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【魔竜の恩返し】
ー ー ー ー ー
別サイトであげた小説のrdmdバージョン。
R18は無いけど、全然腐向け。
もろもろに理解のある人だけ見て下さい。
ー ー ー ー ー
俺がまだ力を上手く扱えなかった頃、一度だけ積雪で隠れた人間の捕縛罠に嵌まってしまったことがあった。
もがけばもがくほど足に食い込む金属が痛くて、見つかれば売り飛ばされるかもしれない状態なのにみっともなく鳴き喚いた覚えがある。
「ヒーン!」
「あーあーあー……暴れたら余計に痛いよ。ほら、落ち着いて…そう、イイコ」
「キュー…」
「魔竜…幼体か。そりゃ鱗があっても貫通するわけだ……ん、早く帰んな」
ガションと金属音が鳴ったことに驚いた俺は、大慌てで同居人のいる家の方に向かった。もちろん、今度は積雪で遊んだりせずにまっすぐ飛んで帰った。
「遅かったやん……って、なんやそれ?」
「ま、まさか人に会ったの!?」
「わぁ…みっどぉ血が…!」
ワタワタと慌てる三人の同居人の前で竜から人の姿へと変わると、確かに左足の太ももの辺りから血が垂れていた。
そして、人へと変わる時に足首にまで下がった藍染の絹ハンカチ。少し赤く汚れているのは俺の止血用に使われたからだろう。
「ン、助けてくれた!」
「助けてくれただぁー?んなわけ…」
「そんなことより!その怪我の治療が先!」
「えーっとぉ…包帯まだあったっけ…」
騒がしい赤髪の男はレウクラウド。
ガストと呼ばれる種族のさらに希少種で、己の下位種族を使役したり、炎を操る術に長けている。
彼に向かってへっちゃらだと言うように足をブラブラさせて見せたら、ぺしりと頭を叩かれた。わりとお怒りらしい。
本当に痛くないんだけどな…
「あったよー…じゃじゃーん!」
救急箱を片手に部屋に帰って来た、レウさんとはまた別の男はコンタミ。
彼の種族はイマイチよく分かってない。人間に近い時もあれば、俺達みたいな人外に近い時もある。言ってしまえば、変な人。
「はーい、まきまきぃ〜」
包帯を巻き巻きされている間に、囲炉裏で煙管に口をつけている男を見遣る。
あの男は金豚きょー。
決してソッチのアブナイ人ではない。
彼は天使族の下位種と揶揄されている堕天種でもそこら辺の天使よりよっぽど強いので、誰かが喧嘩を売る際はきょーさんの体調がめっぽう悪い時でもない限り勝てないだろう。
「きょーさ_」
「どりみー、ダメやからな?」
「ム…」
「あんなぁ、今回助けてくれたから言うて次も優しいとは限らへんからな?」
ほぅ、と煙を吐き出しながらこめかみを揉むきょーさん。この仕草をする時は大抵悩んでいる時。今回は頑固な俺をどうやって諦めさせるかで悩んでいるんだろう。
「ンヴヴ…俺は恩返しに行きたい」
「ダメや」
「ヤダ」
「ダーメ」
「ヤダ!」
埒が明かない。お互い一歩も譲らないから、結局いつも通り話は平行線。
「自分すら満足に守れへんくせに!」
「ヤダヤダヤダ!」
「危ない言うとるやろ!?」
「ヤダー!!」
解決策のないままかれこれ数時間。
レウさんとコンちゃんはいつの間にか夕食を作り終えて、それらを机に並べている。
イヤイヤと首を振りながら竜体でそこらじゅうを飛び回ると、コンちゃんがいつものように妥協案を提示した。
「じゃあ、みっどぉが護身術を完璧にこなせるようになったら行けばいいんじゃない?」
「ゥ…?」
箸を並べていたコンちゃんが「名案だね!」と言ってにこにこ人の良い笑みを浮かべる。
「ね、それならどうよ?」
「…それやったら…まぁ……」
渋々頷いたきょーさんに顔がパッと明るくなったのが自分でも分かった。
かくして俺の恩返し遂行のための猛特訓が始まったのだった。