テラーノベル
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理解の範疇を超えていた。出来るわけがない、と反射的に否定したくなった。その願いは、母と私が渇望していて、どんなに足掻いても手に入らなかったものだ。なのに、「目が見えるように」する?期待と、諦めと、怒りでグチャグチャ。感情の置き場がなかった。
私は、震える声で、言葉を紡いだ。
「……本当に、できるのか。」
「もちろん!」
あまりにも迷いのない返事だった。
「……どうやって?」
「え?」
「私は、生まれつきなんだ。普通の治療じゃ……」
「だから、普通の治療じゃないんだよ〜♡」
その声だけが、妙に誇らしげだった。
「待っててね〜!呼んできてあげるっ」
そう言って、彼女の靴音が遠ざかる。小走りなのか、コツコツというリズムが速かった。廊下の向こうで、彼女の鼻歌の反響だけ聞こえる。
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しばらくして、エナメル製のヒール音が2つ、私のもとにやってきた。甘ったるい同じ香りと、爽やかなシャボンの香り。
「…1番、この人?」
「うん!…できる?おめめ、治せる?」
「1番」と呼ばれた女の子は、さっき来た、お砂糖の香りがする、ふわふわの彼女の事だった。一方、もう一人の彼女は、声の温度が冷たい。…でも、何故だろう。私は目が見えないはずなのに、彼女の視線だけ感じることができた。
彼女は十秒ほど私を見つめて、口を開く。
「……無理。」
それは、私の予想通りの回答であり、落胆と絶望を齎すものだった。
「私はそもそも、視界を共有することしかできないの。そこにいるだけ。…この話、何回した?馬鹿なの?」
私にはわからない話。何故か1番と言う少女が責められていることだけはわかった。落ち込んだため息が聞こえる。
「そっかあ…。患者さん、ごめんね。」
そう言って、1番は私の手を包む。細い指をしていた。治療する側なのだったら、もう少し食べてほしいものだ。空いている手で、1番の頭を見つけ、髪を梳く。
確かにその知らせは悲しいけれど。見えることのない世界は、少し心地よかった。目がない代わりに、感触。声。匂い。他の情報を、大切にできるから。
「…まだ話は終わってない。」
その様子を見たシャボンの女の子は、同じ声色で淡々と話し始める。
「私はできない。でも、ドクターならできるでしょ。別に、私も一緒にお願いしてあげてもいいけど。」
その言葉を聞いた瞬間、頭に置いていた手がふっ飛ばされる。1番の声はキラキラとしていた。
「ほんと!?!ほんと〜っ!?行く!お願いしに行く〜!♡」
そう言って、私の返答も聞かずに二人は遠くへ行ってしまった。彼女たちは、もう少し人の話を聞いてもいいと思う。
私はまた、孤立した場所に立たされている気分になった。
でも、それは静かで、今の歪な現状を整えるのには絶好だった。
#こめんとくーださい!
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#この物語はフィクションです
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九重九十九
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コメント
1件
おお…第6話、読み終えました。目の見えない主人公が、「治せる」と言われて期待と諦めと怒りでぐちゃぐちゃになる心情、すごく伝わってきました。特に「目がない代わりに、感触や声、匂いを大切にできる」っていう気づきの一文が印象的で、静かな強さを感じました。1番とシャボンの子の温度差も面白くて、続きがすごく気になります!「万能ではない」っていうタイトルも沁みますね…。