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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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始まってすぐ、瑛人が口にしたのは……。


「俺は協力者を頼みません」



その言葉だった。


瑛人ならきっと他人の名前を覚える余裕はあっただろう。


だからきっと頼まないのは自分の意思でだということに気がついた。


そして、なんとなく察した。


瑛人がこの仕組みを使わないのは、スタートと言った時点でテレビ放映されているから。


つまり、ひとりの力で戦ったのか、それとも他人の力を借りて戦ったのか、それは見てる方に明らかになってしまう。


あとは時間のロスか、そもそも一人で十分だと思ったのか……。


「キミは、どうする?」


すると管理人と呼ばれる覆面の男が俺にそう聞いて来た。



どうするか……。


でも、この議題。

ひとりでなんとか答えが出るようなものではないような気がする。


どうすればいい?


もし、頼むことが出来るなら頼みたい。

だけどもし俺が負けたら、巻き添えになってしまう。



自分のせいで、失うことになるのかもしれない。


そんなことを考えたらゾッとした。



頭を抱えた俺は覚悟を決める。


「協力を要請します」


賭けてみよう。

どれだけ俺を信じてもらえるかどうか。


俺の言葉を聞くと、瑛人はすぐにステージから出て行ってしまった。


早く、伝えて部屋に行かないとな。

時間は止まってはくれない。


俺は協力して欲しい人のフルネームをすべて答えた。


協力者の部屋番号を教えてもらうことが出来たがその中に人がいない場合もあるという。


その場合が意味するのはディスカッション過程での死。

もしノックして出てこなかったら諦めるようにと覆面の男に言われた。


ノックしていない……。

その可能性が死を表すなんて……確かめるのは怖い気もするが、これをしなければいつまでも知らないままになってしまう。



俺が覆面の男から教えてもらい一番最初に向かった場所は【283】の部屋だった。



これは千春の部屋だ。


千春が生きていることはあのときに分かった。

だけど協力してくれるかどうかは別だ。


ドアの前につく。俺は深呼吸をしてノックをした。


ーーコンコン。


「はい」


すると千春はドアを開けて顔を出した。



「千春、急にごめん。あのさ実は……」


「協力する!」


「えっ」


モニターですでに説明があったらしい。

俺が誰に協力を要請したのかは伏せられていたみたいだが、来ると信じて待っていたと千春は言った。



「あ、でも……協力してもし俺が負けたらみんな巻き添えになるらしいんだ。慎重に考えて欲しい。もちろん断ってもらっても構わないから」


「大丈夫、勝てばいい話でしょ?頑張りましょう」


「いいのか?」


「うん。あの時、良樹が流されずに自分の意見を答えたこと、勇気をもらったの……自分も、ああいう場になったとしても、間違ってることは間違ってるって言える人間になりたい」


「千春……」


そっか、俺の言葉を聞いてそう思ってくれたんだな。



頼もしいな。

俺は千春にお礼を言った。


こうしてふたりで家を出て、次に向かった場所は【124】と書かれた部屋番号だった。


コンコンとノックする。

いるのか……。


頼む、いてくれ。

今まで生存を確認出来ていなかった人だ。


願うように待っていたが、中から人が出てくることは無かった。


「もしかして……」


千春が青ざめた顔をして言う。


そう、ここにいるのは……朱莉のはずだった。


まさか、ディスカッションで落ちたのか……?


ドクドクと嫌な音が心臓を鳴らす中、カチャとドアが開いた。


「何か?」

「良かった~」


俺が言う前に千春が先にそう言った。


本当に良かった……。


てっきりディスカッション中に命を落としたんじゃないかと想像してしまったから。


「トイレに入ってて出るのが遅れたのよ。で、だいたいおおかた分かるけど何をしにここに?」


「えっと、今からするディスカッションの協力をして欲しくて……でも協力者は俺が負けた場合巻き添えになっちゃうんだけど……」



バツが悪く目を逸らすと朱莉は言った。

朱莉の前だとどうもうまく話せない。


「嫌」


「ですよね……」


「あの日に貸し借りは0になったはずだけど?」


「えっと……じゃあ今日ので貸しに、とか?」


「お願い、朱莉ちゃん」


千春も手を合わせて頼みこむと、彼女はため息をつきながら言った。



「全く、なんで私なのかしら。私はあなた達と仲良くやったつもりはないわ。本当に貸し1どころか100だからね」


「いいのか……?」


「その代わり、絶対勝ちなさいよ」


「分かった、絶対勝つよ」


しぶしぶ了承してくれた朱莉は部屋のテレビの電源を消すと、中から出てきた。


これで協力者がふたり。

俺と千春と朱莉が揃ったところで俺は言った。


「あのさ、実はもうひとり呼びたくて……」


「いいけど、誰?」


「んーっと会って説明するほうが早い気がする」


もう一人、部屋番号を聞いた人物は協力を断られる可能性がある。


いや、断られる可能性の方が断然強い気もするけど……行ってみる価値はある。


俺は教えられたとおり、部屋番号【32】と書かれた場所まで向かった。


腕につけられた時計をみると、もうすでに20分が経過していた。


かなりのロスだ。

急がなくては……。


32番と書かれた部屋の前に行き、ノックする。


すると中から出て来たのはうさんくさい笑顔を浮かべる彼だった。


「へぇ、キミがここを訪ねてくるとは思わなかったな」


「藤崎……あのさ、実は頼みがあるんだ」


藤崎斗真。

どんでん返しのディスカッションをする彼だ。


「モニターみてたよ。目付けられちゃってさ、あんなの合わせて頷いておけばよかったのにね。でも、見てる側からしたら最高に傑作だったよ」


「…………」



俺が言葉を返せなくなっていると、朱莉がつぶやいた。


「誰、この人。アンタの友達?」


「いや、違うんだけどなんて言うか……」


「だったらこんなヤツに頼む必要ないわよ、私……なんかこの人嫌い」


朱莉がふんっと顔を背けて、俺が苦笑いをする。

すると彼はそんなことを気にもせず言った。



「僕のところに来たってことはお願いごとをしに来たんだろう?」


「ああ、そのことなんだけど……ディスカッションの協力をして欲しいんだ」



諦め半分。

もうひとつは賭け半分で彼の部屋番号を聞き出した。


OKがもらえるとは思えないけど、頼む価値はある。



「俺が負けたら協力者も一緒に死ぬことになる。藤崎がそんな危ない橋を渡るとは思わないんだけど、この通り……頼むよ」



俺は深々と頭を下げた。


すると彼は俺を見て笑いながら言う。



「うんいいよ。


……なんて言うと思う?こんなメリットのないことに参加する気になれないなあ」



そうなるよな……。


やっぱり無理か。

そう思って諦めようとした時、藤崎は言った。



「って、言おうと思ったけど僕は面白いことが好きなんだ。だからキミに選ばせてあげるよ」



……選ばせる?


どういうことだ?


俺が協力してくれって頼んでいるのに、選ぶことなんてあるのか?



「キミはディスカッションでの僕の力を見て、僕を入れた方が力になると思っているのかもしれないけど、僕が必ず味方として行動するかどうかは分からないってこと。


このディスカッションが放映されるパワーはデカい。

もしここを勝ち上がれれば、次のディスカッションは圧倒的有利にコマを進められるだろう。


ただ、もし僕がキミを少しでも脅威に感じているのなら、このみんなが見ている場でキミを悪く見せることだって出来る。


もちろん、今回のディスカッションは勝てるように努力するけれど、問題はその後。僕は印象操作をして、次のディスカッションでキミを落とすようなことをするかもね」


なるほど……。

つまり、味方と見せかけて、今後行うディスカッションを不利にさせるような印象操作をするかもってことか。


藤崎のディスカッションスタイルならよく分かっている。


にやりと笑う藤崎。

そうだ。


彼に至っては、味方にしたからって味方として行動してくれるとは限らないんだ。


「やめときなさいよ、こんな奴入れるの」


「そうだよ……」


朱莉と千春がそう言う中、俺は少し考えて藤崎に言った。



「いや、それでもいいよ。仲間になって欲しい」


うん。そうだ。

ここでリスクを負っても藤崎を仲間にすることに意味はあるはずだ。


それに……わざわざそれを伝えるところ、俺の反応を見て葛藤するのを楽しんでいるってだけじゃなさそうな気もする。


あくまでも俺の予想に過ぎないけど……。


俺が力強く答えた言葉に藤崎は笑顔で答えた。


「OK。これはいい暇つぶしになりそうだ」


……これでいい。

リスクは増えたが問題はこれからだ。


こうして俺たち4人は開いている部屋を使って会議を始めた。


“愛について”


このざっくりとした討論をどうやってプレゼンしていくか……。



「発表は20分なわけでしょ?愛とは何か、なんて全てを語ろうとしたら時間オーバーで大事なこと、何も伝わらないわよ」


朱莉が言う。


「それもそうだな……」


「見てる人がいるから短くて尚感動するようなフレーズを心を込めて言うとか、説明調になるよりはいい気がする」



俺がうんうんと頷きながらメモを取ると、朱莉が言った。



「でもこんなざっくりしてる議題だったら、概念については話しておかないと意見が飛び散り過ぎちゃうかもね」


「うん……概念か……どんな時に愛を感じるか、それをまず考えていった方がいいかな?」


「そうね」


「あ、そういえば私聞いたことあるよ」


そう言って話し始めたのは千春だった。


「脳の研究を行っている人がテレビで言ってたんだけど……人が愛を感じる時、同時に幸福感を感じているんだって」



なるほどな……。

愛=幸せを感じた時だということか。


「で、藤崎とかいうあなたは何か意見ないの?」


朱莉が彼を横目で見るが、藤崎はきょとんとした顔をするだけだった。


「うーん?僕、愛とか全然分からないしな……それよりさ、ここにあるお菓子は別に食べてもいいんだろ?」


「うん、まあ会議室は好きに使っていいって言われたけど」



俺がそういうと、藤崎は楽しそうにお菓子を手に取った。



「ラッキー!みんなも食べる?」


「呆れた、どうしてこんなヤツに協力を頼んだのよ」


朱莉が藤崎を見て怒り口調で言う。


「いや……えっと……」



戸惑う俺を差し置いて、藤崎は顎に手をあてて感心していた。



「部屋にはお菓子なんて無いからここはいいな。やっぱりキミの協力を受けて正解だ」


「もう、いいわ。この人は無視してやりましょう」



朱莉がそう言うと、藤崎が「まあまあ」なんて言って、お盆に入ったお菓子をみんなの机の前に出してきた。



「俺はさ、甘いお菓子が好きだから甘いものを食べると幸せを感じるんだ。あ~これなんて懐かしいな。小さい頃よく食べなかった?」



藤崎がひとつ取ったのは、ラムネ型のお菓子だった。



「あっ、本当だ。この駄菓子泡が出るやつだよね!」


千春がそれに反応するとふたりは盛り上がり始めた。


「このお菓子本当に懐かしいな~泣いている私にね、おばあちゃんが食べてごらんって渡すの。


食べた瞬間口に泡が広がるでしょ?


それでビックリして……涙も止まっちゃったんだよね。それ以来私、このお菓子が大好きになっちゃって」



お菓子を持って言葉をこぼす千春は嬉しそうだった。



「ちょっと、今そんな話してる場合じゃないでしょ?」



朱莉の言葉に俺もはっと我に返った。


そうだ、時間はこくこくと過ぎていく。

好きなお菓子の話をしている場合ではない。



「あ、ごめん……久しぶりに見たからつい……」



千春が眉を下げて謝ると、藤崎は言った。



「いいじゃん、昔話。もっとリラックスしてやらないと堅~い頭じゃ何も出てこないよ」


そう言って藤崎は朱莉の頭を指先でコンと突いた。


それを遠慮なく振り払うと朱莉は怒った口調で言った。



「だからって意味の無い話しをしてたら時間が無くなるでしょ!」


「そう?」



確かに……こんな関係のない話を藤崎が持ち出して来たってことは、やっぱり何か企んでいるのかと疑ってしまう。


自分は協力を受けるけど、味方になるとは限らない。

そう言った藤崎の意見に賭けるのはリスクがあったか……。


そう思っていた時、彼はまた変なことを言い始めた。



「愛と幸せは紙一重……確かによく聞く言葉だね。僕は甘いお菓子が好きだから食べたら幸せな気持ちになる。けど、お菓子に愛は感じないな~でもキミは違うんだよね?」


藤崎は千春のことを指さして言う。


……どういう意味だ?

藤崎は何が言いたい?


千春と藤崎は違う。


同じものを食べて同じように幸せを感じてもそれは愛にならない。


どういう意味だ……。

ダメだ……分かんねぇ。



そもそも藤崎に意図があって言っているとも限らないし……。


アゴに手をやり考え込んでいると、朱莉が藤崎を睨んだ。


「何が言いたいの?」


しかし藤崎は「さあ?」と答えるだけだった。


やっぱり、何も意図はないのか……。



そう思った時、千春がひらめいたように声をあげた。


「そっか……そうだね、確かにそうだよ!」


ぱあっと顔を明るくする千春は笑顔になって身振り手振りを使って話し始めた。


「人によってはお菓子を食べることで幸せを感じる人がいるでしょう?甘いものが大好きな人、食べることが大好きな人は自分の好きなものを食べてる時に幸せを感じる。幸せを感じることが愛だってさっき意見が出たよね。私もそうだって思ったけど……お菓子に愛を感じるかな?甘い、とても美味しい、幸せだ。だからこれは愛だと思える?そうじゃない。つまり、愛っていうのは命あるものの間でしか起きないんだよ」


……なるほど、そう言うことか!


「で、大事なのはここから。命あるものにしか起きないはずのモノに私は愛を感じた。それは、おばあちゃんからもらったラムネ、という動作がつくから」


そうか……!


「そう、人を介在すればそのモノにも愛を感じることが出来るってことよ」


小さい子が両親から誕生日プレゼントにもらったテディベアー。

そのテディベアーをいつまでも大事に持っていたとして、本来なら人形に沸かない愛が両親からもらったという過程がつくことで愛が沸く。


そういうことか。

これで愛についての前提が出来たな。



「なるほどね」



朱莉も頷きながら紙に書き込んでいた。



「ありがとう、藤崎くん!ヒント……くれたんだよね?」


「いや?僕はただ知ってる知識を言っただけだけど?」



藤崎の言葉が無かったらここに辿りつかなかった。



やっぱり信じてもいいのか?


すると彼は落ち着いた声で言った。



「山内千春、だったっけ?キミは自己評価が低いようだけど、かなり賢いね。他人の言葉ひとつ、ひとつを流さずに聞ける力がある。使い方によっては色んな場面で役立ってくるよ」


「そ、そうかな……」


千春は照れながらも、さっきよりも自信のついた表情に変わった。


藤崎がそんなことを言うなんて意外だったけど……千春の表情が少し明るくなってくれて良かった。


千春会うたびに言ってたもんな。

自分には何もないから不安だって。


自分はいつ落ちるか分からないって。


ここで自信がついてくれれば次だって、挑めるもんな。



それから俺達は順調に議論を重ねていった。


2時間の討論時間が終わる頃には自分が思う”愛について“という議題をパワーポイントにまとめあげることが出来た。


途中までテレビ放映されていることをすっかり忘れていたくらいだ。


これから発表の結果は見ている人が決める。


……瑛人はどのくらいの完成度で挑んでくるんだろうか。

不安に思っている時、千春が肩を叩いた。


「きっと、絶対大丈夫!だってみんなで考えたんだから」


そして朱莉も続ける。


「そうよ、いつものあなたらしく行けば?」


千春、朱莉……。

本当に2人には助けられっぱなしだな。


もし、2人がいなかったら、今俺はここにいないだろう。


「頑張ってくるよ」


俺は力強くそう言うと、ふたりは頷いた。


そして。


ブーーー

大きなブザーが鳴り響く。



「制限時間になりました。発表者の方、及びそれに関わった方はステージまでお越し下さい」


「私たちも一緒にいって平気なの?」


千春の言葉に、俺はみんなを呼ぶ前に覆面の男から聞いた話をし始めた。


「うん、舞台裏から見ている必要があるんだって。発表が始まってからの私語は厳禁。助言やアドバイスをした際には問答無用で俺の負けが決まる」


「へぇ?なるほど」


ニヤニヤしながらそれを言う藤崎。


「た、頼むよ藤崎」


「まぁ口が滑らないように気をつけるよ」



朱莉がきっ、と彼を睨むが、藤崎はけろっとしたままだった。


本当に頼んだぞ、藤崎……。


そして会議室を出てステージに向かう。ドキドキと緊張している中、その途中で藤崎は先を歩く朱莉と千春に聞こえないくらいの小さな声でつぶやいた。



「それにしても、やっぱりキミは賢いな」


「えっ」


「このディスカッションで俺に協力を要請したのは、別に俺の力が欲しかったわけじゃないだろう?」


「……っ」



俺は黙っていた。

藤崎は俺の意図に気づいたのかもしれない。



確かに、藤崎がいれば議論の質を高めることが出来ると思った。


だけど、それは本当に協力してくれたら、の場合のみだ。


敵にまわるかもしれないリスクを追ってまで藤崎の力を借りる必要はないと思った。


朱莉と千春がいてくれるのなら。

でも、それでも藤崎を呼んだ理由は……別にある。


「キミは俺を恐れてる。俺の一人勝ちをするディスカッションスタイルを。だから、もし今後、ディスカッションで彼女らふたりとあたるようなことがあった時、それをして欲しくない。だから俺を仲間にした。……そうだろう?」


藤崎の使うディスカッションはどんでん返し。

ラストに仲間を裏切って一人勝ちするというもの。


おそらく藤崎のいるほとんどのディスカッションが藤崎の一人勝ちに終わっているだろう。


見ず知らずのヤツなら簡単に裏切り落とすことが出来るヤツ。

つまり、もし朱莉や千春が当たるようなことがあれば……あのふたりは避けられないかもしれない。


今後あと、何度ディスカッションが行われるか分からないが、だんだんと人数は減っていき藤崎とあたる可能性も増えてくる。


「でもさ、俺がそんなにいい人だと思う?言ったよね。俺は他人に興味がないんだ。こんなお仲間ごっこしたくらいでやめると思う?きっと彼女たちと、同じディスカッションに参加することになっても俺は同じことをするよ」


「分かってる。でも……本当に賭けだよ。何もかも。お前が協力してくれるか、してくれないかだって賭けだった。でも協力してくれた」


「あれは気まぐれだよ」


「うん。気まぐれでもなんでもいい。俺は藤崎のやり方は気に入らないけど、藤崎には人間らしさを感じてる。だから……また賭けるよ、お前の気持ちに」


「はは、」


彼は笑顔を見せると、お人好しだなあ、とつぶやいた。


ここで俺に制裁が加えられたとしても、頼むから2人だけは……残っていて欲しいんだ。



俺はかけるよ。

今日のこの、さっきまでの時間で、藤崎の心に何か変化をあたえられたという方に。



こうして俺はステージの扉を開けた――。



***














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