影踏み 2 (むぐわな)
続きをどうぞ!!
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ぐったりと性行為に疲れた和中が眠りに就き、小さく寝息を立て始めると、小林はベッドのサイドテーブルの上に置いてあったスマホを手に取り、今晩抱く女を見繕う。
トークアプリで適当に選んだ女に連絡を入れ、今夜会う約束をして小林も一時の眠りに就いた。
和中の事は嫌いではない。
見てくれはいいし、自分に従順なところも気に入っている。
だが、小林は一人の人間に縛られるのがどうしても嫌で、特定の相手を決めずに関係を持つ事が自分の性に合っていると思っていた。
小林の部屋で一晩の関係を持ち、少しの睡眠と惰眠を貪って目を覚ました和中は、隣で寝ている小林を起こさない様に昨夜脱ぎ散らかした服を着て、部屋を出た。
いつまでも、彼の隣にはいられない。
また、小林の心に響きもしない愛の言葉を口ににしてしまいそうだから。
小林の部屋からのその足で、和中が組事務所に顔を出すと、何やら小峠と速水が騒いでいる。
和中「華太、どうした?」
小峠「あ、和中の兄貴、おはようございます、速水が昨夜アガりの集計の書類を持って帰ってたんですが、黒焉街周辺で落としたらしくて」
黒焉街と言う単語に、和中の顔が思わず不快そうに歪む。
それを、ヤキを入れられると勘違いした速水はまだ何も訊いていないのに、慌てて言葉を絞り出す。
速水「空龍街の街中に落とした可能性もあるので、どこにあるかは分かりませんが必ず探し出します!」
黒焉街は、以前天羽組と抗争していた京極組が利権を持ち、仕切っている街だ。
和中が苦々しく思っていると、ポケットのスマホが短く振動するのが分かった。
小峠と速水に、事が大きくなる前に早く探し出すように言うと、和中はてっきり小林からのメッセージかと思い、スマホを急いで確認する。
ところが、スマホのトークアプリには、今一番連絡を取りたくない男からのメッセージが入っていた。
メッセージの送り主は、京極組との抗争の際、追われていた小峠を助ける為に一度刃を交えた男、六車謙信からのものだった。
六車と和中は抗争が終わった後、たまたま縁あって二人で飲んだ事があった。
刑務所に入っていた六車は、出所後に色々あり元の内縁の妻に復縁を断られ、その事をずっと引きずっている様だった。
でも、好きなんだよ…と目を潤ませている六車が、小林に遊びの相手にしたされない自分と重なった和中は、気持ちが分かると頷いた。
すると六車は何を思ったのか、急にベタベタと和中の身体に触れる様になり、飲み屋を出ると強引に腰を引き寄せ唇を重ねてきた。
嫌だと腕から逃れると、六車は” 俺達は似ている、叶わない恋をしているところだ “と言った。
” なら、傷を舐めあってもいいだろう? “と、六車は和中の全身を舐める様に見ながら、猫を路地裏に引きずり込もうとした。
小林に操を立てているし、この間まで憎み合った相手に好意と言う好意を特に持っている筈もなく、和中は六車の淫らな誘いを振り切ってその場から全速力で去った。
それきり音沙汰が無かったが、今回は何の用だと言うのか。
トークアプリを開き、内容を読むと速水が落とした書類を黒焉街のキャバクラ嬢が拾い、敢えて組の連中には知らせず、内々に六車が預かっていると言う、タイムリーなものだった。
文面からして恩着せがましいが、和中も返信を打った。
ーー舎弟に取りに行かせる。時間と場所を教えてくれ。
大事な書類を預かってくれている事に、一応の感謝は示しつつも、和中は自分が動く気はなかった。
しかし六車は。
ーー和中、お前さん一人で来てくれないか。書類を渡すついでにどうしても話したい事がある。
既読をつけた途端、和中が返事を打つ前に立て続けに指定場所のマップが送られてきた。
和中「(やむを得ない…か。)」
和中は渋々そう思い、書類の件で落ち着きなく右往左往している小峠に、書類を探しに行った速水に戻ってくる様に言うのと、事情を伝え自分が六車の元に書類を取りに行くと話した。
組事務所を出て、途中でタクシーを拾い目的地までの道のりを急いだ。
マップで指定された場所の近くでタクシーを降り、細かな道をスマホを確認しながら歩く。
辿り着いた指定場所は、何の変哲もないアパートで、ここに六車の部屋があるのだろうと何となく思った。
ーー着いた。何号室だ?
スマホでメッセージを送ると、アパートの三階の一室の窓が開き、六車が顔を出して手を振る。
六車「和中、ここだ」
三階まで階段を上り、部屋の前に着き一応インターホンを鳴らそうとするが、その前に内側からドアが開いた。
六車「待ってた、入ってくれ」
そう言って、和中が部屋の中に入りドア側についた六車に背を向けた格好になると…。
背後から六車の手が伸びてきて、薬品の匂いのする布で鼻から口を覆われた。
薬品の匂いを嗅ぐと、一挙に和中の意識が遠くなる。
♦
和中「ん…」
和中が目を覚ますと、畳の上で横たわっており、服を下肢だけ丸裸にされていた。
和中「なに…」
急に不安になり、辺りを見渡すと傍らでスマホを弄っていた六車がこちらに気付き、笑いながら起き上がろうとした和中を押し倒した。
六車「やっぱりアンタ一人で来てくれたんだな」
和中「六車…これはどう言う事だ?」
和中の質問も聞かずに、六車は卑猥な動きで猫の下肢を撫でながら。
六車「下着が少し濡れてたから不思議だったが、これローションだよな?アンタ、もう男を知っているのか?」
六車は妖しげな光を瞳に浮かべ、まだ乾ききっていない和中の下肢のローションを指で掬い、にちゃにちゃと指と指の間で糸を引かせた。
何も言わずに見詰めてくる和中に、六車は続ける。
六車「前から思ってた、アンタを抱かせてくれ、男を知ってるなら話しは早い…いいよな?」
言ったかと思うと、唇を重ねてきた。
和中「ふぅっ…♡いやだっ!」
舌を噛まれないように、顎を掴まれ無理矢理口を開かされ、深い口付けを受けた。
身体は一切拘束されてはいなかったので、和中は両手で逃れようとするが、六車の力の方が上回っていた。
和中「んぅう♡うっ♡はぁっ♡」
六車の手が和中の膝にかかり、バタつく足を強引に開かせると、その間に身体を入れ足を閉じられない様にした。
唇を解放してから、六車の関心は和中の下肢へと移る。
和中「やだっ…♡」
捩ろうとする和中の腰を真正面に直し、六車は萎えた猫のソレを握り込んだ。
ゆっくりと手を動かし、上下に扱き始めると和中は否が応にも興奮してきた。
再び抗おうと手を退させようとするが、六車の強引さには敵わなかった。
こんな状況でも反応してしまう自分が、心底憎い。
半強制的に催された興奮に、和中のペニスは次第に頭を上げ始め、カウパーの涙まで流し始めた。
和中「はぁっ…♡いやだ…♡」
六車「ローション、一応準備してあるから使おうな?」
すぐ届くところにローションのボトルがあったらしく、六車はボトルを引き寄せて手に取った。
新品のローションの封を切り、和中の下肢に零していく。
ヌルヌル♡と和中のペニスとアナルまで塗り広げ、六車は改めて猫のソレへの愛撫を始めた。
和中「あっ…♡やめろぉ…♡」
六車「そんな事言って…気持ちいいんだろ?」
ローションのぬめりを借り、ジュッ♡ジュッ♡と音を立ててペニスを扱き、裏筋を撫で上げ段々と和中を追い詰めていく。
和中「ぅんん゛ん♡あ!♡いやだぁ!♡」
小林以外に、身体を許す訳にはいかないのに…。
どんなに抗おうとしても、腕力では六車に敵わない事も、和中自身がこの男の手の中にある事も、その愛撫に興奮している自分も…この状況には絶望しかない。
ビクッ♡ビクッ♡と腰が跳ね、猫は首を横に振りながら、達するのが嫌で、六車の手を退かせようと藻掻いたが、快楽で力の入らない手では彼は意にも介さない。
和中「やだ…♡いやだ…♡イくぅ♡」
身体が強張り、和中のペニスの先端から精液が勢いなくドロリ♡と溢れてきた。
視界に霧がかかった様な和中は、朧気に思った。
和中「(イってしまった…他の男の手で…)」
六車「気持ちよかったか…?もう言い訳出来ねぇな」
達して頭が冷静になると、無遠慮にソレに触れている六車を酷く忌々しく思った。
六車は手についた和中の精液をティッシュで拭うと、己のズボンの前を寛げ、半勃起だったペニスを取り出し扱き始めた。
ペニスがフル勃起になると、六車は二の腕を和中の両足を乗せあられもない状態で足を広げさせ、ローションで濡れた猫の雄膣に当てがった。
六車「男知ってんなら、指で解す必要ないよな?」
言ってズッ♡ズプププ♡と、和中のナカを六車のペニスが犯し始め、ビクンッ!と猫はその質量に弾かれた様に仰け反った。
和中「あぁあ゛ーっ!♡やだ♡ぬけぇ!♡」
六車「はっ…♡はっ…♡」
六車も興奮に息を弾ませ、猫のウエストのくびれを固定すると、いきなり奥までズンッ!♡ズンッ!♡と肉壺を突き上げた。
和中「はぁ!♡あ゛あぁあ゛…!♡やめろぉ…!♡くぅう…!♡」
ゴヅッ!♡と最奥に続くドアに辿り着いたが、六車はこのドアの向こうがある事は知らない様だった。
最奥がある事を知らないせいか、和中に快楽を与える事はなく、欲望のままにピストンした。
奥コキしながら、身体を倒し再び和中の顎を掴み口を閉じない様に開かせると、唇を重ねた。
和中「んぐぅ!♡んん゛んぅ…!♡」
唾液を注ぎ込み、和中の唾液と混ぜ吸い上げて、舌を挿し込み、口の奥で縮こまっている猫のそれに絡みつけた。
和中「んっ…♡んくっ♡んはぁっ…♡」
唾液をたっぷりと混ぜ、糸を引きながら唇を離すと身体を起こした六車は、酸欠と快楽で蕩けた顔の和中を見て、口端を上向きに歪めた。
六車「ずっとこうしたかった…俺達は似たもの同士だからな」
和中「いっしょに…するな…」
六車「はっ!強がるなよ、お前も誰かに片思いしてるんだろ?」
そう言いながら、六車はガンガンに腰を動かし自らの快楽を高めていった。
恋人同士がする様に、手に手を重ね、指を絡ませて畳に押さえつけた。
限界が近くなり、六車の顔が次第に険を帯び最奥に続くドアに押し当てる様に射精する。
和中「お!?♡あ゛っ♡あ…あつぅ!♡んお゛っ♡ああ!♡」
アナルに深く突き刺さる六車のソレは、精液を零しながら前立腺を押し潰し、遠慮なしにナカを犯していく。
何度も奥に当たる感触と、吐き出された熱に思わず腰が浮き上がり、和中は堪らずナカイキした。
ガクガクガクッ♡と身体全部が不随意に震え、筋肉が脈動しナカが引き攣る様な締め付けになった。
両の瞳にピンク色のハートマークを浮かべ、堪らない悦楽に身を委ねるしかない。
和中「あぁああ゛ああぁ゛ああああ゛っ!♡」
驚いたのは六車で、男のナカイキを知らなかった彼は思わず律動をやめ、和中の様子を食い入る様に見詰めていた。
燃え上がった亭楽の炎が、ジリジリと和中の身体を焼き焦がしていく。
暫くしてナカイキが治まり、ふー♡ふー♡と息の荒い猫に六車は絶頂の一種なのだと理解し、安堵してピストンを再開した。
六車「今のすげぇな…ナカが締まりながら小刻みに痙攣してたぞ」
和中「…っ♡」
ナカイキが完全に去る頃には、六車が、この男が小林だったら…と言う思いが和中の思考を支配し始めていた。
ゴヅッ♡ゴヅッ♡と激しく腰を振られ、快感が和中の脊髄を突き上げてきた。
和中「う゛うあぁ゛あ!♡あっああ゛♡」
声を上げながら、今自分を貫いているのが小林ならば…今手を重ねているのが小林ならば…小林ならば、小林ならば…そればかり考えていた。
そう思い始めれば、六車を小林と錯覚するのは容易かった。
自分に覆い被さっている六車に、小林の残像を重ね、意識せずに彼の名を呼び彼を求めた。
和中「こ、ばやしぃ…♡」
意識に霧が掛かり始めている虚ろな猫の瞳には、六車が小林に見えていて不意にポロポロと涙を零しながら、重ねた手の絡めた指をギュッと握った。
和中「こばやし…♡すき♡だいすき♡」
どんなに愛の言葉を囁いても、振り向いてくれない愛おしい人。
六車「和中?おい…」
怪訝な顔をした六車が呼びかけるが、猫は聞く耳を持たず小林、小林…と何度もこの場に居ない男の名を口にし続けた。
六車「…」
和中が、自分など見てはいない事を思い知った六車は、急に己がしている事が虚しくなって、律動の途中だったが致し方なくソレを引き抜こうとした。
和中「ああっ♡」
引き抜く瞬間、声を漏らした猫は瞳はぼんやりと宙を見詰めたまま、微動だにしなかった。
六車は和中が一途に思い続ける小林を罪な男だと思う反面、ここまで思われて幸せな奴だと羨ましくも思った。
六車は和中のスマホを取り出し、不用心にもロックはかかっておらずトークアプリを開くと小林の名を探す。
ーー俺は京極組の六車謙信という者だが、訳あってこの和中のスマホから俺が連絡させてもらっている。黒焉街近くの○○というアパートに、彼を迎えに来て欲しい
次、最終話
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