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え、好き…
影踏み 最終話
R-18 ✕
ほとんど文章
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ーー俺は京極組の六車謙信という者だが、訳あってこの和中のスマホから俺が連絡させてもらっている。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その四十分ほど後、メッセージを見た小林がアパートに急いで駆け付け、六車の案内で部屋へ上がり寝ている和中を連れて帰る為に抱き上げると。
小林「もしかして、この人に手ぇ出した?」
と瞳を見開き、殺気をぶつけながら訊いてきた。
六車の中を一瞬恐怖が駆けたが、どうせ嘘をついてもバレるので本当のことを言おうと思った。
六車「ああ、無理矢理に抱いた」
小林「…今回は正直に言ったから許す、でも次はないからな」
言葉と共に強烈な殺気を放った小林に、六車は頷きながらも冷たい汗が背中を流れた。
やはり、小林幸真の名は伊達ではなかった。
六車から預かっていたと言う書類を受け取って、和中を抱き上げたまま階段を下り、小峠の運転する車の後部座席に乗り込んだ小林は。
小林「兄貴は、他の奴に抱かれずに、俺だけを求めてくれれば、それでいいんスよ」
言って、眠る和中の額に口付けを落とした。
その暫くあと、眠りから覚めた和中は目に入った見慣れた天井に、小林の部屋のベッドの上にいる事を即座に悟った。
和中「小林っ!?」
飛び起きて名前を呼ぶと、ベッドルームに小林が顔を出した。
小林「あ、起きました?六車ってやつから、兄貴を引き取ってきたんスよ」
和中「むぐるま…そうなのか」
小林「ナカまで綺麗に洗ってあげるので、風呂入って飯にしましょう」
和中「え、ああ」
六車に貞操を奪われた事を、小林に知られていたのが分かり、和中は自分の情けなさと弱さを身に染みて感じた。
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小林が和中に向ける視線は、確かに遊び相手を見る目のそれだ。
しかしそれは、愛情の裏返しでもある。
小林は過去の体験から、人を一途に愛する事が苦手だった。
一途に愛した人が、裏切るのではと疑う事に疲れるからだ。
もし和中に本気になったら、彼を監禁して誰の目にも触れないようにして、飼い殺しにしてしまうかも知れない。
和中から一途な愛を向けられている事を知っているし、自分は遊びの気持ちでいても、その愛の上にいるのは心地いい。
永遠に続く影踏みの鬼は、小林だ。
影を踏み続け捕らえている和中が、自分の彩に染まっていくのを、そして彩に染まり切って自分を求めてくる事に、この上ない悦びの眼差しを向けている。
和中には、ずっと自分だけを見ていて欲しいと思う。
“ 好きだ “なんて、気の利いた言葉は小林には言う事が出来ない。
” 好き “という言葉を言われたって、どうしていいか分からない。
それでも、和中が自分の元を離れない様、彼の気持ちを生かさず殺さずで繋ぎ止めている。
それが、影踏みの鬼の宿命なのだ。
了
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影踏み終わり。
和中は一途に好きだと伝えても小林はどうしたらいいか分からないまま。
こんな恋愛ってどうかな?