テラーノベル
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ドクターという存在が、私の目を治してくれる。どんな方法かはわからない。そもそも本当にできるのか?──いや、それよりも、私は本当に盲目から脱したいのか?眩しいこの世を見られるようになって、それは本当に幸せなのだろうか。ずっと、見えないからと言い訳して社会に出られず、閉じこもっていたのに。今更、踏み出せるのか?
そう、だから。
……でも。
それでも。
その不安が押し負けるくらい、私は母を見たかった。あの優しい体温の正体を。私に向けてくれる安心する肉声の出所を。
母の笑い方は知ってる。でも、どんな表情をしているかは、知らない。
見えるようになったら、貴方を抱きしめたい。初めて、自分から。
その時、引き戸を開ける音がした。距離的に、私の部屋だ。きっと、ドクターが来てくれたのだろう。しかし、妙だった。ファンヒーターが回り、パソコンが起動し続けているような音。そして、おかしい程無臭だった。ドクターと呼ばれた彼は、機械なのだろうか。でも、そんなことはどうでもいい。目が治るのなら。
「…こんにちは。これから問診を始めます。貴方の意思を。願いを、教えてください。」
それは作られた機械音だった。私の決意は、もう固い。揺らがない。
「…君は、目が見えるようになりたいのかい?」
「はい。どんな侵襲がかかっても構いません。一度だけでいい。どうしても、母を見たいのです。感謝の言葉を、伝えたい。」
ジジ、と彼の方向でノイズ音が走る。
「…そうかい。わかった。すぐに、オペに取り掛かりましょう。…そんな顔をしなくても大丈夫。君には後遺症も何も残らない。」
「……でも。」
ドクターは喜ぶ私とは裏腹に。酷く残念そうに、何か心に引っかかることを言った。
「貴方が見えたとき。それが貴方の見てみぬふりしたモノだ。世間から逃げ続けた貴方への、罰。」
何か返事をする前に、病院室に何かが立ち込める。優しく包み込まれる。意識だけが、風の前の塵のように消えていく。とろけるような甘さと、血錆臭さが同時に混ざる、不思議な匂いだった。
#こめんとくーださい!
熱い冷やし中華
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#この物語はフィクションです
熱い冷やし中華
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九重九十九
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コメント
1件
夏目さん、第7話読みました。 盲目の主人公が「母を見たい」って言うシーン、すごく胸に刺さりました。ずっと見えないことを言い訳にしてたのに、やっと踏み出そうとしてる強さと、それでもドクターの「罰」って言葉が不気味で…。最後の血錆と甘さの混ざった匂い、すごく印象に残ってます。結果がどうなるか、すごく気になる…次話も楽しみにしてますね🌙