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「開いたなっ」
「開いちゃったじゃないですかっ」
「お前が落としたからだろっ。
なんで持ってきてんだっ」
「いや、なにかのときのためにと思って」
「なにかのときっていつだーっ!?」
と倫太郎と壱花が揉めている間に、冨樫がその地図を拾う。
眺めて、
「ただの古い地図じゃないですか」
と言った。
「あ、ほんとだ」
と壱花も覗き込む。
地図はただの古地図のように見えた。
だが、冨樫からその地図を壱花が受け取ったとき、ぽっと地図の一部に明るい光が灯った。
いきなり発火っ!?
と思ったが、違った。
今居る場所の少し先がぼんやり光っている。
なんか物凄く嫌な予感がする……と思いながら、三人は地図に沿って進んでみた。
「あっ、この地図っ。
ナビみたいに画面が動くんですけどっ」
今居る場所を中心として、その周囲が地図に映し出されているようだった。
「便利だな」
「今の地図じゃないんで、建物とか違うと思いますよ。
でも、さすが京都。
古地図と道が変わってな……」
と言いかけ、壱花は、ひょいと角を曲がる。
向こうから、唐傘お化けが跳びながらやってくるところだった。
ひっ、と壱花は元の道に戻る。
壱花たちの前を跳んでいく唐傘お化けがチラとこちらを見た。
三人は息を止めたが、そのまま行ってしまう。
壱花の手にある古地図に、ぽっ、ぽっ、ぽっ、
……ぽぽぽぽぽぽっ、と連続してあちこちに光が点り始めた。
「早く閉じろっ、その地図っ」
と倫太郎が叫ぶ。
慌てて、壱花はそれを閉じた。
振り返り見たが、もう唐傘お化けは見えない。
「あ、この地図広げてるときだけ見えるんですかね?」
とホッとしながら壱花は言ったが。
「……そうじゃない」
と倫太郎が言う。
「え?」
「そうじゃない。
地図を閉じて唐傘お化けが見えなくなったんじゃない。
俺たちが違う場所に飛んだんだ」
そういえば、と壱花たちは周囲を見回した。
音もしないような夜の町。
道の周りの風景が先程までと、まるで違っていた。