ー今から話す物語は,とても暗く,とてもと言っていいほど忘れては行けない,そんな姉の懺悔のための物語ー
「お姉ちゃん〜」
「どうしたの??こいし。」
この子は私のたった1人の妹。
そんな妹が神妙な顔をして私に聞いてきた。
「…どうやったら人に好かれるのかなぁ……。」
……(は?!)
「えーと…?つまり…?」
(待って,この子今なんて言った…?人に好かれる為にどうしたらいいか…?そんな事私だって知りたいわよ…)
「いきなりどうしたの?」
私は必死に動揺を隠しながら妹に聞いた。
「あのね…私今,仲良くなりたい人間の男の子がいるの……」
(成程…恋したのね…)
「私は悟り妖怪だから…きっと嫌われるよね」
珍しく人を好きになった妹が落ち込んでいる姿を見て,つい私は言ってしまった。
今思えば…私がそんなことを言わなければ,今頃あんなことにならなかったのかも知れない…。
「人の気持ちを理解するなんて私達には出来ないわ。だけれどこいしの思っている事をその子に伝えるだけでも少しは変わるのではないかしら??」
「そうだね…!私,きちんと気持ち伝えてくる!もしそれでダメならきちんとお別れしてくる!」
バタバタと嬉しそうに嬉々として走る妹。
私はそんな妹の姿をただ見ているしかできなかった。今思えばその時に全力で止めておけばよかった…
「あのね…𓏸𓏸君…」
村の少年「どうしたの?こいしちゃん」
「私…𓏸𓏸君の事が大好きなの!!」
村の少年「そう…なんだ」
「それで…その…。」
村の少年「???」
(どうしよう…緊張する…)
「本当の私を知って欲しいんだ…」
村の少年「本当のこいしちゃん…?」
「私はー」
村の少年「…!!!!!!!!」
「おかえり。こいし。どうだった?」
「ちゃんと自分の気持ち伝えてきたよー!」
「…そう…ねぇこいし。」
(キラキラと目を輝かせる妹に私は心を鬼にして言った)
「貴方はもう人間界へ行くのは辞めなさい。」
「……え……?どうし…て…?」
(う……伝えるのが苦しい…でも言わないと……)
「貴方も分かっているでしょう?私達は悟り妖怪。人と妖怪とは仲良くなれないのよ。」
「〜ッ……」
顔を真っ赤にして怒るこいし。
当然よね…いきなりそう言われても理解できないもの…私もそうだったから。
「仲良くなれるかなれないかなんて,やってみないと分からないよ!!どうしてお姉様はすぐに否定的なことを言うの?!お姉様なんか大嫌いッッ!!!!!!!!」
バタバタバタバタバタバタ……
「こいし…。」
(お姉様はああ言ってたけど…私は絶対にあの子と仲良くなれる!!絶対に!!)
「あ…𓏸𓏸く…」
ドンッ
「きゃあ……!!」
村の少年の母親「貴方ね!うちの息子を誑かした妖怪って言うのは!!!」
(え…どうして私が妖怪だってこと知って……)
村の少年たち「やーいやーい!!悟り妖怪〜!!」
村人「やぁねぇ…人の心を読むだなんて……」
村人「気持ち悪いわ…」
村の少年の母親「二度とうちの子に関わらないで頂戴!!…ほんと気味が悪いわ!」
「…………。」
(どうして…?私はただ…みんなと仲良くしたかった…それだけなのに……私はたとえお姉様と2人で地底に追い出されたとしてもまた人間と仲良くなれる……そう思っていたのに……。)
「…ははは…。」
(もう…疲れたなぁ…。限界…苦しい…どうして私たちが悟り妖怪ってだけで人は忌み嫌うの…?好きで心を呼んでいる訳では無いのに…)
「あはは…そっか…最初からこうすればよかったんだ……。」
そこから妹は…こいしはサードアイを閉じた…。
幻想郷を一人で彷徨うようになり,
感情をほとんど見せなくなった。
笑うことが少なくなってしまった…
全ては私のせいだ…あの時私がきちんと止めていれば…
ごめんね…こいし…
…考えていても意味ないわね…
これが私たち姉妹の過去よ。
私はあの子が本当の自分を取り戻せるようになるまで,ずっと…ずっと償い続けると決めたの…。
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