『静かな檻』
tg視点
しおたんの部屋に入ってから、時間の感覚がぼやけてる。
俺、こんなに無防備に、誰かの部屋にいるの……初めてかもしれない。
so ちぐちん、寒くない?ブランケット、こっちにあるけど
tg ん、大丈夫……ありがと
ソファに座って、ふにっと笑った俺に、しおたんは穏やかに笑い返してくれる。
まるで、ずっとここにいたみたいな空気。
でも、今日が“初めて”なんだ。
tg ねぇ、しおたん……今日、泊まってって……いい?
ぽつりと、俺は言った。
さっきからなんとなく言い出せなかった言葉。
なのに、口にした瞬間、胸がきゅんってなって——
しおたんは、少し驚いたように目を見開いてから、すぐに優しく微笑んだ。
tg うん。嬉しい。ちぐちんが、ここで夜を過ごしてくれるなんて
tg ……へへ、俺も。しおたんのそばにいたいって、思ったから
so そう。じゃあ、今日は……俺だけのちぐちんだね
その言葉に、どくんって心臓が跳ねた。
“俺だけの”って、どういう意味?
でも、しおたんはそのまま俺の頭を撫でて、隣に座ってくる。
ふたりきりの部屋。静かで、ぬるいくらいあったかい空気。
このまま、全部飲み込まれそうだった。
so ちぐちん。スマホ、もう見なくていいよ。ここでは俺とだけ、いてくれればいいでしょ?
tg え……?でも……
so 大丈夫。外のことなんて、もう気にしなくていいんだよ
言い聞かせるみたいに、優しくて、静かな声。
反論もできないくらい柔らかくて、それが怖いって思った。
けど——
tg うん、しおたんのそばに、いる……
気づけば、俺の指がスマホを机に置いてた。
誰に言われたわけじゃないのに。
でも、しおたんの「そうでしょ?」が、まるで正解みたいで。
しおたんの腕が、そっと俺を抱きしめる。
so よくできました、ちぐちん。今日から……全部、俺が守ってあげる
その声は、優しさの中に、どこか鍵のかかる音がした。
——この部屋で、俺は今夜、初めて眠る。
そしてもう、外の世界が少しずつ、遠くなっていく。
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