「愛おしい牝鹿」
「あぁ、なんて優美な牝鹿なんだ」
スラリと生えた細く長い手脚
くりくりとした黒目がちな目
柔らかだが敏捷な動き
少し臆病な性格のに凛々しく美しい
どこを取っても美しく、清らかな彼女
しかし、猟師である私にとっても
彼女はどうしても仕留められない存在で
いくら自慢の銃を磨いても、
彼女は少しも私に興味も示さないし見向きもしない
しかし、そんな彼女も餌を撒いた時のみ変わる
いい餌を撒けば撒程、黒目がちな瞳を輝かせ寄ってくる
少々奇妙な目で見るものの、
彼女はこうして傍に居てくれる。
最初に餌を撒いて時は衝撃だった
あんなにも遠い存在に思えた彼女が少し手を伸ばせば届く所に居たんだ。
理解して欲しい、これは素晴らしい事なのだ
しかし、餌を撒いてそれを全て取ってしまったら彼女はまた消えてしまった
それから彼女の居る森に通い
餌を撒いてその間、彼女が許す限り身体に触れるという関係を続けた
しかし、そんな関係に終わりの鐘が響く、
男だ。私と彼女の仲を切り裂く男が現れたのだ
其奴は街一番の金持ちの息子で
蜂蜜よりも甘いマスクをしている
それだけで腸が煮えくり返りそうだが、其奴は禁忌を起こした
他でもない”彼女”に言いよるのだ
猟師の私には到底手の出せない餌を用意することが出来る男。
お願いだ、頼むから他の”牝鹿”を狙ってくれ。
お前ならきっとハーレムくらい作れるだろう?
頼むから私から彼女を奪わないでくれ。
___そう言えたら、どんなに良いか。
その晩、私は全てを餌代にした
そしてその餌と彼女への贈り物を持って森に行った
餌を与えた時の彼女の表情は
軽やかな満面の笑みをしていて、この世の何よりも愛おしかった
「贈り物がある」と私が言うと
彼女は身を寄り添わせるように此方に近付く
その時、私は彼女に鉄製のナイフを突き刺す
彼女の肺部分を狙った為、肋骨が邪魔をしたが力一杯刺しこむ
彼女は脚をバタバタと暴れさせ抵抗するが
私にとっては彼女は非力な小娘にしか見えず、
彼女が絶命するまでの間、彼女の口に布を詰め込み続け
彼女の乱れた呼吸音と嗚咽する弱々しい声を
彼女の黒目がちな瞳孔の開いた目から流れ落ちる涙を
ゆっくりと味わって舐め取りながら耳を澄まして聞いていた
「来世で夫婦になろう」
そう言い、渡しそびれた餌から指輪を取り出し
私も彼女を刺した腹を刺し、持っていた猟銃をこめかみに当てる
『な……ン……デ……』
《牝鹿とは「高級娼婦」の隠語という意味でもある》
コメント
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オッアッェッ………エッッ…エ…(?)
えっ……えっ……最初からしとめないのなんでだろっておもってたけどえっ……そんな……