?うわっ…。ごめん、ちょっと痛いかもしれないけど、触るよ?」
ジン先生が、僕の左のお尻をぷにぷに触る。それだけで激痛が走り、僕は悲鳴をあげた。
「うーん。随分と炎症してるし、しこりみたいになってる。熱ももってるね。これ、原因が分からないなぁ。…生検しよう。」
「せ、せいけん…?」
「このしこりのとこを、切り取って組織調べるよ。」
「こ、怖いよ……」
「ちょっと準備して、応援呼んでくるから待ってて。」
ジン先生は、看護師さんを2人も連れて戻ってきた。
僕はあれよあれよという間に身体にペタペタとモニターのようなものを付けられてしまった。手術…じゃないよね?
「ジミンごめんね。最初に言っておくけれど、この検査はすごく痛いと思うんだ…。一応局所麻酔するけど、あまり効かないかもしれない。頑張れる?」
え…?麻酔が効かないのに、この痛いお尻を、切られるってこと…?まさか…。
「が、がんばれる?って……やるしかないんでしょ…(泣)」
「辛かったら、タオル噛んで我慢しよう。いい?」
ジン先生がタオルをくるくるして、僕の口に咥えさせる。
怖い怖い怖い怖い…。
看護師さん達が、お尻を出してうつ伏せで寝る僕を抑える。背中も足も抑えられてしまい、もう僕は身動きすらできなかった。
テヒョンは心配そうに僕の枕元にしゃがんで、僕の頭を撫で、手を握ってくれた。
「ごめん、まず麻酔の注射するよー。」
僕のお尻の炎症した患部に、注射の針が刺さる。
「うぅぅぅぅぅぅぅ…」
何もしなくても痛いところに針を刺されるんだから、めちゃくちゃ痛い…。
「ジミンごめんね。今から組織をちょっと切るからね。テヒョン手をしっかり握っていてあげてね。」
「いぃぃぃぃ……」
経験したことのないような、壮絶な痛みが襲う。
鳥肌が立ち、身体は震えて、汗が吹き出てきた…。
お尻の肉が切り取られているのがはっきり分かる…痛い、痛い、痛いよう。麻酔なんて、全然効かないじゃん…。
僕はタオルを噛んで、声を出すこともできず、ただただ耐えるだけ…。
涙と汗がしたたり落ちる。
テヒョンは僕の枕元で、頭や肩をさすり、手を強く握って、声をかけ続けてくれた。
「ジミナ〜がんばれ〜。僕が付いてるからね。大丈夫だよ。ジミナは強い子だよ。がんばれ。」
手の感触と、テヒョンの声だけが僕の命綱のようで、目を閉じて、必死でそこだけに意識を集中させる。
「ジミンごめんね。なるべく早く終わらせるから、もうちょっとだけ我慢して。」
ジン先生も声を掛けてくれるけど、全然終わらない…。いつ…まで…。想像を絶する痛みが続いて、僕はもう、気絶してしまいそうだった。
やっと終わった頃には、僕の汗でベッドはマットレスまでびっしょり濡れ、僕はぐったりと脱力していた…。
テヒョンside
ジミンのお尻は無惨だった。初めて見た時は、思わずハッと息をのんでしまったぐらい…。
その痛々しい患部を切り取るという恐ろしい検査を、ジミナは必死で耐え続けていた。
ジミナの身体は震え、全身から汗が滝のように滴り落ちてきて、どれだけ痛いのかと苦しくなる。
少しでも気が紛れるようにと、手を握り、うつ伏せになった頭や肩を強く撫でて、僕は声をかけ続けた。
ジミナはタオルを噛み、僕の手をギュッと握り返し、涙を流しながら必死で耐えている。本当にジミナは強い…。
…30分以上はかかっただろうか。それは、僕にとっても永遠に感じられるような、辛い時間だった。
やっと生検が終わり、ジミナのお尻に大きなガーゼがあてられた。ジン先生は組織を検査に回すと急いで出て行った。
「ジミナ〜やっと終わったね…。めちゃくちゃ痛かったよね…。大丈夫…?」
「ぐすん…全然、まったく…大丈夫じゃない。死にたいぐらい、痛かった…もう嫌…嫌…。無理…。ほんと無理…。」
ジミナはうつ伏せのまま、しくしくと泣いていた。肩が震え、涙でシーツがまた濡れていく。
「えらかったね。いっぱい泣けばいいよ〜。いっぱいいっぱい、頑張ったんだもんね。本当にジミナは強い子だね。」
僕はジミナの頭をくしゃくしゃと撫で、タオルで汗と涙をふいた。
しばらく泣いて少し落ち着いたところで、服を着替えさせることにした。全身があまりにびしょ濡れで、これで風邪でもひいたら一大事だ。
「ジミナーお着替えしよ?入院着も下着もびしょびしょで気持ち悪いでしょ?シーツも交換してもらおうね。」
「うん、気持ち悪い…寒い…ぐすん。」
「ジミナずっとうつ伏せだけど、体勢きつくない?動ける?」
「無理〜お尻があたるとめちゃくちゃ痛いから…」
「横向きなら平気?やってみようね」
ジミナの脇に手を入れて、そっと横向きの体勢にした。
「大丈夫そう?」
「うん横向きなら、なんとか…」
その体勢で、ズボンと下着を脱がし、お尻に触れないようにそっと乾いたタオルで身体を拭いて、新しいズボンと下着を着せた。それから上衣も脱がせ、同じく拭いて、新しいものを着せ、紐をキュッと結んであげる。
「テヒョンありがと。新しい服、きもちい〜。僕、なんだかすごく、疲れちゃった…。少し、寝てもいい?」
「もちろんいいよ。本当にジミナえらかったねぇ。ゆっくり休みな〜?俺はずっとそばにいるからね。」
僕は、横向きの体勢で目を閉じたジミナに布団をかぶせ、トントンと寝かしつけた。痛い痛い検査に耐えて、すごく疲れたのだろう。すぐにスースーと寝息が聞こえ、僕はようやくホッとして、ひと息ついた。