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トッシーが 「拙者、夜のアニメ放送があるのでこれにてドロンでござる!」
と、フィギュアを抱えて嵐のように去っていった後。
万事屋の静まり返ったリビングで、俺は一人、煎茶をすすりながら夜を迎えていた。
新八と神楽がそれぞれの部屋で寝静まった深夜。
自分の布団に潜り込み、天井のシミを見つめていると、嫌でもさっきまでのトッシーの姿、いや、あいつの「体」が脳裏に焼き付いて離れなくなる。
「……ったく、一ヶ月記念日がこれかよ」
ぽつりと言葉が漏れた。
付き合い始めて、たいたい一ヶ月。
思い返せば、あいつと過ごしたこの三十日間は、糖分控えめ、刺激物過多の、とんでもねェ毎日の連続だった。
始まりは一ヶ月前。
屯所の裏、誰も来ない物置の影だった。
いつものように喧嘩の延長で胸ぐらを掴み合っていたはずが、どういう弾みか、あいつの唇を奪っちまった。
プライドの高い真選組の鬼の副長だ。殴り殺されるか、切腹を申し付けられるかと覚悟した。
なのに、あいつは真っ赤になった顔を腕で隠しながら、
「……てめェ、次やったら、マジで、斬るからな」
と、消え入りそうな声で呟いた。
刀を握る手が、微かに震えていたのを今でも覚えている。
それからのあいつは、絵に描いたようなツンデレだった。
「勘違いするなよ万事屋。俺はてめェと馴れ合うつもりはねェ」
そう言いながら、週に一度、非番の日の夜には、ぶっきらぼうに万事屋の裏口を叩く。
飯を食わせれば、何にでもマヨネーズをドバドバとかけて俺を辟易させるくせに、俺が作った不恰好な卵焼きを
「……悪くねェ」
なんて言って、耳まで赤くしながら残さず食うのだ。
そして、二人きりの夜。
昼間のあの「鬼の副長」としての強気な態度はどこへ行ったのか、布団の中のあいつは、本当にプライドの置き所に困っているような顔をする。
「おい、万事屋……電気、消せ。……消せって言ってんだろ、ぶち殺すぞ」
凄んで見せるくせに、俺がその体に触れると、シーツをキツく握りしめて小さく喘ぐ。
強情な男だから、最初は絶対に目を合わせようとしない。
俺がわざと意地悪く、あいつの敏感なところを焦らすように愛撫すると、
「あ、……ぅ、てめ、っ、ふざけ……んじゃねェ……っ」
と、涙目で睨みつけてくる。あの強気な視線に、俺のなかの獣がどれだけ煽られたことか。
だけど、ひとたび熱が最高潮に達して、俺があいつの名前を呼びながら強く組み伏せると。
あいつはプライドなんて全部どこかに吹き飛んだみたいな顔をして、俺の背中にその細い、だけど引き締まった腕を回してくるのだ。
「……ぎん、とき……」
普段の「万事屋」ではなく、掠れた声で呼ぶ俺の名前。
抱き締め合う肌の熱さ、俺の胸に押し付けられるあいつの額、そして、たまに、本当にたまにだけ、自分から求めてくるように小さく重ねられる唇。
終わった後は、いつも決まって
「……今夜のことは忘れろ」
と、背中を向けてツンツンしているくせに、俺が後ろから抱きつくと、払いのけようともせずにそのまま大人しく抱かれている 。
そんなあいつの「デレ」の瞬間が、俺にとってはどんな甘いお菓子よりも極上の糖分だった。
「……あーあ。思い出すだけで目が冴えてきちゃったじゃねーの」
布団の中で寝返りを打つ。
一ヶ月間、あいつのあの強気なツンと、夜にだけ見せる不器用なデレを、この体はしっかりと記憶してしまっている。
だからこそ、昼間のトッシーの、あの
「嫌わないでほしいでござる」
なんてセリフが、余計に胸に刺さるのだ。
トッシーのヘタレな言葉は、土方十四郎がその高いプライドの裏に、必死で隠していた本音そのものだったんだろう。
嫌われたくない。嫌わないでほしい。
面と向かっては死んでも言えないあいつの弱音が、オタクの人格を通じて漏れ出していた。
「……バカが。嫌うわけねーだろ」
誰もいない部屋で、静かに呟く。
ツンツンしてようが、オタクになってようが、あいつの根っこにある可愛いところは何も変わっちゃいない。
だけど、やっぱり物足りねェ。
あの、俺の愛撫に顔を真っ赤にして怒る、プライドの高い、俺だけのトシが恋しい。
「明日、様子見に屯所突撃すっかな……」
あのヘタレオタクをもう一度からかって、あいつの中の「鬼の副長」のプライドを刺激してやれば、怒って引きずり出てくるかもしれない。
戻ってきたら、今回のトッシーの分のツケも合わせて、腰が抜けるまで可愛がってやると心に決めて、俺はゆっくりと目を閉じた。
コメント
1件
お疲れさま、第2話読んだわ! トッシーの「嫌わないでほしいでござる」が、ツンデレ土方の本音そのものって解釈、めっちゃ刺さった…。普段あんなに強気なのに、布団の中では銀時の名前呼びながら腕回してくる土方のギャップ、甘すぎてやばい。プライド高いけど不器用で可愛いって、まさにこの関係性の醍醐味だよね。明日の屯所突撃、楽しみにしてる!🔥
ruruha
805
M🍑🦖⚡️