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「嫌われてもいい」
それはきっと嫌われることはないと思い込みたい強がり。
「そこまでされても俺を嫌いにはなれないでしょう?」
万が一拒否されたらどうしようと指先が震えるのを隠して君に迫る。
メディアへの露出が増えてCM、映画にドラマ···知り合い以上、仲が良いとはっきり言える人が増えて優しくて人懐っこく誰でも受け入れる、そんなりょうちゃんが愛しくて憎らしい。
昔、もう3人になって暫く後だった頃···なぜか最後2人きりになったスタジオでりょうちゃんが一緒に帰ろうって座り込んでた俺に手を伸ばしてくれた。
その手を取って立ち上がり暫く離そうとしない俺をそっと握り返してそのまま帰ろうとしたりょうちゃんに好き、って言った。
「え?」
「好きだよ、りょうちゃん」
「···ありがとう」
驚いたり狼狽えたりしてくれたらまだ良かった。
あくまで自然に俺の好きを撫でるように優しくけど軽くりょうちゃんはありがとうという言葉だけで終わらせた。
次の言葉が出なくて、けどその手は離したくなくて俺はそのまま途中まで一緒に帰った。
それから何年もたったけど、りょうちゃんへの気持ちは変わらない。
寧ろ、より自分のものにしたい気持ちは強くなっていった。
「···元貴どうしたの?」
好きだと伝えたあの時より広く綺麗な部屋、ベッドも何もかもあの時より高級なもので囲まれて。
呼んでおいたくせに特にいつも通り、寧ろ口数が少ない俺を心配してりょうちゃんが顔を覗き込んだ。
緊張している、と思った。
何万人の前で歌う時よりもよっぽど。
多くに求められても埋まらない何か。
それはきっと目の前にいる人のせい。
ベッドに座る俺の隣にそっと座り、どうしたのかとそのリスみたいなまん丸の瞳で見つめるりょうちゃんの手に自分のを重ねた。
その手が熱く感じるほど自分のを指が冷えているのに気づいて、少し息を吐いた。
「言いたいことが、あって」
うわ、少し声が裏返った。
余裕ないのがバレたらいけないともう一度息を吸って吐いた。
「なに?聞くよ···えっ?」
重ねていた手を引っ張ったことで体勢を崩しかけたりょうちゃんのもう片方の手首を掴んでベッドに押し付けた。
その体に乗り上げると上から更にまん丸になって俺を見上げる目を見下ろした。
「な···えっと?元貴?」
「···好きだよ、りょうちゃん」
少しの沈黙。
俺はりょうちゃんの上に崩れ落ちた。
本当はキスして抱きしめてそのまま···したいことしてやろうなんて思ってたのに。
あまりに警戒心もなくて俺のことを純粋な目で見るから、ただ好き、しか言えなくて。
「ごめん、俺···」
「いいよ」
「え」
身体を上げて離れようとする俺はりょうちゃんに引っ張られ身体が重なってしかもぎゅっと抱きしめられた。
「いいよ、何しても」
「···俺が何したいか分かって言ってんの?」
「もちろん、だって僕も好きだから。元貴のこと。だからいいよ」
あんなことやこんなこと、俺の欲望のままにしてもいいってこと?
それくらい好きってこと?
本当に?
「なんでそんな···りょうちゃんってほんと···」
声が震えて何するどころか涙が溢れてりょうちゃんの服に落ちていく。
なんだよ、かっこ悪いな。
男らしくとるもなくてカッコよくもなくてりょうちゃんの暖かさに柄にもなく泣いてしまって。
「俺、格好悪い···」
「元貴がかっこいいことなんて昔から知ってる。それより泣いてくれる方がなんか嬉しいよ」
りょうちゃんの細い指が優しく俺の頬を撫でて、ゆっくりと距離が無くなって唇が重なる。
「好き、大好き」
なんかりょうちゃんのほうがよっぽどかっこいい。
「嫌われるかと思ったから安心した」
「···昔、元貴が好きって言ってくれたでしょ?そこからかな···なんかヘンに意識しちゃって。あれがどういう意味だったのか考えてたら···好きになってた」
「本当に?俺はあの時からずっと好きだった···」
あ、また泣いちゃったってりょうちゃんが小さく笑った。
嫌われなくて良かった。
好きな人が俺こと好きだなんて。
ようやく独りじゃない気がする。
「これからも一緒にいようね」
ポンポンってリズムよく背中を優しく叩いてくれる。
情けない、かっこ悪い。
けど受け入れてくれる人がいる。
俺は初めて実感した。
幸せでも人は泣けるって本当なんだ。
コメント
2件
カッコ悪い❤️くんも良いですね🤭💗