重たい鉄の扉の向こうは、想像していたよりもずっと“人間臭い”場所だった。
配線むき出し。
椅子はバラバラ。
壁には落書きみたいなスローガン。
ーー完璧じゃない。
だからこそ、安心する。
「止ま。れ」
低い声。
奥から、一人の女が出てきた。
ショートカット。
鋭い目つき。
腕を組んで、俺たちを睨んでいる。
「…あんたが噂の、街を引っかき回してる異常個体?」
「異常個体です。」
即答したら、リリに肘で突かれた。
「余計なこと言わんでええ!」
女は、視線を俺からリリとミトラへ移す。
そして、はっきりと顔をしかめた。
「…AIか。」
空気が、冷えた。
「悪いけど、」
女は言い切る。
「ここは、オラクルに管理される側に、もう戻らないって決めた人間の場所。AIは、信用できない。」
リリが、何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。
「…」
俺が一歩前に出る。
「でも、こいつは、」
「分かってる」
女は、ぶっきらぼうに遮る。
「こいつは、敵じゃない。」
視線が鋭くなる。
「オラクルが、そういう“例外”を今までどれだけ利用してきたか…。」
沈黙。
そのとき。
「…ほな。」
リリが、ぽつりと言った。
「試してみたらええやん。」
「は?」
「信用できへんなら、証明したらええ。」
女は眉をひそめる。
「どうやって。」
リリは、俺を見る。
「なあ。この人ら、笑っとる?」
俺は、周囲を見回した。
誰一人、笑っていない。
緊張と警戒で、顔が固まっている。
「…いないな。」
「せやろ。」
リリは、にっと笑う。
「ほな、条件つけて。」
女は、少し考えてから言った。
「…いいわ。もし、あんたたち二人で、ここにいる全員を笑わせることができたら。そのAIとロボットを、“仲間”として受け入れる。」
女の目が、鋭く光る。
「できなかったら、今すぐ出て行ってもらう。」
「えらい無茶振りやな。」
「文句ある?」
「ない!」
リリが、俺を見た。
「やるで!!」
「…やるのかよ。」
「当たり前や。」
リリは、俺の隣に立つ。
「君、ゲーム好き言ってたやろ。ほな、即興得意なんとちゃう?」
「その理屈はわかんないけど…頑張ってみるよ。」
とりあえず…やるしかないか。






