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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

290 - 間話 単純な力でもどうにかなるもんだ。

♥

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2024年07月23日

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俺は東雲聖27歳、会社経営者である。

経営者ではあるが、経営をしたことがない。

これ如何に?

旅を一休みすることになったので、今日は久しぶりにWSへと出社していた。

そのタイミングで、間が悪いことに来訪者が…しかも断りづらいタイプの……

「東雲さん。羨ましいですな。若くに成功され、美人な奥様までも」

「いえいえ。家でも会社でも、妻には尻に敷かれています。ですので、成功とは名ばかりですよ」

出社した俺は、どうしても会いたいと言われていた別会社の社長さんと会うことになった。

その社長さんと今はリムジンの中、二人であるところへと向かっている。

画像

「そうでしたか。実は我が家もそんな感じなのですよ。流石に家内は仕事のことには口出ししませんがね。東雲さんのところは副社長でしたな?心中お察しします」

がははっ

何が面白いのか全く理解出来ないが、俺は商売人でもあるからなっ!!

営業スマイルだぜっ!!

「それにしても、物流最大手である黒猫運輸の社長様が、私のような若輩者に会いたいとは……そろそろ要件をお聞かせください」

「はっはっはっ。いえいえ。他意はありませんぞ?WSと言えば、外資系以外の国内企業ではトップクラスに我が社をご利用下さっている。

一度お顔を拝見したかったのです。出来ればその為人も」

「そうでしたか。すみません。こういう会合に慣れていないもので」

お世辞でも謙遜でもないぞ!?

ホントに慣れていないんだからねっ!!

「もっと気楽に構えて下さい。ああ。もう着きましたな」

「ここ…ですか?」

海岸線を走っていたリムジンは、倉庫街へとやってきていた。

見渡す限りの倉庫と、偶に海が倉庫の隙間から窺える。

「はい。目的地は目の前の倉庫です。どうぞ」

促されたので、会釈をして車から降りた。

バタンッ

「こちらです」

「はあ」

どうやら倉庫を見せたいようだ。

何があるっていうんだ?

社長に先導され、一つの倉庫へと入っていった。




「ご苦労様でした。もう帰っていただいて結構ですよ」

「は、はい」

倉庫の中身は空だった。

代わりに倉庫内には黒塗りの車が四台停まっていて、その前に十五人ほどのスーツ姿の男達がいた。

帰らされたのはもちろん社長で、俺じゃない。

俺も帰っていいかな?

雰囲気的に無理そうだけど。

「これは一体…?」

社長が出ていったので、俺は社長を帰らせた人に向けて口を開いた。

「ああ。失礼。私はただの名も無き公務員です。今日は東雲さんにどうしてもお会いしたく、この様なマネをしました。ご了承下さい」

「………」

全然答えになってないぞ。

公務員ってなんだよ。

公立学校の先生でも、総理大臣でもそうじゃん。

それに何の用なんだ?

一方的に話しかけてきた人物は、40代くらいの普通の日本人に見える。

良くも悪くも普通のスーツを着たおっさんだ。

「実は私はある人に頼まれて、ここへ来ています。依頼内容は、貴方の身柄を押さえること。よろしいですね?」

「…いいわけないだろ」

何だよ身柄を押さえるって。

俺はただの酒呑みだぞ?

「そうですか…残念です。手荒なマネはしたくはないのですが…」

「口振りからすると、あんたは警察でも公安でも無さそうだな。悪いが力づくでどうにか出来ると思っているのなら…」

「?…なら?」

「死ぬぞ?」

俺がそう告げると、男は込み上げた笑いを抑えられなくなったようだ。

「はっはっはっ!!流石社長さんですねっ!面白いことを言う。ここには誰の目もありませんよ?貴方は私について来る他ないのです。おい。なるべく無傷で捕まえろ」

?俺を害したいわけじゃないのか?

まぁ、どちらにしても黙って捕まるつもりはないけどな。

男の指示に従い、周りの連中が俺を取り囲む。

「あんたらいくら貰っているのか知らないが、これは違法だぞ?」

・・・・

無視かよ。

「無駄ですよ。彼等は仕事をしているだけ。それに法はいつでも私達の味方なので、問題ありません。例え貴方が傷付こうとも」

そうか。やはり殺す気はないんだな。

相手が誰かはわからんが、ここで力を見せるのは愚策か。

やるなら殺さなきゃならん。

「わかった」

「流石ですね。やはり成功者は違いますね」

全く褒めてないだろ。

いっそ殺す気で来てくれたら楽だったのに……

俺は目隠しをされて、車へ連れ込まれた。






「もう外して構いませんよ」

車に乗せられて1時間。

どうやら本当の目的地に着いたようだ。

俺に目隠しなど何の意味もないのにな。

知りようもないから仕方ないか。

「ここは?」

流石に眩しいな……

それにしてもここはどこなんだ?

「ここは別荘ですよ。ま、管理しているのは個人ではなく組織ですけどね」

「そうか」

「着いて来て下さい」

ペラペラとよく喋る男に、俺は着いていった。

別荘と言われた豪邸に入ると、そのままリビングへ通された。

ちなみに手などは拘束されていない。

ガードマンらしき人達は周りに沢山いるけど。

「君が東雲聖か?」

「君が東雲聖か?」

部屋の中にいたのは、白髪混じりの外人さんだ。

もちろん1人きりではないけど、後はボディガードなのだろう。

その人以外はみんな立っているし。

「通訳は要らない」

俺はその外人さんに意識を向けて告げた。

こうすれば意識を向けた方の言語に翻訳されるからだ。

「それは重畳。流石にグローバルな企業のトップだけはあるな」

「世辞はいらん。こんな所までこんな方法で来させた理由を聞かせろ」

おっさんからおっさんに変わっただけやん。

長い話はいらんねん。

美女はおらんのか!?美女は!!

「せっかちだな。まぁ座りなさい」

男の前にはもう一脚、一人掛けのソファがある。

それ以外の家具は、その椅子とオッサンが座っている椅子の間にあるテーブルくらいだ。

「さあ。座って下さい」

案内役の男がそれを促してきた。

俺は椅子に近寄り……

ドガンッ

ガシャンッ

ソファを蹴り飛ばした。

ソファは部屋の壁にめり込んで止まる。

部屋の中にいた俺以外の者達の動きも止まった。

「ほら?さっさと話せよ?」

「っ!!?」

ボディガード達もあまりの非現実的な光景に、動けないでいた。

「おっと。その椅子から立ち上がるなよ?さっきの見ただろ?俺はアンタのお仲間がアンタを助けるよりも先に、アンタの身体をあのソファと同じように出来る。ああなりたいのか?」

「い、いや。…遠慮する」

「そうだろう?さあ。御託はいらん。さっさと要件を言え」

よし。脅しはこんなもんでいいだろう。

交渉ごとは立場がモノをいうからな。

「あ、ああ。まず始めに、自己紹介をさせてくれ」

「うん?ああ。そうだな」

そういえば、何処のどなたかも知らないわ。

「私はアメリカ国防総省副長官、ジェームズ・エドモンド・ヘミングウェイという」

「国防総省?…アメリカ?」

何の用事だ?

しかも副長官って、お偉いさんじゃねーかよっ!!

ああ…それで、法は味方だなんてほざいていたのか……

「そうだ。話は簡単だ。WSの商品から、未知の成分が検出された。それについて教えてほしい」

えっ…わかるわけなくない?

恐らく地球には存在しなくて、ソニーには存在する原子とか何かなんだろうけど……

うーーむ。これって、知らなくても問題なくないか?

「悪いが俺は把握していない」

「…嘘はためにならんぞ?」

「その言葉が通用しないのはよく知っているだろう?」

その為にパフォーマンスしたんだからなっ!

大人しく脅されていろよな。

「嘘はついていない。本当に知らないんだ。電話してもいいか?」

「…スピーカーで話すなら」

「ああ。それでいい」

ピポパッと。

トゥルルル…トゥルルル…トゥル、ガチャ。

『もしもし』

「ああ、聖奈。仕事中に悪いな」

『ううん。いいよ。どうしたの?』

「実はアメリカ国防総省の人に拉致られてな。何やら向こうさんは、ウチの商品から未知の物質が検出されたと言ってきているんだわ。

何かわかるか?」

・・・・

聖奈ならスピーカーで話していることも、この会話から読み取るだろう。

そもそも普段から盗聴等に気を付けているから、電話やメールでは余計な会話をしないように決めているしな。

『わからないよ。そもそもウチの商品からじゃなくて、輸送中に何かが付着したんじゃないの?』

「こう言っているが?」

俺はテーブルに携帯を置いて、ヘミングウェイ副長官を促した。

「私はアメリカ国防総省副長官のヘミングウェイという。そちらは?」

『初めまして、私はWS副社長の東雲聖奈と言います』

「ああ。貴女が」

やっぱり知っていたか。

まぁ調べるよな。

俺の妻であり、WSの副社長なんだから。

「そちらの会社が売り出している一部の商品から、地球では検出したことのない未知の成分が検出されたのだ。それを秘密裏に東雲社長から聞こうと思い、今回の件となった。

手荒なマネをしたこと、まずは謝罪する」

いや、それは俺に言えよ?

何で聖奈になんだよっ!?

『ふふっ。ウチのひとは、その程度のことは気にも留めませんよ。それから、成分の件で答えられることは何もありません。買い取られた商品に関しては、お客様のご自由にされて構いませんので、そちらで調べていただけますか?』

「…調べてもわからんのだ。会社へ調査に入らせて欲しい」

『それは秘密裏に?』

「そうだ」

『お断りします。そちらの権力を駆使すれば、適当なでっち上げで調査出来ますよね?私達から態々協力することはないので、ご勝手にして下さい』

うーん。爽快なほどの拒否だな!

「良いのか?会社の名前に傷がつくことになるぞ?」

『なりません。この電話も録音してありますし、夫にはGPS付きのカメラを持たせていますので、そちらの行動は1時間後にも、全世界へ発信されます』

「………」

とんでもない奥様だな……

何処にカメラが付いてんだよ…?

俺も知らんぞ。

『お話は終わりですね?聖くん。今晩はすき焼きだから早く帰ってきてね!』

「ああ。すき焼きかぁ…日本酒も頼むな」

『はーい。じゃあね』


ガチャ


「……」

「話は済んだだろう?帰らせてもらう」

俺が踵を返すと……

「捕まえろっ!!」

ボディガード達は我先にと、俺へと飛び掛かってきた。

俺は身体強化魔法を掛け直し、迫り来る超スローな巨漢達をいなしていく。

「ぐっ!?」「うっ!?」「がはっ!?」

十人ほどが地面に這いつくばったところで、一つ間が空いた。

「これでわかっただろう?俺に…いや。俺達に暴力は通じない。動画もあるから脅しや権力も通用しない。帰って報告するんだな。『WSには手を出すな』とな」

決まった……

完全に映画のヒーローのセリフだぜっ!!

俺が内心ガッツポーズをしていると、遠巻きにこちらの様子を窺っていたボディガードの一人が懐に手を入れるのが見えた。

チャキッ

「くははっ。どうやら我々の本気を見たいようだな?死にたくなければ、カメラを出せっ!!」

銃を突きつけられた俺に、ヘミングウェイ副長官が上から目線の命令を下した。

「撃てよ。どうした?」

「これだから平和ボケした日本人は……殺してかまわんっ!カメラさえ奪えば、後はどうにでも出来るっ!」

上司の命令には、従う他ないのだろう。

ボディガードは逡巡するものの、引き金を引いた。

パァンッ

甲高い音をあげて、銃口が火を噴いた。

「どうした?当たっていないぞ?」

「な、なんで…?」

「何をしている!?その距離で外すなっ!!さっさと始末しろ!」

余程腕に自信があったのだろう。

ちゃんと狙い通りに撃てていたさ。

俺が避けて、元の体勢に戻っただけだよ。

見えんだろうがな。

パァンッパァンッパァンッパァンッパァンッパァンッカチッ…カチッカチッカチッ

「っ!?!!?」

「弾切れか?じゃあこっちの番だな?」

「ひ、ひぃっ!?」

俺は弾切れの銃を未だに手放せずにいるボディガードへゆっくりと近づき、殺さないまでも強かにその身体を殴打した。

殺す気で来たんだ。

それならこちらもそれ相応に対処するのみ。

未だ無傷なボディガード達も、同じように倒していった。

そして最後に……

「ひぃっ!?近寄るなっ!!化け物っ!!」

「漸く気付いたのか?お前は…いや、お前達は触れてはならないモノに触れてしまったんだよ」

「た、た、たすけ…プゲェッ!?」

ふっ。峰打ちだ。

拳だけども。

「ふぅ。漸く静かになったな…」

俺はポケットから携帯を取り出すと、履歴から電話を掛けた。

『もしもし』

「おう。お疲れ。とりあえず、殺そうとしてきたから全員気絶させたけど…どうする?」

『お疲れ様。やっぱりそうなっちゃったかぁ。聖くんには悪いけど、頼まれてくれる?』

勿論だともベイビー。

俺は聖奈の指示に従い、この惨状を動画に収め、ヘミングウェイ副長官の携帯から長官宛に脅しの文章も認めてから送りつけておいた。



「『ファイアウォール×5』」



そして、それらが済めば、生き残りがいないように、屋敷ごと全て灰に変えた。






「ごめんね。掃除までさせちゃって」

殺人を掃除と言い切るなんて、貴女はどこの殺し屋ですか?

会社へと転移魔法で帰った俺は、聖奈へと報告をしていた。

「聖奈のせいじゃないから気にするな。それよりも、この後どうなる予想だ?」

「何も。もう何も出来ないと思うよ。証拠もないし、証人もいない。さらには他国での出来事だしね。

勿論あっちが日本の政府に何かを迫る可能性はゼロではないけど、情勢的に難しいかな。

今回の件も頼んだからこうなったわけで、さらには日本人も殺されたわけだし、政府も我が身が可愛いだろうしね」

あっちもこっちも保身ばかりだな。

まぁそれが生物としては正しいし、俺達にも都合がいいから文句はないけど。

「これで俺達は地球の最大軍事国家に喧嘩を売ったわけだ」

「売ってないよ。買っただけだよ」

「…いや、そうだけども……」

揚げ足取りをするんじゃないっ!!

「それに向こうは私達がしたとは思わないかもね。可能性としては、多分に含むだろうけど」

「まぁ、規模や権力がデカいと、それに見合うだけの敵もいるだろうからな」

向こうが本気になれば、俺の親を人質にとる可能性もゼロではない。

もしくは強制的に家宅捜索するか。

後者であれば、何も出てこない。

前者であれば、何とでも出来る。

敵が明白なら俺達に隙はないからな。

「アメリカの別荘は手放すか?」

もし、狙われたら面白くないからな。

「ううん。手放さないよ。勿体無いし、別に船を停めるだけでも使えるしね」

「それもそうだな」

敵は強大だが、俺達は二つの世界で強大な力を持っている。

それに情報という面だけでも、圧倒的なアドバンテージが俺達にはあるしな。


久しぶりのトラブルは、俺達の強さを露呈しただけで終わった。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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