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「いかにもおれは人間だが、お前たちはダークエルフか?」


おれの真正面に立っているシーニャを気にすることなく、彼らはおれだけに注目している。すぐ傍にルティがいるが、彼女のことも見ていないようにみえる。


軽く頷いているように見えたが、ダークエルフで違いないらしい。


「魔剣持ちの人間……魔を運んで来たか? それとも抹殺する者か?」


いやに視線を集めているかと思えば、腰にぶら下げた魔剣ルストを気にしている。一方的な質問でこちらからの話が通じそうにない。


そうなるとシーニャを動かすのも手段ではあるが――。


「ウウゥ……! ウ、ウニャ? かかって来ないのだ?」

「……闇の眷属に用は無い」

「ウニャ?」


構えを見せるシーニャを通り過ぎ、ダークエルフ数人がおれの前まで近づいてくる。どうやら狙いは完全に魔剣だけのようだ。


「そのまま待機しててくれ、シーニャ」


奴らからは明確な戦意が見えてこない。しかし、こっちのわずかな動作や気配の変化にかなり神経を研ぎ澄ましている感じがある。


「アック様アック様! 何だか魔剣のことを聞いているみたいですよ? お答えしてみてはどうですか~?」

「魔剣しか見えていない、か。それならそうするか。ルティもそこで大人しくしててくれよ」

「はいっ」


魔剣が気になるようだし、まずは話し合ってみるしかない。そう思っている内に数人が正面に立ちふさがる。


「答えろ、人間!」


襲ってくる気配が無いとはいえ、おれの正面とシーニャの正面に立たれた。下手をすればいつでも挟撃される位置を取られた状況にある。


嘘も言い訳も通用しなさそうなので正直に答えるしかない。


「それなら正直に答えてやる。おれたちは通りすがりの冒険者だ。ここに迷い込んで来ただけで、害を加えるつもりは無い。もちろんお目当ての魔剣を使うことも無いぞ」


魔剣という言葉に反応を見せたようだが、まだ警戒心は解かれていない。


しかし――


「――――人間に願う。我が方の域の先、不吉の影があり域の砦に戻ること叶わぬ。影は我が方にとって害敵であり、わずかの油断を誘ってはならぬもの。抹殺の願いを聞き入れるならば、”ビルイム”ダンジョンへ導く」


……ん?


もしかしてダークエルフたちの依頼だろうか。分かりづらい話だが、次のダンジョンへ導くということはそういう意味に聞こえるんだが。


「抹殺じゃなくても害敵を取り除けばいいんだろう?」

「……その通りだ、人間」

「おれの名はアックだ。願いを受ける以上、そちらも名を預けてくれ」


目の前に立っているダークエルフは、男が二人と女が一人。おれの言葉に顔を見合わせ、相談を始めている。しかし、表情をほとんど変えず、どういう感情かまでは分かりづらい。


シーニャとルティが息を殺し見守る中、シーニャの近くにいるダークエルフたちもまるで微動だにしない。様子を見るからにやむを得ずこの場所に留まっているような感じか。


しばらくして話し合いを終えたのか、女のダークエルフが間近に近付いてきた。白っぽいグレーの髪、尖がった耳と纏っている服は、まさに全身闇の衣といったところ。


闇を感じさえしなければサンフィアによく似ている。


「人間、アック……影を消すことを誓え。その後、我が方の域を過ぎ通り抜くことを許す」

「影が何なのか分からないが、お前たちの脅威を取り除くことを誓う。これでいいか? えーと……」

「……我が方の名は、ルミカ・リオング。首長の名において、アックに願う」

「首長! なるほど。数少ない女のダークエルフにして首長だったとはな」


リオングという名はこのダンジョンの水路の名と同じだ。つまり、古くから水路を狩場としている種族という意味に違いない。


しかし、魔物を避けて進むつもりだったのに結局こうなるのか。何にしても、これをやらないと外に出られそうに無いしやるしかないんだろうな。

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