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秋風吹く丘に佇む青年……。……その手に握られているものはなんだ……
空になった酒瓶だろう……。
現実を拒絶することで作り上げた、優しい虚構……。……それが何になると言うのだ。……彼はまだ子供だった。
現実との折り合いを付けることができなかっただけなのだ。……そういえば彼について、誰かに聞いたことがある……。
それはまるで壊れたラジオだ……。
言葉を発しなくなったスピーカーの代わりに、ノイズだけが響き渡る。……何もかも手遅れになってから気づくとは、皮肉なことじゃないか。……私は彼が怖かったよ。
「……ん?」……あー……えっと、そうだね……。
ここは……どうなると思う……?
「わからない」……でも、多分これでいいんじゃないかな……って。……君たちにとっての救いはきっとないけど、それでもいいよね…………。……まぁ、仕方ないか。
「なんの話だ……」……ねぇ、君は本当にそれでよかったのかい……? もし君にも、もう少し余裕があれば……。……まぁ、考えても仕方ないことだけどさ。……じゃあ、そろそろ終わらせようか。
「何を言っているんだ……お前は……」……大丈夫だよ、心配しないで……。
君はまだやり直せるから……。
「だからさ……僕たちは……」
そう呟いた後で、少年は自分の過ちに気付いたようだった。
歪む世界のなかで、それでも正しさを求めようとあがく彼だったが……彼はまだ幼かったのだ。
「……」
だが……私は思う。それは違うと。
お前は逃げたのではなく……選んだんじゃないか? 自らを犠牲にしてまで守りたいものがあったんだろう? 誰かを守りたいという純粋な願いが……
結果として多くの犠牲を生んだのか……。
はかない理想のために払った代償は大きい。……彼はあまりにも優しすぎた。……あの頃の自分には眩しかった、人々の優しさという名の欺瞞……。
彼が望んでいたことは本当に些細なことだろう。だが、誰もがその当たり前すぎる願いを口にすることができなかった……。……何故なら皆、自分自身を守ることで精一杯だったからだ。
誰もいなくなった公園のベンチに座る少女がいる。……だが、その姿を見るものはだれもない。まるで彼女が存在していなかったかのように……。彼女が見ていたものは過去の幻影にすぎないのか。それとも、現実に起こったことだったのだろうか。どちらにせよ今の世界にとってはどうでもいいことだ……。……いつだって世界は変わりつづけてきたのだから……。
それは、ほんの僅かな違いにすぎなかったのかもしれない。だが確かにそこにあったのは大きな変化なのだ……。この結晶は……おそらく彼自身の夢なんだ。
この世のすべての苦しみから逃れるために創り出された、唯一の救いの手だ。……彼は怯えていたのか。……それとも絶望していたのか。
何であれ……私は彼の夢を見ただけに過ぎないのだろうな……。……。……あの子は、どこにいるんだろう。
どうして、見つからないのだろうか。
誰も答えを知らない問いかけを繰り返すだけの日々……。
いつだってそうだ。
大切なことは何ひとつわからないままだ。
でも……僕は知っている。
僕の見ている世界こそが真実だと、わかってしまったんだ。……何もかも失って初めて気づいたんだ。
それでも構わないと思っている。
彼はもう、そうやってしか生きられないからだ。……歪むことで自分を保とうとする世界。
ここは……歪みきった檻のなかなのだ。……少年にとっての世界。……歪み続けるだけの、閉じた箱庭。……誰も訪れることのない牢獄だ。
閉じられたまま、終わることを願われた牢獄……。
そしてそれは永遠に変わることはない。……彼が存在する限りは。……少年の存在が許されなかった時、この牢獄が開け放たれることだろう。
そしてそのときこそ本当に……この歪められた世界に終わりが訪れるときになるのだ。
あの子は一体、何だったんだろうか……
俺にはわからない。
俺に理解できたことはひとつだけだ……。……ただ一つだけ……。……俺は……
「どうすれば良かったんだろう」
誰か教えてくれないか。
俺は何を間違ったのか。
どうして、あいつらを救えなかったのか。……あの子が消えたあともずっと考えているけれど……どうしてもわからなかった。
でもね……
君のおかげで答えを見つけることができたよ……。
礼を言う……。…………。
そうだね……。
私は、あの子を止めなくてはいけない……。
あの少女は危険すぎる……。
そうでなければ世界が終わるだろう……。
私が責任をもって止めよう。……安心してくれ。
こう見えても人並み以上の力はある方だよ。……何よりもまず、彼女を止めなくてはならない。
私の役目は、それだけなんだ。
彼女が暴走をはじめたのは最近さ……。
原因はわからんが、かなり危険な状況らしい。
私にできるのは……彼女を救ってあげることだけなんだ……。……だが、それは無理だろう。……もう、遅いのだ。……どうにもならないことなんだ。……。……さっきの夢の少女と同じような顔をしているな。……私は、君を助けられないのか……? 君は、自分がどんな人間なのか知りたがっていた……。
自分の居場所を見つけることを望んでいた……。……私が手伝うことはできないのか? 私だって、ただ見ているだけでは何もできない……。
助けたいと願いながらも、指先に触れることもできなかった……あの日の後悔……。……彼女は救われることを望んではいなかった。
それは許されないことだったのだ……。……だが……私は知っているぞ! そうやってお前らは、何度も世界を壊してきただろう!? 許されざるものを葬ってきたのは我々なのだ。
我々の罪深さを忘れないでくれよ、 エゼレット・グリーンさん! さあ、見せてくれ……あなたの目で! あなた自身の物語を見せてちょうだい!! あなたは、自分自身の力で生き抜いてきたんじゃなくて? だったら今度は私の番よね。……私がどうなるのか見てなさい。
この醜い傷跡と一緒にね。
これが答えなのかもしれないわ。
誰かを助けることでしか、生きていけないなんていうことは。……結局、みんな死んじゃうんだから。
何も残せないってわかっていても、足掻くしかなかった。