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兄が私を守ってくれた時、あの時だ。私が兄を優しい人だと思い始めた時。
「痛い、痛いやめて、やめてよお父さん!!」
「うるせぇ、いちいちうめきやがって」
「ああ”い”だい”だい”よぉ”助けてお兄ちゃん、」
「渚!!やめて下さい、お願いします。代わりに僕が受けるので、渚を殴らないでください。」
「お前にはカンケーねぇだろおが、」
「僕の大事な妹なので、やめて下さい、お願いします。」
「こいつにそんなお前が頭を下げる価値なんてねぇぞ、何こいつに謝らせてんだよ!!ふざけんな!!!!!」
「ごめんな”ざい”、、、」
跡取り息子である兄に謝らせたことで、父は余計に腹を立て私を酷く殴り始めた。つまり、兄の一言により暴力がエスカレートしたのだった。
その日の怪我は今考えても、過去最大レベルのものだった。私は昔から母に嫌われていて、その日母は私を見てもどうでもいいような顔で、まるでたんぽぽが誰かに踏まれて潰されているのを見るような顔でこちらを見てきた。
いや、それは見てはいない、ただ母の視界の中に入っただけ。私は母にとってただの一風景に過ぎなかったのだ。
その日から兄は泣きながら看病をしてくれるようになった。**「ごめんごめん。」**と呟きながら、なぜ泣いているのかその時は、私の痛みを感じ取って泣いてくれているのだろう。もしくは、自分のせいで、、と思ってしまっているのではないか。と思っていた。ああ、この人は他人を思いやれる人なのだな。と、自分にはない感性を持っているのだ、と。その時私は兄を優しい人なんだと初めて認識した時である。
今になって感じることは、その時の兄には、私の痛みを体現してくれていたのだ。自分のせいで、という思いと同時に、なぜ暴力を自分たちが受けなければいけないのかという不条理と妹が受けていることに対して自分には何も出来ないのだ。という無力感、そして、周りの大人の無関心さに対するやるせない気持ちに涙を流していたのではないかと今ではと思う。
兄は心優しい人なのだ。だから他人のことも気遣うことが出来る、私のことを気遣い父と母に板挟みにされている兄は、いったいどれほどの苦労と気苦労があったのだろうか。兄の生い立ちを想像すると、言葉にできないほどのものがある。
あの両親から兄のような心の優しい少年が産まれてくるなんて誰が想像できただろうか。あの両親がこの世に残す最初で最後の素晴らしいことなのだと感じている。
今思えば私が助けてと言ってしまったのだ。兄は私のために助けてくれただけ、守ろうとしてくれただけなのに。
実はそんな兄を私は